読了 「塀の中の千夜一夜―アラブ獄中記」

1)「塀の中千夜一夜―アラブ獄中記」足立正生/山口 猛  (愛育社) ☆☆☆★★

塀の中の千夜一夜―アラブ獄中記
 足立正生の著作は「映画への戦略」を読んでいないので、「映画/革命」と本著しか読んでいない。
 1997年の逮捕以来の獄中記だが、日本とは違う異文化の刑務所組織が興味深かった。下世話なハナシをすれば、個人的には足立正生の家族達に引かれる。足立は日本の妻子を残したまま旅立ち、その後離婚したが三人の娘が居る。以前別のところで読んだことがあるが、その内の一人が「親父にタッチする会」を作って15、6の頃だったかレバノンを訪ねて来て、足立が夢見てた親子で酒を飲むことができたが急性アルコール中毒を起こしたハナシとか良い話だと思った。本書でも長女や次女がレバノンに住み着いて日本食を作り差し入れに通ったとか、日本赤軍が摘発を受けた時、長女も一緒に拘置されて強制送還されたとか、以前若松孝二トークショーだったかで、足立は革命だの何だのと格好良いことばかり言っているが、その影には家族を放ったらかしにして行って、家族を犠牲にしたんだと言っていたのと重なり、娘達から見た足立正生とはどういう存在なのだろうと思ったりする。しかし、まあ6年程前までは伝説的人物だったのが、今や爆弾ではなく携帯片手に新宿紀伊国屋から駅に向かって疾走していたりするのだから不思議なものだ。