映画(TV/VIDEO/LD/DVD)「かきのたね」

58)「かきのたね」 (DVD) ☆☆

2006年 日本 ホリプロ/ビクターエンタテインメント カラー ビスタ  24分 
監督/伊藤由美子   脚本/伊藤由美子    出演/綾瀬はるか 大山建 立石由衣 辻村豪文 辻村友晴
交差点days(初回限定盤)(DVD付)
 「たべるきしない」が素晴らしかった伊藤由美子のショートフィルム第二弾は、同じく綾瀬はるかのセカンドシングル「交差点days」初回盤CDに付いてくる仕様になっている。
 前作の寓話性の加減の良さや、綾瀬はるかにひたすら食べさせるという視点の巧さで、本作にも妙に期待値が高まってしまったのだが、それを差し引いて純粋にショートフィルムとして観ても不発な凡作だった。
 観始めて直ぐ気付くのは、フィルムではないということで、前作が16、35を併用させて寒色の夏を表現して佐内正史の撮影の良さもあって世界観に引き込まれたが、今回は撮影はキャノンのXL-H1を使用している。このカメラはデモでも見たことないので詳細は知らないが、色の作り込みが目玉らしいので、「たべるきしない」のようなイメージコントロールの成功した作品になっているのかと思ったが、ビデオの生っぽさががそのまま出ているので、伊藤由美子のやろうとしている寓話性や、佐内正史がCM等で見せるフィルムでの色の追い込みの魅力が出ていたとはとても思えず、やはりフィルムでやっておいた方が良かったのではないかと思った。まあ、シーン数、カット数が前作に比べてもかなり多いので、スケジュールや予算の都合で小回りの効くXL-H1にしたのかなとも思うが。
 そういった外因だけではなく、今回はオーソドックスなドラマが大部分を占めているので、そうなると途端に凡庸になるのは残念だ。開巻の縁側の実兄とその妻の綾瀬をめぐる科白のやり取りからしてもう一つで、それは前作においてもカフェでの友人と元カレについて話すシーンをバストの切り返し(実際は同ポジで人物を入れ替えて撮っていると思われる)で撮るしかなかったように、オーソドックスな描写になると動脈硬化状態な演出になるのが残念だ。
 ただ、綾瀬はるか赤面恐怖症の自閉気味の女の子役なのは、どー言われようが断然支持してしまうので、畑で桃を頬張るショットなんか最高だった。やはり綾瀬はるかは、たべることに魅力を感じさせる。
 後半の畑泥棒とのエピソードもフィルムで寓話性を前作の様に強調すれば悪くなかったのではないかと思うと残念でならない。前半の家族の科白の多さとシーン数の多さが、平易な普遍的物語を語る難しさを原案・監督・脚本・編集を兼ねる伊藤由美子の限界として感じてしまった。ここまでオーソドックスにするなら脚本家を入れた方が良かったのではないか。或いは前作同様シンプルに、登場人物も綾瀬と後半の泥棒と、兄だけとかにした方が良かった。
 期待が大きかっただけに失望気味ではあるが、綾瀬はるかが依然可愛かったので許せる。