映画 「ランド・オブ・プレンティ」

molmot2005-12-21

243)「ランド・オブ・プレンティ」〔Land Of Plenty〕(シネカノン有楽町) ☆☆☆★★★

2004年 アメリカ ドイツ カラー シネスコ 124分
監督/ヴィム・ヴェンダース    脚本/マイケル・メレディス ヴィム・ヴェンダース
     出演/ミシェル・ウィリアムズ ジョン・ディール ショーン・トーブ ウェンデル・ピアース リチャード・エドソン

 自分の世代にとって、ヴェンダースのリアルタイムでの劇場体験で良い思い出はそうないのではないか。「ベルリン・天使の詩」や「パリ、テキサス」をビデオで観るところから入って、70年代の作品に手を伸ばしかけた頃に、劇場公開された新作、「夢の涯てまでも」や「時の翼にのって ファラウェイ・ソー・クロース!」等をそれまでの旧作の感動から過度な期待を持って観て、失望以上のものを味わうことがあり、現在の作家としてのヴェンダースを詳細に追ってはいない。「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」で、そろそろ復調気味だと思ったぐらいで、新作にはあまり触手がのびなかった。
 本作は割合評判が良く、観ようかパスするか迷っていたが、知り合いが今年のベストワンだと叫んでいたので、観る事にしたが、観て良かった。傑作だった。911映画のこれまでのところベスト。
 右翼の伯父と左翼の姪の珍道中をカッコイイサントラを随所に盛り込みつつ見せてくれる映画、と要約してしまうと怒るヒトが多いかもしれないが、外観はシリアスで硬質な印象を受ける作品だが、実は爆笑コメディでもあったことに驚いた。
 憲兵くんみたいな自警団を組織している伯父さんは、911以降非常に敏感で、昔ベトナム戦争に行っただけなのに、今でも杉良太郎の「君は人のために死ねるか」を聴き込んでいるのではないかと思わせる程愛国心を持って街の平和の為に仕事もせずにヴァンで走り回っては、不振な荷物があると焦りまくったり、アラブ人を見かけると、即不振人物がテロの相談をしているとキメウチする。こーゆー自己防衛=自国防衛で、自警団作って過剰なテンションに陥って朝鮮人虐殺しちゃったみたいな、人間の恐ろしさを描いた作品は元来好みなのだが、ヴェンダースは(続く)