映画「スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ」

molmot2006-10-13

244)「スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ」  (Tジョイ大泉) ☆☆★

2006年 日本 「スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ」製作委員会 カラー ビスタ 99分
監督/深作健太   脚本/丸山昇一    出演/松浦亜弥 石川梨華 三好絵梨香 岡田唯 竹内力 斉藤由貴 長門裕之 窪塚俊介 坂口拓 仁科貴
http://www.toei.co.jp/meta/sukeban/sukeban_long.asx:movie=wmv

 深作健太に思い入れは全く無いが、一応監督作品は全て劇場まで出向くことにしているのは、単にキリやんや眞っちゃん同様、道楽息子や開き直った二代目のやりたい放題やってるのを見るのが好きなんだろう。たぶん。
 「スケバン刑事」を松浦亜弥主演でリメイクし、監督に深作健太と聞いた時は、悪くないのではないかと思った。少なくとも「同じ月を見ている」のような不得意なジャンルよりは、遥かにノビノビとやれるのではないかと思った。それに、プロデューサー的資質がやはり強いのか、次回作に予定されている「エルの乱」にしてもそうだが、妙に大作で予算のかかる作品の企画が通ってしまうのは良いとしても、それを監督するだけの力量が足りていないのは、「BRⅡ」を観ればわかることだが、それだけに、この規模のアクション映画や、Vシネマを量産して演出力をつけた上で「エルの乱」なりを手掛けた方が良いと思った。
 個人的には、深作健太自ら言うほどにはアクションが得意とは思えないのだが、普通はこの世代であれば、深作健太言うところの“先代”の作品を手掛ける際には、いかに違ったものにするかに腐心するところを、深作健太は堂々とオマージュを捧げ、まんまなことを下手なりにやってしまう。だから、案外「スケバン刑事」のようなリメイクを手掛けるなら、東映セントラルや「0課の女 赤い手錠」あたりまで視野に入れた往年のプログラムピクチャーをやろうとするのではないかと思った。もし、そうなら、あの時代の作品を追うヒトは劇場に駆けつけて、見送ってやるのが筋ではないのか、などと思いつつ観たのだが、何とも言い難い微妙な作品だった。
 タイトルの出し方や、斉藤由貴の娘が麻宮サキを襲名するといった設定は悪くないと思ったが、学園という限定された空間が舞台にも係わらず、そこに入り込んで来る、ネットでの不特定多数を対象にした爆弾自殺という設定との距離が遊離しているので、どうにも世界観の距離が掴みかねた。それは、開巻の渋谷の街頭での爆弾自殺シーンのような風呂敷の広げ方をしたり、モロに「羊たちの沈黙」な拘束服で劇伴共々まんまなことをやりながら物々しく護送してきた松浦亜弥を送り込む学園こそが、世界の中心として描かなければ作品が成立しないのに、やはり深作健太スケバン刑事よりも、爆弾をめぐるエピソードに相当固執しているので、バランスが取れていないように思えた。
 個人的には、「BRⅡ」ですら、開巻の新宿副都心のテロシーンで許せると思ったクチなので、爆弾関連のエピソードを今のご時世でやろうとするのは好ましいとは思うものの、エピソードとして巧く消化されていないのでは擁護しかねる。BRまんまな制服だし、ある種「BRⅢ」または番外編として捉えても良いぐらいなので、深作健太の得意な方面に引き寄せているようなので、巧く行くのではないかと思ったが、そうはなっていないのは何故か。脚本を読んでいないので、丸山昇一がどういった形のホンに上げているのかわからないのだが、完成した作品で観る限りでは、深作健太の意向をかなり取り入れているのだろうが、「BR」のようなイベント映画的高揚感には欠け、深作健太との共同脚本、又は深作健太が初稿を書いて、丸山昇一が直してあげるぐらいにした方が、深作健太の良さがもう少し出たような気がする。
 開巻と終盤は悪くなく、アクションシーンもそれなりに見れた。個人的な深作健太作品でのお楽しみである、レギュラー出演者の仁科貴は、今回は競輪選手の格好でアップもなかったが、拓ぼん譲りな死に方を例によってやっていて、良かった。継承を主題とした映画における、深作欣二と川谷拓三の継承を‥と言いたくなるが、まあ、そんな大したもんじゃない。
 低予算だけに爆発が合成頼りでチープだとか、HD撮影のフィルムレコーディングが綺麗じゃないとか、木下ほうかを筆頭にした教師の扱いが要領をえないこともあって学園の世界観が出ていないとか、ネットを主題にするなら「紀子の食卓」ぐらいにまで行かないなら、こんな一瞬で古びてしまうものを重要なアイテムにするならもう少し捻った方が良い、少なくとも文字を声で追うのは止めた方が良いとか、90分割るくらいの尺で見せろとか、二本立てで春休み興行にすればもう少し当たったのではないかとか、諸々思うところもあるのだが、こういった系列で深作健太の作品をまた観たいとは思う。

 因みに、本作公開と同時に出ると思っていた、紋舞らん主演の「スケパン刑事 コードネーム=麻裸宮サキ」も面白そうだ。決め台詞は“おまんこ許さんぜよ!”だそーである。