映画(TV/VIDEO/LD/DVD)「佐藤宏」

50)「佐藤宏」(DVD) ☆☆☆

2006年 日本 バイオタイド・SPOTTED PRODUCTIONS カラー  12分
構成/いまおかしんじ    出演/佐藤宏
かえるのうた [DVD]
 柳下毅一郎が、「かえるのうた」公開時に『女の子同士のなんとなくの友情は「下妻物語」への(ちょっと弱気な)返答だ!』
という素晴らしいコメントを寄せていたが、それはこの作品を「下妻物語」と比較してというわけではなく、客を振り向かせる為の手法として敢えて下妻を出してきているが、夫々異なる魅力溢れる傑作という意味では共通している。そこをDVDにおいて敢えて比較してみると、「下妻物語」の特典に収録された阿部サダヲの一角獣を主人公にした短篇の凡作具合に比べて、「かえるのうた」に収録された「佐藤宏」の方が遥かに面白い。
 いまおかしんじのドキュメント映像の凄さは、完全にいまおかしんじの世界観がそこでも息づいていることで、「南の島にダイオウイカを釣りにいく」同様に、ゆるゆるの世界観に連れ込まれる。
 しかし、女の子の支持も多かった「かえるのうた」の特典やと言うてるのに、何で汚いオッサンが主人公やねんという突っ込みはあるだろうが、「絶倫絶女」といい、妙なオッサンへの拘りは面白い。
 本編でちゃんと踊れていなかった佐藤宏に、踊りを改めて覚えさせるという趣旨だが、これを佐藤宏の住む荻窪の家賃1万8千円の部屋で行う段階で素晴らしい。狭い部屋で佐藤宏がビデオを見ながら、いまおかしんじの叱責を浴びつつ何度も踊る姿の哀切感がたまらない。更に庭に出て踊ろうとすると、途端に奇跡的ハプニングが連続して起こるので、観ていて大喜びしてしまったが、このちょっとしたハプニング目にした時には既に、この世界観に入ってしまっているので、後で考えれば何と言うことはないのだが、腹を抱えて笑ってしまう。
 個人的には、音声をテレビから流しているので、ヴォリュームを思い切りあげて外に音が聞こえるようにしているアナログ感が良く、踊り終わると、慌てて室内に戻ってヴォリュームを下げる佐藤宏が良い。更にそれを外からハンディで横移動していくことで庭から部屋の窓に1カットで行けてしまうのが良かった。