映画 「朝日は輝く」「東京行進曲」

没後50年 溝口健二 国際シンポジウム MIZOGUCHI 2006]」(有楽町朝日ホール) 

 上映前に岡島尚志が作品の発見、状況を説明した。「朝日は輝く」が今月発売の「雪夫人絵図」に特典収録されるのは昨日初めて知ったのだが、なーんだという思いもあるが、それ以上に映画史的画期的事件なので喜ばしい。






198)「朝日は輝く」 (有楽町朝日ホール) ☆☆☆★★★

1929年 日本 日活(太奏撮影所) モノクロ スタンダード 25分

監督/溝口健二 伊奈精一     脚本/木村千疋男     出演/中野英治 村田宏寿 土井平太郎  沢蘭子 飯塚乃夫緒 入江たか子
 




 こちらは初見。「朝日は輝く」とは、朝日新聞が輝くという意。現存しているプリントは新聞ができるまでを追ったパートのみで物語部分は殆ど残っていない。

 従って、あくまで参考程度に眺めるつもりで観ていたら、朝日新聞編集部内の騒然としたモブシーンの凄ささ、俯瞰気味に編集部内を横移動していくのが良いし、更にオーロラ号が火災を起こした報が入ってからの、記者達の動きなど活劇性に満ちていて、胸を高鳴らせた。

 船からの客員救出シーンなど、最近のシーモンキーとは雲泥の差で、救出された人々が陸に群がる姿も素晴らしい。

 伊奈精一との共同監督作品且つ断片のみ現存なので、何とかオリジナルが世界のどこかで発見されないものかと思わずにはいられない。






199)「東京行進曲」 (有楽町朝日ホール) ☆☆☆☆

1929年 日本 日活(太奏撮影所) モノクロ スタンダード 29分

監督/溝口健二    脚本/木村千疋男    出演/夏川静江 一木札二 高木永二 小杉勇 入江たか子 久間妙子




 
 シネマテーク・フランセーズで修復された版の35mmでの上映は日本初となる。「cinéma 05」の付録としてDVD化されているので入手したが、この版と先頃CSでも放送されたマツダ映画社に残っている断片が、現在観ることが可能な「東京行進曲」で、何度観ても素晴らしいだけに、全長版を観る事が出来ないのが悔やまれる。

 俯瞰で軒下を歩く女をロングで撮れる溝口の凄さを改めて感じる。

 終盤の船に、先日の「とことん日本映画を語る」や今回のカタログでも蓮實重彦が書いている、溝口映画における『そして船は行く』を思い、「朝日は輝く」の船と共に、溝口と船の相性の良さを感じ入る。