雑記 『LOFT』『吾輩は猫である』

 仕事と金になるハナシやら全くならないハナシやらが特定の時期のみ一斉に押し寄せて、フト気付くと全く金にならない作業を数時間続けていたりするので混乱気味の中、月末にかけて予定は厳しいのに這うように映画は観る。
 
 本日で終了の黒沢清監督『LOFT』。テアトル新宿モーニングショーのみということで、結局最終日に行くことになってしまう。 どうも映画の見方が悪いので、どーでもいいような映画を時間が空いた時に飛び込んで観てしまい、本来最も観たい方が雑に扱われるという本末転倒気味な状況が続いているのを改善しなければと思う。なんで『ハチミツとクローバー』をあんなに早く観たんやろ。
 更に出かける時に問題があったりして、結局着いた時には既に上映開始から五分が過ぎていた。『LOFT』の為に『めまい』も『降霊』も『回路』も再見したので、予習万全で挑むつもりだったが‥。とは言え、チケットのこともあり観ないわけにはいかず入る。黒沢清の新作を頭を見逃して観るなんて観ていないも同じことなので、何も言えない。画面では中谷美紀西島秀俊に引越しの相談をしているところだった。
 それでも作品には引き込まれ、木に西島が中谷を吊り、自身も首を絞めかかったところへ刑事達が取り押さえにかかる素晴らしいショットまでは、ひたすら高揚感に包まれて見入っていた。その後はややテンションが落ちたが、何にしても繰り返し観たい魅力に満ちていた。しかし、『めまい』をやってるなとか豊川悦司のミイラへの言葉に笑いそうになるところがあったりと、全く一筋縄にはいかない。
 来月の東京フィルメックスで新作の『』を観ようとしていたが、『LOFT』が不完全鑑賞なので控えるべきか考える。
 パンフ買って帰り、仕事続ける。しかし、今日はル・シネマの市川崑傑作選で『吾輩は猫である』が上映される日でチケットも買ってあるだけにどうしようか悩む。『猫』自体はビデオとフィルムセンター合わせて4、5回は観ているので今回どうしても観なければならないということはない。しかし、『LOFT』の不完全鑑賞の痛手は大きく、結局愛着のある『猫』をスクリーンで観た方が能率も上がるだろうとル・シネマへ。

 
 ル・シネマへ着くと、先日も置いてあったのかどうか、気付かなかったが、素晴らしいモノがあった。

 今村昌平お別れの会で置かれてあったので話題になったパネルだが、これは『赤い橋の下のぬるい水』の脚本に記したイマヘイらしい一文だが、お別れの会で使用したモノを今回の特集に合わせて展示してあったのだ。一度眺めてみたかっただけに、感動的にしばし眺める。ル・シネマでチンポと書いたデカイパネルが置いてある違和感が凄い。女性向けのものもあれば良いのにと思うが、直接言葉にしては憚れるだろうから、さっき『LOFT』で好演していた安達祐実の印象が残っていたのか、“すべて具が大きいうちだぞ  安達祐実というのを思いつくが、女性器を“具”と表現するところが奥ゆかしくて、且つちょっと生っぽくて良いのではないかな、と。
 で、市川崑監督『吾輩は猫である』(☆☆☆★★★)。以前観たプリントはフィルムセンター所蔵のモノだったので状態が良かった記憶があるが、今回はかなり痛んだプリントで科白も飛び、退色も進んでおり、あまり芳しくない。更に、少し離れた席に座ったマスクを付けたオッサンが、ありえないような大きな鼾をかいて直ぐに寝てしまい、それがまた止む気配がないので、あまりに鼾が大きくて科白が消されるほどだったので、こっちの持ってた傘で頭を小突いて起こしてやろうと思い(そんなんだから、ヨソのオバちゃまのコメント欄で奴は“見た目チンピラ”などと書かれても文句が言えない)、立ちかけると劇場側が注意しに来たらしく静まったが、終映後もそのオッサンは寝続けていて、一体何しに特集上映に来たんだかと首を傾げる。
 そういった悪条件が重なりつつも、『猫』は素晴らしかった。寒々とした世界の孤独とユーモアとが入り混じった市川崑でしか成立させえない世界を作り出していて、観ていて心地良かった。
 出てくると、劇場の女性が、チンポパネルを男性に説明していたので、横を通りかかる時に淫語の一つでも聴けるかと思ったが、荷物運搬の相談のようだった。二人とも恥ずかしそうにしていたが、偉大なる今村昌平監督の名言だけに何も恥ずかしがることはない。真実の言葉だ。

 

 早々に帰るつもりが、ついでだからとTSUTAYAに寄るが、今日明日はセルDVDが20%OFFで、レンタル半額なので、セル商品に手が出かかるが押さえる。その代わりレンタルで弾ける。桂千穂関連のロマンポルノを必要があって借りねばならなかったが、DVDはレンタル中ばかりで、DVD化は少し先の『暴行切り裂きジャック』(長谷部安春)を仕方なくビデオで。ロマンポルノは小沼勝再評価&借りてないジェネオンDVDを一気に消化すべく『妻たちの性体験 夫の眼の前で、今・・・』『いんこう』『OL官能日記 あァ!私の中で』『花芯の刺青 熟れた壷』(小沼勝)、『少女娼婦 けものみち』『悶絶!!どんでん返し』(神代辰巳)、『待ち濡れた女』(上垣保朗)、DVDになったのと旧作が充実したので『喜劇・爬虫類』(渡辺祐介)を、洋画も旧作DVDが充実したので『黄金の七人』(マルコ・ヴィカリオ)、『遊星よりの物体X』(クリスチャン・ナイビー)を。半額だからと、ちと借りすぎる。いつ観るんだろうか。


 
 渋谷HMVの6Fに来月頭から青山ブックセンターが出てくることを知ったりしつつ、書店で買い逃しの『多重脚本家・桂千穂』を買うつもりが、『植草甚一日記』と『シャーロック・ホームズの生還 新訳シャーロック・ホームズ全集』を買ってしまう。
植草甚一日記 (植草甚一スクラップ・ブック) シャーロック・ホームズの生還 新訳シャーロック・ホームズ全集 (光文社文庫)