「日本残酷物語」をめぐる愚かな観客の残酷な物語

 「映画秘宝」の中川信夫特集で、「日本残酷物語」という作品があることを初めて知り、これは是非観なければと思った。中島貞夫の「にっぽん'69 セックス猟奇地帯」との比較もしたいと思いつつ、当初行く予定だった日曜が不可になり、何とか無理矢理最終日である今日の午後の時間を空けた。しかし、午前中の打ち合わせが長引き、電車、バス、タクシーと乗り継ぎ、ギリギリ若しくは数分回るぐらいにラピュタ阿佐ヶ谷に到着するとわかった。受付に走り込んだところ、満員で立見も不可につき入場お断りと言われてしまい、スゴスゴ帰るハメになった。何の為にタクシーまで走らせたのか。ナウシカだかラピュタだか知らねえが馬ッ鹿野郎ー、と悪態をつきそうになるが、ま、混雑が予想されるのを知っておきながら余裕を見て来なかった自分が悪い。ラピュタのキャパを承知の上なのだから仕方ない。
 で、戻って仕事をする気力も起きず、帰ったところで手もつくまいと判断し、こうなった以上、予定をキャンセルし、昼間っから映画をハシゴするしかないと決め、阿佐ヶ谷で食事してから渋谷へ出て、映画3本観て何とか機嫌を直して帰る。
 とは言え、「日本残酷物語」が13時からの回のみというのは残酷なハナシで、見逃したヒトも多いに違いない(と言いつつ自分が観たいだけのハナシだが)ので、是非再映なり他の大きな場所で上映していただきたい。
 新文芸坐中島貞夫特集で、「にっぽん'69 セックス猟奇地帯」と「ポルノの女王 にっぽんSEX旅行」が1日のみの上映で観客が溢れかえったので急遽オールナイトを組んで上映してくれた御蔭で自分は観ることができて助かった(因みに「ポルノの女王 にっぽんSEX旅行」はラピュタで6月末から〈荒木一郎特集〉を行うので再び観ることができるそれにしてもシネマヴェーラ渋谷の〈笑うポルノ、ヌケるコメディ〉と言いこういった作品群を上映してくれる劇場が場所を変えつつ存在していることは嬉しい)。
 と言う様なハナシを友人にしたら、自分への慰めの言葉は全くなく、タクシーを使うことの無駄遣いやら、何故平日の昼間にそんなに客が来るのか、その人達はそんなに時間が自由になるものなのかと問われたが、そこが映画都市東京の不思議である。