冊子 『また、どこかで』

『また、どこかで −いまおかしんじシナリオ集ー』 いまおかしんじ・守屋文雄 

 前回来た時に、<なんか600円で、いまおかしんじの作品集シナリオが出るらしいので、それは是非欲しいと思ったが、発売は9日からとのこと。>と書いたシナリオ集が、もう発売していた。ロビーで偶々知り合いに会ったら、黙々と『また、どこかで』を読んでいるので、挨拶なしに、オイっ、シナリオ集、と叫ぶ。で、即購入。600円。
 『かえるのうた』『おじさん天国』『ヒバリ(成人館公開題:したがる先生 濡れて教えて)』の脚本を収録し、初の書き下ろし小説という触れ込みで表題の『また、どこかで』が収録されている(コレ、以前『シナリオ』誌にも書いていた先輩の死についてのハナシやね)。巻末には、自主映画、ピンク映画、Vシネマ、脚本提供作を含めた詳細なフィルモグラフィーが掲載されていて、成人館公開題、一般公開題、ビデオ化題、ソフト化の有無に到るまで書かれていて、資料性も非常に高く、いまおかしんじフィルモグラフィーがやや混乱気味だった自分にとっては、とても有り難いものだった。これで、現段階での全作品を追うのが容易になった。流石、松島政一氏編集だと頭が下がる。これが600円で買えてしまうことに、映画パンフ方面の編集やってるヒト、ちょっとは見習ってよ、と。アンタ、800円や1000円盗られて大判の酷いレイアウトで文章スカスカなものを売りつける、タイトルは伏せるが『男たちの大和』みたいな犯罪じみた行為を平気で行う奴だって多いのに。映画特集の雑誌やパンフは、これぐらい充実したフィルモグラフィーを作ってくれたら言うことないのだが。
 コレは、いまおかしんじに深く興味があろうとなかろうと買っておいて損のない、素晴らしいパンフと言うか冊子になっている。
 松島氏の作られた冊子は、幾つか持っているが、これまで出たやつ全部欲しいと真剣に思い始めた。
 
 そういえば、自作上映に立ち会う、いまおか監督は、いつも客出しの際にロビーで、「すいません、すいません」と謝っている。その様子を初めて見かけた頃は、知り合いが来てくれたことに対して、態々すいませんね的要素で言ってるのかと思っていたら、どうもそれだけではないらしく、客にも申し訳なさそうに言っている。先日と今日の客出しの際にも、「すいません、すいません」と言っているのをまた目にして、何で秀作撮ってる監督が自信なさげに客に謝ってるんだろうかと思いながら、この冊子を帰りの電車の中で開いた。降りる際に冊子を閉じたら、フト裏表紙の下段の帯のコメントが目に入った。何人かのコメントの中で、山下敦弘監督が、<作品の上映が終わって お客さんに「すいません‥」と謝っている いまおかさんが好きだ。>と書いていた。笑った。自分も、いまおか監督が好きになった。