CD 『らしゃめん』

『らしゃめん』 鰐淵晴子 

らしゃめん(紙ジャケット)

 紙ジャケで初CD化を果たしたので購入。

 随分前にアナログで購入を考えたことがあったが、見送っていたので今回のCD化は嬉しい。

 いくら牧口雄二に愛着があろうとも、牧口にトドメを刺したあの映画版に愛着があるわけはなく、加藤和彦が参加しているから欲しかった。下記収録曲の内、1、4、5、11、12が加藤作曲。

 有名なこのジャケは当然旦那のタッド若松が撮影しているが、とても良い。

 そういえば、中2ぐらいまで、恥かしながらタッド若松と若松孝二を混同していて、若松孝二の奥さんって鰐淵晴子なんだと思い込んでいた。ピンク=ヌード=イッピー・ガール・イッピーという流れで、タッド若松=若松孝二と思い込んでいた。

 この作品自体は、映画版のサントラではなく先に製作されたもので、このアルバムを基にこの世界観を映画化したのが、牧口雄二の『らしゃめん』で、これも作品の詳細を知るまでは映画に付随した単なるサントラだと思っていた。逆だと知ってから、このコンセプトアルバムは何だろうかと気になっていた。

 鰐淵晴子を意識したのは、『悪魔が来りて笛を吹く』を初めて観てから(これもソフト化が全くされず、96年の『八つ墓村』公開に合わせてようやくビデオ化を果たしたが初見はその数年前のカット版でのテレビ放送だった筈)だが、印象的なのは、大島渚のデビュー作『愛と希望の街』で富永ユキが演じたヒロインは、鰐淵晴子にオファーされていたというエピソードで、大島は鰐淵を希望し、鰐淵も脚本を読み込み意欲はあったものの、金持ちと貧乏人が和解できないラストに納得できず変更してくれと涙ながらに希望してきたが、しかしそれでも和解できないことがテーマなんだと大島は応え、では仕方ないということで鰐淵の出演はなくなったという。大島は、鰐淵が出演していれば、自身の監督人生も彼女の人生も少し変わったものになったのではないかと言っていたが、それは本当にそうなっていたと思う。

 大島渚と言えば、後期作品の編集(と言っても劇映画では『戦場のメリークリスマス』と『御法度』だけだが)を手掛けた大島ともよのゲストトークイベントが東京フィルメックスのイベントの一環で行われる。大島ともよは今回の審査員の一人である。


第7回東京フィルメックス

「映画編集の極意」 大島ともよ
11/23(祝・木) 14:00 (40分)
会場:有楽町朝日ホールスクエア(マリオン11F)

http://www.filmex.net/2006/event.htm

大島ともよを知らないヒトでも、そのフィルモグラフィーを参照すれば興味の沸く存在だと思う。『東京戰争戦後秘話』に出演していた一人であり、田村孟のやっていたシナリオ講座の受講生で、編集をやりたいということで田村に頼み込んで浦岡啓一に弟子入りしたヒトである。大島作品の名編集者であった浦岡が『愛の亡霊』を最後に大島と訣別(『愛のコリーダ』はフランスで編集する理由があったもの『愛の亡霊』は国内でも編集可能なのに態々フランスで編集したのは話題作りではないのかといった疑念があった為とのこと。詳しくは浦岡の著書『映画編集とは何か―浦岡敬一の技法』を参照)した後の大島作品の編集(テレビ作品『Kyoyo,My Mothers Place』『日本映画の百年』を含む)を担っているだけに、トークイベントでは大島渚について多く語られるであろうし、浦岡敬一についても、どういったエピソードが語られるか。個人的には浦岡が自身が外れた後の大島作品について、編集についてどう思っていたかが気になる。これは、創造社解散以降の嘗ての同胞が離れていく過程の中で編集の視点から大島作品を考える上でも気にかかる点だ。
映画編集とは何か―浦岡敬一の技法
 鰐淵晴子からハナシが逸れたが、聴いてみると鰐淵の哀切感漂う声が色っぽくて良い。加藤和彦的には、サディスティック・ミカ・バンドでの『黒船』との共通性を強く感じるのは、個人的にサディスティック・ミカ・バンドのニューアルバムが出たんで、旧作も聴き返して行く中で『黒船』をいちばんよく聴き返してるんで余計そう思うのかとも思う。


『らしゃめん』 鰐淵晴子

1.プロローグ(らしゃめん)
2.らしゃめん馬車
3.つぶて数え唄
4.らしゃめん
5.黒いらんたん
6.燃える
7.わるい夢
8.裏切りの夜明け
9.小舟節
10.死んでもいい
11.しばられて
12.エピローグ(らしゃめん)

http://www.vividsound.co.jp/dtl.php?dtlid=VSCD3475