訃報 脚本家・佐々木守死去


 旧創造社の同人も、戸田重昌、吉岡康弘、田村孟戸浦六宏渡辺文雄と次々と亡くなっているが、いちばん若いから全く心配していなかった脚本家の佐々木守が亡くなった。69歳とのことである。今、一番残念なのは足立正生の新作「テロリスト 幽閉者」を観ずに佐々木守が逝ってしまったことである。
 又、佐々木守は量産し過ぎたせいか現在においてはその存在の貴重さ、ユニークさを体系的に纏めようという動きが見られなかったのが残念だった。とは言え、それはそのうちと思っていたら、こんなに早く亡くなってしまう。本来分厚いインタビュー本が出なければならないヒトだ。
 膨大な数のテレビドラマ、創造社の一連の作品に参加する一方、同時期にテレビでは「ウルトラマン」「ウルトラセブン」「怪奇大作戦」「シルバー仮面」等特撮ものも平行して書いていることに後からフィルモグラフィーを参照して驚いたものだ。個人的には、ウルトラに実相寺が復帰するなら脚本は佐々木守に書いて欲しいと思っていただけに残念だ。
 一方、稼ぎまくっていた時期に「映画批評」を立ち上げ、更に「略称・連続射殺魔」の製作、重信房子の「わが愛わが革命」のゴーストライターを務めたりといった支援活動も特筆すべき。
 映画への参加は80年代以降は数えるばかりとなったが、遺作となったのが市川崑の「新選組」という佳作だったのは良かったと思う。市川崑が、佐々木守と共同脚本という物珍しさに加え、ニューシネマ的な破滅的展開が良く、佐々木守の脚本を得て近年低調気味だった市川崑が久しぶりに秀作を撮ったことが嬉しかった。このコンビが続けば市川崑の新たなる展開になるのではないかという予感は、残念ながら実現しなかったが。
 未映画化脚本として若松孝二と90年代半ばにやろうとしていた「五稜郭残侠伝」というのがある筈で、若松も未だ未練があったようなので実現してくれれば嬉しいが。
 冥福を祈りたい。

「戦後ヒーローの肖像―『鐘の鳴る丘』から『ウルトラマン』へ―」(佐々木守
戦後ヒーローの肖像―『鐘の鳴る丘』から『ウルトラマン』へ―