YOUTUBEで大島渚予告篇を観る

 知らなかったが、大島渚の予告篇が何本かYOUTUBEにアップされていた。すげえな−、YOUTUBE
 しかも、以前言及していた佐々木守が監督した『日本春歌考・予告』や、原正孝(原将人)の監督した『東京戰争戦後秘話・予告』もあったので未見の方は是非観ていただきたい。いづれもDVDには収録されているが、松竹から出ている『日本春歌考』はレンタルもされているのでまだ観易いかもしれないが、ポニーキャニオンから2000年にDVD化された創造社製作分の『東京戰争戦後秘話』『少年』『儀式』などは観る機会が少ないであろうから、是非。
 幻の佐々木守監督作品、原正孝(原将人)監督作品として観てもらっても良いし、一種のショートフィルムとして本編とはまた違った面白味があると思う。
 本当は、足立正生が監督した『絞死刑・予告』があれば、一層大島作品の予告を考える上で引き立つのだが。
 上から製作順に、


  1. 『日本春歌考・予告篇』 監督/佐々木守 http://www.youtube.com/watch?v=rr669n18sog
  2. 『少年・予告篇』 監督/不明 http://www.youtube.com/watch?v=1ZqHExY4Z1Y
  3. 『東京戰争戦後秘話・予告篇』 監督/原正孝(原将人) http://www.youtube.com/watch?v=JqPrBLFUoZ4
  4. 『儀式・予告篇』 監督/不明 http://www.youtube.com/watch?v=TfS-aZMXCrE
  5. 大島渚小山明子夫妻 結婚生活30周年記念パーティー』監督/不明 http://www.youtube.com/watch?v=KJ3UWInckMI


 となる。全体を通して、創造社所属のエエ声俳優達によるナレーションの素晴らしさを感じることができる。『日本春歌考・予告篇』における小松方正もそうだが、『少年・予告篇』『東京戰争戦後秘話・予告篇』『儀式・予告篇』でナレーションを担当する戸浦六宏の声の素晴らしさを改めて感じる。殊に『東京戰争戦後秘話・予告篇』での、あの挑戦的な、 <「状況を鋭く抉る」、と思うだろう。ところがそうじゃないんだ。「現代を鋭く告発する」、と思うだろう。ところがそれが甘いんだな。抉らない。告発しない。風景の中で風景に眩暈を覚え、風景に愛撫し、風景に射精する。大島渚の問題作『東京戰争戦後秘話』。原題『東京風景戰争』>
 というのが実に良い。風景論全盛期における風景映画としてのこの作品を、煽りに煽る。
 『御法度』で、佐藤慶のナレーションが開巻に入ってくることに感動を覚えたが、あれはギリギリに急遽、佐藤慶を呼び出して録られたそうで、大島渚佐藤慶に「あなたの起用は、窮余の一策だった」と述べたという。作品に革命的影響力をもたらすことのできる声を発することができる俳優が居なくなったから、『絞死刑』は例外としても、後期の大島は、『愛のコリーダ』や『日本映画の百年』で、自身がナレーターを務めたのではないのか。『御法度』には大島もナレーターとして声を発しているが、多重構造の声としてもう一方を務めることができる俳優は限られている筈で、結局は、戸浦六宏佐藤慶か、小松方正しか居なかったのではないか。『御法度』製作時には既に戸浦六宏は亡く、そうなると必然的に佐藤慶を起用することになったのではないかと想像してしまう。
 ちなみに、『東京戰争戦後秘話』だけ、DVDに収録されている予告篇と微妙に異なる気がして、念のためにDVDと共に走らせて確認してみたが、同じモノだった。しかし、ショートフィルム的見地から観れば、この『東京戰争戦後秘話・予告篇』が最も面白い。本編の否定を予告でやってのける当時19歳の原将人に驚く。

日本春歌考 [DVD] 少年 [DVD] 東京戦争戦後秘話 [DVD] 儀式 [DVD]