イベント 「蓮實重彦とことん日本映画を語る VOL.14『映画において、人はいかにして横たわるか』〜やくざ映画からにっかつロマンポルノへ〜」「第18回ピンク大賞」
2)「蓮實重彦とことん日本映画を語る VOL.14『映画において、人はいかにして横たわるか』〜やくざ映画からにっかつロマンポルノへ〜」(青山ブックセンター本店カルチャーサロン)
日本映画 vol.14 映画において、男女はいかにして横たわるか −「やくざ映画」から「にっかつロマンポルノ」へ− ABC 2006/04/15 蓮實重彦 制度的な意味で、また造形的にいっても、映画における男女は、同時に横たわることを執拗に避けてきた。その制約がいかにして緩んできたかを、「やくざ映画」(そこでは、横たわることは死を意味する)から「にっかつロマンポルノ」(そこで、衣服を脱ぎ捨てた男女が横たわることだけが求められていたかは、大いに疑わしい)への流れの中に探ってみたい。その前提として、グリフィス以来、横たわる女(あるいは男)にキャメラがどのようなアングルにおさまっていたかをまずたしかめておく。また、わがくにの映画史でいうなら、「やくざ映画」も「にっかつロマンポルノ」も、撮影所システムの崩壊時にあわられたことは特筆すべきである。とりわけ、日活の破産につづく、「にっかつロマンポルノ」の「成功」(撮影所出身の新人監督の最後の登竜門でもあった)は、わが国におけるインデペンデント系の作家の成立を十年遅れさせたことを見落としてはならない。 Ⅰ-1 レオ・マッケリー『新婚道中記』(1937) The Awful Truth(Leo McCarey) Ⅰ-2 グリフィス『散り行く花』(1919) The Broken Blosson(David W. Griffith) Ⅰ-3 ブレッソン『ブローニューの森の貴婦人たち』(1919) Les Dames du bois de Boulogne(Robert Bresson) Ⅰ-4 小津安二郎『晩春』(1949) Ⅰ-5 ダニエル・シュミット『今宵かぎりは』(1972) Heute Nacht oder nie(Daniel Schmid) Ⅰ-6 カール・ドライヤー『奇跡』(1955) Ordet(Carl Theodor Dryer) Ⅱ-1 マキノ雅弘『次郎長三国志 第六部「旅がらす次郎長一家」(1953) Ⅱ-2 森一生『薄桜記』(1959) Ⅱ-3 ジョン・フォード『リオグランデの砦』(1951) Rio Grande(John Ford) Ⅱ-4 マキノ雅弘『侠客列伝』(1968) Ⅱ-5 マキノ雅弘『日本やくざ伝・総長への道』(1971) Ⅱ-5 加藤泰『明治侠客伝・三代目襲名』(1968) Ⅲ-1 村川透『白い指の戯れ』(1972) Ⅲ-2 曽根中正『秘[○]女郎市場』(1972) Ⅲ-3 小沼勝『生贄夫人』(1974) Ⅲ-4 田中登『人妻集団暴行致死事件』(1978) Ⅲ-5 神代辰巳『恋人たちは濡れた』(1973) Ⅲ-6 神代辰巳『四畳半襖の裏張り』(1973)
3)第18回ピンク大賞(新文芸坐)
普段ピンク映画館には行かない癖にピンク大賞だけ駆けつけてベスト作品のみを観るのは下品この上ないと我ながら思うが、とは言え授賞式の後に5本立てで未見の作品を観ることができるのは楽しいので後ろめたさを感じつつ嬉々として劇場に向かう。観ながらせめて国映の作品だけでも観に行くようにしなければとは思っているのだが。実際今春も井土紀州脚本の「姉妹 淫乱な密戯」は面白そうだったので観に行くつもりだったが見事にスケジュールを忘れて見逃した。
昨年は、「たまもの」効果か女性客も多く、蒼井そらが受賞したせいもあってか補助席も出て入りきらないぐらいの客入りだった。又、上映作品も「熟女・発情 タマしゃぶり(たまもの)」「淫らな唇 痙攣」「美肌家政婦 指責め濡らして」という秀作に、作品の完成度とは別に部分部分の魅力溢れる「制服美少女 先生あたしを抱いて(つむぎ)」もあり、非常に豊かな上映会と言えた。
客入りはほぼ満席だが昨年ほどではなく、又女性客も減った印象があった。林由美香も佐々木ユメカも居ないせいか。
作品に関しては今年は小粒だそうで、自分は既に観ていたのは「かえるのうた」こと「援助交際物語 したがるオンナたち」だけだったので、どんなものかと思いつつ観たが、上映された5本に限って言えば、やはり「援助交際物語 したがるオンナたち」がダントツで、続いて未知の作品だった「わいせつステージ 何度もつっこんで」が素晴らしいので驚いた。両作に主演する向夏は本当に魅力的で、彼女の出演作を追って行こうと決めた。期待していた「欲情ヒッチハイク 求めた人妻」は凡庸だった。
授賞式は、あの人の不在の大きさを感じるのみで、一年前には同じ舞台でアシスタントを務めながら、佐々木ユメカと並んで主演女優賞を受賞して泣いていた林由美香の姿が鮮明に蘇り、まさかそれから二ヵ月後に亡くなるとは思いもしなかった。そういう意味で、盛り上がりに欠ける授賞式だったと言えなくも無く、追悼色の強い感があった。泥酔した池島ゆたかの仕切りも、流石に一時間以上同じ調子でノラリクライやられるとイライラしてきた。ま、人の良さが滲み出ているのは終盤の林由美香を追悼する箇所で泣く姿を見ても伺えるので腹が立つまではいかず、ま良いかと。
林由美香追悼として、これまでのピンク大賞授賞式から昨年までをダイジェストで流し、改めて不在を嘆く。由美香ママが登壇し、受賞。やはり「由美香」の印象のままオッサンみたいな人だ。由美香ママが一種の崇高さを湛えて由美香を語り、感情がやや危うさを感じさせる程にまでなっていることに、喪失感の大きさを感じ、気の毒に思う。特定の宗教団体に纏わることまで口にするのではないかという危惧感も一瞬抱いたが、池島ゆたかのフォローもあり、そこまで行かず終了。
2005年度ベストテン <作品部門> 1位 援助交際物語 したがるオンナたち(国映=新東宝・いまおかしんじ) 2位 わいせつステージ 何度もつっこんで(国映=新東宝・後藤大輔) 3位 痴漢電車 挑発する淫ら尻(新東宝・友松直之)) 4位 欲情ヒッチハイク 求めた人妻(オーピー・竹洞哲也) 5位 ミスピーチ 巨乳は桃の甘み(オーピー・吉行由実) 6位 年上のOL 悩ましい舌使い(オーピー・吉行由実) 7位 欲情喪服妻 うずく(オーピー・国沢実) 8位 ハードレズビアン クイック&ディープ(新東宝・佐藤吏) 9位 人妻を濡らす蛇 −SM至極編−(オーピー・池島ゆたか) 10位 襦袢を濡らす蛇 −SM開華編−(オーピー・池島ゆたか) 次点 援交性態ルポ 乱れた性欲(オーピー・竹洞哲也) <個人部門> 監督賞/竹洞哲也(欲情ヒッチハイク 求めた人妻、他) 脚本賞/小松公典(欲情ヒッチハイク 求めた人妻、他) 女優賞/向夏(援助交際物語 したがるオンナたち、他) 華沢レモン(美肌教師 巨乳バイブ責め、他) 男優賞/松浦祐也(痴漢電車 ゆれて密着お尻愛、他) 牧村耕次(襦袢を濡らす蛇 −SM開華編−、他) 吉岡睦雄(SEXマシン 卑猥な季節、他) 新人監督賞/対象者なし 新人女優賞/夏目今日子(ハードレズビアン クイック&ディープ、他) 平沢里菜子(援助交際物語 したがるオンナたち、他) 池田こずえ(肉体秘書 パンスト濡らして、他) 矢藤あき(美肌教師 巨乳バイブ責め、他) 技術賞/加藤キーチ(音楽・ミスピーチ 巨乳は桃の甘み、他) 特別賞/林由美香(女優としての全功績に対して)