映画 「変態村」「ラストデイズ」「マザー、サン」

89)「変態村」[CALVAIRE] (ライズX) ☆☆☆

2004年 フランス・ベルギー・ルクセンブルグ カラー シネスコ 94分 
監督/ファブリス・ドゥ・ヴェルツ    脚本/ファブリス・ドゥ・ヴェルツ ロマン・プロタ    出演/ローラン・リュカ ジャッキー・ベロワイエ フィリップ・ナオン ジャン=リュック・クシャール ブリジット・ラーエ

 ギャスパー・ノエやトリアーやリンチやらと名前を出して煽っているが、「ウイッカーマン」わけのわからなさと気品があれば良いなと思いつつ観ていたが、何のことはないB級のプログラムピクチャーで、気楽に楽しんで観ることができた。
 「ジェリー」でエライ目に遭ってから基本的にライズXではビデオ作品以外観ないことにしているのだが、今回は仕方なくである。ただ、先日「HAZE」をここで観た際に気付いたのだが、プロジェクターが変わったのだろうか?現在置いてあるのは業務用の大きなDLPだが、確か「赤線」や「ジェリー」を観た頃は民生機の小さなものだった気がするのだが、どうだろうか。記憶違いかもしれない。ただ、記憶が確かならば、映写の質は上がっており、黒が潰れてディテイルがまるでわからないということは無かった。ま、テレシネ状態にもよるのだが。
 偶々訪ねたオッサンが変態でエライ目に遭うという不条理劇だが、主人公がドサ回りの歌手で、開巻でピッチリ横分けで歌う姿が意味が無くて良い。
 上記に名前が挙がっている中ではギャスパー・ノエに最も近いが、ノエも作を重ねる毎に本人が思っている程過激ではないのが失笑してしまうが、本作などはもう少し目をそむけたくたるようなエゲツナサがあった方が良かったように思う。又、オッサンの変態っぷりも大したことなく、わけのわからなさが弱い。
 一夕のエンターテインメントとしては悪くない。

90)「ラストデイズ」[Last Days] (シネマライズ) ☆☆☆★★

2005年 アメリカ カラー スタンダード 97分 
監督/ガス・ヴァン・サント    脚本/ガス・ヴァン・サント    出演/マイケル・ピット ルーカス・ハース アーシア・アルジェント スコット・グリーン ニコール・ヴィシャス ハーモニー・コリン

 「エレファント」「ジェリー」(製作順は逆)といったガス・ヴァン・サントの近作にすっかり驚いてしまうのは、あれだけ作を重ねたベテラン監督がまるで初めて映画を撮ったかのような初々しい秀作を撮ってしまっているからで、本作はその方法論を更に発展させたものになっている。
 本作のモデルとなったカート・コバーンについては殆ど知らず、ニルヴァーナにしても、「ネヴァー・マインド」や「イン・ユーテロ」を聴いた程度での知識しかない。なので、モデルとの比較であれこれ思うことなく、純粋に映画として観ることはできた。
 開巻の鬱蒼と茂った林を移動するマイケル・ピットをロングの横移動、川へ崖を下る縦の移動をロングで捉えたショット、歩を進める彼の後姿を捉えた前進ショットなど、ガス・ヴァン・サントらしさに満ちた素晴らしいショットの数々に嬉しくなる。
 スクリーンサイズは当然スタンダードで、現在スタンダードで映画らしい映画が撮れる筆頭がガス・ヴァン・サントだと分かる。
 (続く)

91)「マザー、サン」[MOTHER AND SON] (ユーロスペース) ☆☆☆★★

1997年 ドイツ/ロシア カラー スタンダード 73分 
監督/アレクサンドル・ソクーロフ    脚本/    出演/ガドラン・ゲイヤー アレクセイ・アナニシノフ