映画(TV/VIDEO/LD/DVD)「HANA-BI」「菊次郎の夏」「BROTHER」

67)「HANA-BI」(VIDEO) ☆☆☆★★

1995年 日本 バンダイビュジュアル TOKYO FM 日本ヘラルド映画 オフィス北野 カラー ビスタ 103分  
監督/北野武    脚本/北野武    出演/ビートたけし 岸本加世子 大杉漣 寺島進 渡辺哲
HANA-BI [DVD]
 北野武第7作にして彼の作品を隔てる決定的作品。「みんな〜やってるか!」を別格にすると、本作から北野武の作品は緩やかに下降線を描き始めた。公開時に観て、それがショックだった。笑いの映画が不発なのは納得できるにしても、このネタで不満点が出てくるとは思わなかった。だから、以降中古ビデオを手元に所有していても観返す気が起きなかったが、今回、公開時以来の再見となり、もしかしたら自分の初見の印象は間違いで、面白く感じるかもしれないと思ったが、やはり印象は変わらなかった。
 勿論、日本映画の水準からすれば、かなり高い完成度を誇る作品で、悪いと積極的に言う気はないにしても、観客への不要な意識が、大杉漣の驚く程説明的な科白や、こんな描写を真っ先に嫌がっていた筈の、つまみ枝豆のつまらない科白などが気になる。
 「キッズ・リターン」の万人受けを「ソナチネ」的な世界観(実際は「その男、凶暴につき2」と言って良いくらい共通項を持つ)でやろうとして、観客への媚が出てしまっている。

68)「菊次郎の夏」(VIDEO) ☆☆☆★★

1999年 日本 バンダイビュジュアル TOKYO FM 日本ヘラルド映画 オフィス北野 カラー ビスタ 121分  
監督/北野武    脚本/北野武    出演/ビートたけし 関口雄介 岸本加世子 吉行和子 細川ふみえ 大家由祐子
菊次郎の夏 [DVD]
 北野武第8作。この作品までは、劇場で2回観て、熱心にメモを取っていた。しかし、「Brother」でキッパリ止めた。
 公開時以来の再見だが、こちらも印象に変化なし。日本映画の水準からすれば、高い水準にある佳作。「HANA-BI」に続き、観客への親切さからの説明的描写になった途端、素人臭さが出て魅力が落ちる。
 笑いのシーンは「ソナチネ」に及ばないまでも最も成功している部類。
 公開時にも思ったが、主演は高倉健にして、北野武は演出に専念していれば、もう少し良くなったのではないか。ビートたけしが画面に出てくれば引っ張れてしまうという事実が、足枷になっているのではないか。
 母親に会った後が長い。121分は長すぎる。せいぜい100分の題材。90分前後でも良い。

69)「BROTHER」(VIDEO) ☆☆☆

2001年 日本 オフィス北野 レコーデッド・ピクチャー・カンパニー カラー ビスタ 114分  
監督/北野武    脚本/北野武    出演/ビートたけし オマー・エプス 真木蔵人 加藤雅也 寺島進 ロイヤル・ワトキンズ
BROTHER [DVD]
 北野武第9作。公開時以来の再見。印象変わらず。この作品で、カクンと質が落ちたように思ったが、その思いは今回も変わらず。
 ただの凡庸なヤクザ映画でしかなく、普遍的要素の強いハナシをやればやるほど、撮影所システムで撮られたヤクザ映画の素晴らしさが反芻されるだけで、今まで省略していたから良かったハラキリやユビヅメ(「3-4X10月」の『忍耐』と書かれた将棋の巨大駒で叩きながら指をつめるシーンは「仁義なき戦い」の鶏小屋指詰めシーンと双璧の爆笑シーンだったが)を下手な見せ方で見せられるのが辛い。
 「ソナチネ」「HANA-BI」「BROTHER」と繰り返す度に劣化しているだけに、今度やる時はどんな惨状になっているのかと思う。