映画 「にっぽん戦後史 マダムおんぼろの生活」「人間蒸発」

molmot2006-08-14

追悼 二人の社会派巨匠 今村昌平と黒木和雄」 (新文芸座
対談:柄本明×金澤誠

 「にっぽん戦後史 マダムおんぼろの生活」は肖像権の問題でソフト化されていない唯一の今村昌平劇場公開作品なので、劇場でしか観ることができない。先週金曜までシネマアートンでもやっていたのだが、ま、新文芸座でもやるから良いやと思っていたら、結局最後の回ギリギリの到着となった。
 知らなかったのだが、上映前に柄本明トークがあるとかで客席は満員の盛況だった。トークだけは立って聞いていたが、30分程の時間の大半を「カンゾー先生」での三國連太郎降板劇について語られていたので有益だった。
 柄本明自身は「赤い殺意」が好きだそうで、「うなぎ」での助演を経て「カンゾー先生」で主役を演じることになったわけだが、ま、三國の降板については、「今村昌平伝説」「撮る」では今村の視点から、キネ旬の今村追悼号では柄本明の視点から語られているが、そこでの結論と同じことを、この場でも語っていたが、そこに到るまでの過程が語られたのが興味深かった。
 柄本がオフで三國に声をかけるカットを撮影していた際、三國はかなりの長科白だったが、何度テイクを重ねても途中で止まってしまったという。最終的には100テイク近くまで行ったらしいが、柄本は三國が科白が入っていない(覚えきれていない)のではないかと思ったという。翌日も30テイク近くまでかかるなど難航し、OKが出ぬまま、今村が「撮影中止!」と声を挙げたという。しかし、それは柄本にも今村にもその日はケツが決まっていたからで、大事になったわけではなく、一端東京に柄本は戻った。そして翌日、三國の降板を聞かされ、代役を依頼されたという。その後、「カンゾー先生」撮了後に続けて出演した新藤兼人の「生きたい」には三國が主演しており、柄本は長科白を三國がスラスラ喋っていたことの驚いたという。又、例の「カンゾー先生」が全シーンにおいてやたらと走るという設定は、脚本上も撮影が始まってしばらくしてからも無かった設定で、途中からやたらと走ることになったという。そのことと、「カンゾー先生」三國降板の公の理由である『足の故障』は関係あるのではないかと。そして、今村と三國の役をめぐる食い違いがあったのではないか、又、テイクが30を過ぎた頃から現場は二人の一対一の緊張感が漂っていたと語っていた。

195)「にっぽん戦後史 マダムおんぼろの生活」 (新文芸座) ☆☆☆★★

1970年 日本 日本映画新社 モノクロ スタンダード 105分
監督/今村昌平    脚本/今村昌平    出演/赤座たみ 赤座あけみ 赤座悦子 赤座昌子


196)「人間蒸発」 (新文芸座) ☆☆☆★★★

1967年 日本 今村プロ=ATG=日本映画新社 モノクロ スタンダード 130分
監督/今村昌平    出演/露口茂 早川佳江
人間蒸発 [DVD]