2005年 日本映画・外国映画 極私的ベスト10/ワースト10

日本映画
ベスト10

1、 「私がつくった番組 『赤塚不二夫の激情NO.1!』」(佐藤輝)
2、 「IDENTITY」(松江哲明
3、 「空中庭園」(豊田利晃
4、 「メゾン・ド・ヒミコ」(犬童一心
5、 「female 玉虫」(塚本晋也
6、 「劇場版ワンピース『オマツリ男爵と秘密の島』」(細田守
7、 「レイクサイド マーダーケース」(青山真治
8、 「YUMIKA 1989-1990 REMIX」(カンパニー松尾
9、 「犬猫」(井口奈己
10、 「TAKESHIS’」(北野武

ワースト10

1、 「楳図かずお 恐怖劇場 『絶食』」 (伊藤匡史)
2、 「ヘアスタイル」(ハロルド松村 他)
3、 「Jam Films S」(薗田賢次 他)
4、 「シベリア超特急5」(MIKE MIZNO)
5、 「PEEP“TV”SHOW」(土屋豊
6、 「忍 SHINOBI」(下山天
7、 「NANA−ナナ」(大谷健太郎
8、 「ALWAYS 三丁目の夕日」(山崎貴
9、 「阿修羅城の瞳」(滝田洋二郎
10、 「北の零年」(行定勲


 恒例ベスト&ワースト10。ブログ上では昨年からだが、個人的には1994年からつけている。因みに94年のベストは「屋根裏の散歩者」と「ギルバート・グレイプ」。
 2005年に観た日本映画の新作は77本、旧作は95本程。相変わらず見逃し作品の多さに反省しきりだが、本数はそこそこ観てはいるものの、短篇も含んでいるので長編のみで考えるともっと少ない。「カナリア」と「17歳の風景 少年は何を見たのか」は昨年のベストとワーストに入れたので外す。
 上半期のベスト&ワーストと比較すれば、劇映画の秀作が下半期に入ってきたと言えるが、一昨年の「下妻物語」や「マインド・ゲーム」の様な突出した傑作は見当たらなかった。
 「私がつくった番組 『赤塚不二夫の激情NO.1!』」は、ダントツで1位に。30年以上前に一度だけ放送されたテレビ番組をベスト1だと言うのは、観る機会の少ない作品を敢えて挙げて特権性を振りかざしているわけでは断じて無く、劇場で体験した面白い映像の極みだったからで、このわけのわからないテンションを越える作品がなかったので当然筆頭に挙げる。
 「IDENTITY」は、AVという枠組みがあったからこそ被写体の語りが観客に迫ってくる秀作だった。
 「空中庭園」は「アンチェイン」以来初めて豊田利晃が秀作を撮ったことが何より嬉しい。清順もどきな赤い雨など際どさを見せつつも演出で踏ん張った。新作が早く観たい。
 「メゾン・ド・ヒミコ」は、初めて犬童一心を良いと思えた。
 「female」の中で塚本晋也の『玉虫』は突出していた。「ヴィタール」も悪くない佳作だったが、『玉虫』の凄さは圧倒的だった。
 「劇場版ワンピース『オマツリ男爵と秘密の島』は脚本に難があるが細田守の演出で見せきっていた。
 「レイクサイド マーダーケース」は、青山真治がプロの手腕で見せた好ましい商業映画だったのに、興行でうまく展開できなかったことが悔やまれる。
 「YUMIKA 1989-1990 REMIX」はカンパニー松尾による林由美香という魅力溢れる人間が居たことを映像に定着させた愛情溢れる作品だった。
 「犬猫」は未だに8mm版を観ていないのが恥ずかしいが、日本映画お得意の1DK映画の代表的秀作。
 「TAKESHIS’」はどちらを向いても悪評だらけだが、不満点はありつつも、「HANA-BI」以降の諸作に比べれば遥かに面白い。
 本来は10本に入れたかったのに漏れた作品としては順不同で「隠し剣 鬼の爪」 「ヴィタール」「青い車」「パッチギ!」「トニー滝谷」「YUMENO」「L'amant ラマン」「オペレッタ狸御殿」「亡国のイージス」「森達也 〜自分であることの表現」「タッチ」「春の雪」「サヨナラCOLOR」「やわらかい生活」「ビター・スィート」「ピンクリボン」などがある。いずれも不満点はありつつも魅力があった。
 
 ワーストは、期待した作品がそうではなかったとか、過大評価されている作品に対してという考え方もあるのだろうが、自分はどうもその考え方には違和感があり、純粋に不出来な作品を挙げる。従ってどうしても新人監督が上位に入ってしまいがちだ。
 「楳図かずお 恐怖劇場 『絶食』」には呆れた。自分が観た後数週間してから、新短縮版なるヴァージョンが上映されたが、60分放映枠用という名目らしいが、自分が観た版は無駄に長かったので、それは短縮版の方がマシなんだろうとは思いはするものの、いくらビデオ撮りで再編集が簡単だと言っても、上映期間中に20分近く短縮した版が上映されるなんて、如何なものかとは思う。まるで、観客の評判が悪いから慌てて再編集したのではないかとすら邪推してしまう。
 「ヘアスタイル」は3本のオムニバスだが、いずれも低調で観ているのが苦痛そのものだった。「アフロアメリカン」が最も酷い。
 「Jam Films S」は、『すべり台』が素晴らしかったので、悪く言うのは気が引けるが、それ以外の大半が酷い作品だったので敢えて。
 「シベ超5」は、意図的な破綻と悪ふざけが、本来のシベ超の面白さを無くした。又、今回は脚本、監督共に補佐が入っていないようで、単純に不出来だった。
 「PEEP“TV”SHOW」は、「新しい神様」もそう良いとは思わなかったが更に良いとは思えなかった。
 「忍 SHINOBI」は商品としての最低限の質すら保てていない。撮影所システムが崩壊すると、こんなものが平気で松竹の映画として公開されてしまう。
 「NANA−ナナ」は全く良さがわからなかった。メジャーでかけるスター映画として成立していないと思うが。
 「ALWAYS 三丁目の夕日」は、あまりの高評価にむしろ監督の方が困惑しているのではないかと思うが、現象としてどこがそう受けて、泣かせているのかを確認する為に再見しようと思う。しかし、群像劇として成立しておらず、構成のツギハギ感、演出の悪さなど、観ていてひたすら苦痛だった。
 「阿修羅城の瞳」は、そもそも滝田洋二郎の「陰陽師」自体が凡作なので、そのラインで狙ったところで、良いものになるわけはなくせめて演出技術の切り売りでも良いから見せてくれればこんな酷いものにはならなかったと思う。
 「北の零年」は、そもそも脚本段階で問題があるから行定勲を持ってしても珍しいぐらいの凡作で、撮影から篠田昇が降板したことも凡庸化に拍車をかける。
 他にも積極的にワーストに推したい作品は順不同で「同じ月を見ている」「戦国自衛隊1549」「隣人13号」「レディ・ジョーカー」「あずみ2」「鉄人28号」「容疑者 室井慎次」などがある。

外国映画
ベスト10

1、 「エターナル・サンシャイン」(ミシェル・ゴンドリー
2、 「ミリオンダラー・ベイビー」(クリント・イーストウッド
3、 「宇宙戦争」(スティーブン・スピルバーグ
4、 「ティム・バートンのコープスブライド」(ティム・バートン/マイク・ジョンソン)
5、 「ライフ・イズ・ミラクル」(エミール・クストリッツァ
6、 「亀も空を飛ぶ」(バフマン・ゴバディ
7、 「さよなら、さよならハリウッド」(ウディ・アレン
8、 「インサイド・ディープ・スロート」(フェントン・ベイリー/ランディ・バルバート)
9、 「マイ・ボディガード」(トニー・スコット
10、 「ランド・オブ・プレンティ」(ヴィム・ヴェンダース

ワースト10

1、 「愛の神、エロス」(スティーヴン・ソダーバーグ 他)
2、 「オープン・ウォーター」(クリス・ケンティス)
3、 「ハードコア・デイズ」(リチャード・グラツァー/ウォッシュ・ウエスト)
4、 「皇帝ペンギン」(リュック・ジャケ
5、 「ヒトラー 最期の12日間」(オリバー・ヒルシュビーゲル)
6、 「キングダム・オブ・ヘブン」(リドリー・スコット
7、 「ネバーランド」(マーク・フォースター
8、 「アレキサンダー」(オリヴァー・ストーン
9、 「オペラ座の怪人」(ジョエル・シューマカー
10、 「アイランド」(マイケル・ベイ