映画 「三味線とオートバイ」「チューブ博士の狂気」「ほほえむブーデ夫人」「バレエ・メカニック」「幕間」「純粋映画の五分間」「貝殻と僧侶」「塔」

昭和の銀幕に輝くヒロイン 桑野みゆき
120)「三味線とオートバイ」(ラピュタ阿佐ヶ谷) ☆☆☆

1961年 日本 松竹大船 カラー シネスコ 81分 
監督/篠田正浩    脚本/柳井隆雄    出演/川津祐介 桑野みゆき 月丘夢路 森雅之 瞳麗子 国景子 菅原文太

 観ている限りにおいて、篠田正浩の作品は一貫して凡作だと思うのだが、そう断を下せる程作品を観ていない。これまでにソフト化されているのは「乾いた湖」「乾いた花」「暗殺」「美しさと哀しみと」「処刑の島」「心中天網島」「無頼漢」「沈黙」「札幌オリンピック」「化石の森」「卑弥呼」「桜の森の満開の下」「はなれ瞽女おりん」「悪霊島」「瀬戸内少年野球団」「鑓の権三」「舞姫」「少年時代」「写楽」「瀬戸内ムーンライトセレナーデ」「梟の城」「スパイ・ゾルゲ」程度で、初期の松竹時代の作品は僅か4本しかソフト化されていない。
 考えてみれば、大島渚ですらデビュー作の「愛と希望の街」が初めてビデオ化されたのは1998年に至ってからだし、「悦楽」や「無理心中 日本の夏」も、「御法度」公開に合わせて初ソフト化が実現した。DVDリリースが始まり、「飼育」もようやくソフト化された。吉田喜重にしても「ろくでなし」「秋津温泉」とATG以降の作品しか長らく観ることができず、松竹時代、独立プロを起こした頃の作品は全く観ることができなかったのが一昨年の特集上映からDVD化の道を経て、ようやく簡単に観ることができるよいになった。所詮その程度の文化レベルなのだと言ってしまえばそれまでだが、そろそろ篠田正浩を見詰めなおしてはどうだろうか。何せ未知の作品が多い。殊に初期の松竹時代の全貌が掴みきれて居ない。「恋の片道切符」「夕陽に赤い俺の顔」「わが恋の旅路」「三味線とオートバイ」「山の讃歌 燃ゆる若者たち」「涙を、獅子のたて髪に」「私たちの結婚」「異聞猿飛佐助」「あかね雲」「夜叉ヶ池」といった作品は観る機会が少ない。これだけ有名なのにデビュー作が簡単に観られないのは良いとは思わない。そういえば「異聞猿飛佐助」が個人的には妙に以前から気になっている作品で、幸いつい最近海外でDVD化されて安価で購入できるので、近々取り寄せるつもりだ。
 好きではない監督であっても、ひょっとすれば観ていない作品の中に傑作があるかもしれないという、寛容な心持で篠田正浩を捉えるまたとない機会がラピュタ阿佐ヶ谷で行われている。篠田正浩の特集ではないのだが『昭和の銀幕に輝くヒロイン 桑野みゆき』で「三味線とオートバイ」を、同日の別時間に行われている『銀幕の東京』で「恋の片道切符」が夫々上映されている。いずれも松竹時代の初期作で未ソフト化作品である。
 「三味線とオートバイ」のタイトルは、道路とオートバイを模したアニメーションで、これが軽妙で良い。この段階で、同時代の松竹大船作品との余りの違いを実感するが、開巻のオートバイシークエンスの繋ぎや空撮の入り方など、才気溢れる感がよくでていて、オーソドックスなハナシながらフレームの切り取り方が際立っている。
 桑野みゆきが可愛いし、中盤までは悪くないかと思いつつ観ていたが、それはいつも篠田正浩の作品を観ていて思うことで、やはり総体としては凡作の感が強い。それと言うのも自身の突出した映像センスへの依存が強すぎるからで、ルルーシュやウォン・カーワィ、岩井俊二同様の同時代性への依拠による映像への過信とも言うべきもので、個人的に前述の並びに篠田正浩を並べることを良しとは思ってはいないが、一般的にはそう見做されるだろう。
 どんな古臭い脚本であろうと、映像造形の巧みさで、器用に作品にはしているが、内容空疎、構図主義に陥った映像の羅列に終始したようにしか思えず、語っている内容に映像が寄り添うことは全くなく、独りよがりな映像に凝っているだけという印象が強い。
 本作を観るだけでも、何故篠田正浩が、大島や吉田と違って、あの程度の作品でしかならないにも係わらず、「スパイ・ゾルゲ」に至るまで陽のあたる道を歩み続けたかが理解できる。
 

NFC所蔵外国映画選集 フランス古典映画への誘い (東京国立近代美術館フィルムセンター

 本日から始まった『フランス古典映画への誘い』。長らく観たかったアンリ・ジョルジュ・クルーゾーの「スパイ」を筆頭に気になる作品が多いので極力観に行きたい。ルネ・クレールのレア作も上映される今日は、やはりと言うべきか、山田宏一氏も来ていた。

フランス前衛映画選集
121)「チューブ博士の狂気」〔LA FOLIE DU DOCTEUR TUBE〕 (東京国立近代美術館フィルムセンター) 

1915年 フランス モノクロ スタンダード 14分 
監督/アベル・ガンス    出演/アルベール・デュードネ

122)「ほほえむブーデ夫人」〔LA SOURIANTE MADAME BEUDET〕 (東京国立近代美術館フィルムセンター) 

1923年 フランス モノクロ スタンダード 28分 
監督/ジェルメーヌ・デュラック    脚本/アンドレ・オベイ     出演/ジェルメーヌ・デルモズ アレクサンドル・アルキリエール マドレーヌ・ギティ

123)「バレエ・メカニック」〔BALLET MÉCHANIQUE〕 (東京国立近代美術館フィルムセンター) 

1924年 フランス モノクロ スタンダード 11分 
監督/フェルナン・レジェ

124)「幕間」〔ENTR'ACTE〕 (東京国立近代美術館フィルムセンター) 

1924年 フランス モノクロ スタンダード 28分 
監督/ルネ・クレール    脚本/フランシス・ピカビア     出演/ジャン・ボルラン マン・レイ マルセル・デュシャン インゲ・フリース ジョルジュ・オーリック

125)「純粋映画の五分間」〔CINQ MINUTES DE CINÉMA PUR〕 (東京国立近代美術館フィルムセンター) 

1926年 フランス モノクロ スタンダード 5分 
監督/アンリ・ショメット

126)「貝殻と僧侶」〔LA COQUILLE ET LE CLERGYMAN〕 (東京国立近代美術館フィルムセンター) 

1927年 フランス モノクロ スタンダード 14分 
監督/ジェルメーヌ・デュラック    脚本/アントナン・アルトー     出演/アレックス・アラン ジェニカ・アタナシウ リュシアン・バタイユ

127)「」〔LA TOUR〕 (東京国立近代美術館フィルムセンター) 

1928年 フランス モノクロ スタンダード 11分 
監督/ルネ・クレール