来るべき足立正生の新作のために


 今秋公開が予定されている足立正生の新作「幽閉者 テロリスト」は、既にアテネ・フランセで試写をやったりしているようで今後露出が増えてくると思うが、恐らく公開前には足立正生の特集上映が組まれたりもするだろうが、未だ東京でのイベント等の詳細は聞かない。
 「鎖陰」上映イベント『鎖陰の儀』などで因縁深い京都では一足先に「幽閉者 テロリスト」の先行上映も含めた特集上映が行われるようだ。
 http://www.eizo-butai.org/06info/adati060606.html

日時:2006/ 7/1(土)京都造形芸術大学 映像ホール
日時:2006/ 7/2(日)京都芸術劇場 studio21(京都造形芸術大学内)
Aプログラム:「略称・連続射殺魔」(86分)
Bプログラム:「銀河系」(75分)
Cプログラム:「赤軍-PFLP・世界戦争宣言」(71分)
Dプログラム:「幽閉者」(113分)

 といったもので、チラシには「椀」や「鎖陰」も大きく書かれているのに上映作に含まれて居ないのは妙だが、お近くの方は行かれると良いかと。
 もう6年前になる足立正生全作上映会で、一通り足立の作品は観たが、作品としての完成度は全てが全て高いものではない。むしろ下手だし、失敗作も多い。上記で上映される「銀河系」も、なかなかに困った作品でもある。
 実験映画方面からのみ足立正生を語るのには断固反対で、「堕胎」から始まるピンク映画にこそむしろ足立の真髄がある。
 個人的には「女学生ゲリラ」「性地帯 セックスゾーン」「性遊戯」「叛女・夢幻地獄」「噴出祈願 15歳の売春婦」などが好みで、「女学生ゲリラ」「噴出祈願 15歳の売春婦」「略称・連続射殺魔」以外は足立作品は一切ソフト化されていないので、こういう機会に特集上映やDVD化などしてほしいと思う。沖島勲のBOXが出ているのだから足立正生の実験映画とピンクが夫々BOXで出て然るべきだと思っているが。
 上記引用記事で気になるのは「幽閉者」の上映時間が113分となっていることで、実験映画、ピンク含めて大半が70分代(ピンクとしては必然であったわけだが)の映画作家だった足立正生が113分の映画を作ったことに興味がある。何故113分なのか、何故商業映画の基本に準じた尺数に従ったのか。
 ともあれ、「ミュンヘン」「夜よ、こんにちは」という両秀作が公開された年に足立正生が「幽閉者 テロリスト」を撮ったということが面白い。そして足立の疾走は若松孝二の「実録・連合赤軍」へと受け継がれていく。既に足立は復帰第二作も準備しているというから、足立や若松が新作を連発する時代を体験できるのかと思うと映画史的な流れを崩壊させてくれる心地良さを感じる。
 そー言えば、5年程前に、アータウン立自主映画小学校でコチラを読んだが、その後足立正生ドキュメントはどうなったのだろう。足立正生の30年前の作品に主演した女優とはどの作品に出ていた人なんだろうとか(30年前という言葉と書かれている名前から想像すれば「噴出祈願 15歳の売春婦」の主演女優ということになる)、是非観たいと思ったものだが。完成しているなら観たい。