映画 『トゥモロー・ワールド』『地獄の天使 紅い爆音』

molmot2006-12-15

289)『トゥモロー・ワールド』〔Children of Men〕  (新宿オスカー) ☆☆☆★★

2006年 イギリス   カラー ビスタ 109分
監督/アルフォンソ・キュアロン    脚本/アルフォンソ・キュアロン ティモシー・J・セクストン デビッド・アラタ マーク・ファーガス ホーク・オツビー    出演/クライヴ・オーウェン ジュリアン・ムーア マイケル・ケイン キウェテル・イジョフォー チャーリー・ハナム


 観る前に何の気なしにココを読んだら、思いきりラストに触れてるがな!と腹が立ったがココはネタバレとか周到に書いてくれるところだから油断していた。ま、観る前に読んだこっちが悪い。それは兎も角、『トゥモロー・ワールド』は秀作だった。

■追記(2006.12.17)
 てなことを書いていたら、その後、妙なことが立て続けに起こった。
 新宿の生首事件の現場へ見物へ行った後、『大蔵怪談映画BOX』が安価だったので買おうとしたら、タッチの差で持っていかれたのは未だ良いとしても、イメフォで『マリコ三十騎』(凄い傑作。後日詳しく)を観ている最中から、突如気分が悪くなり始め、上映が終わるとイメフォのトイレに駆け込み、盛大に嘔吐する。突然のことに驚きつつ、椅子に体を横たえていたら、仕事上の緊急なトラブルが起きたと電話を受け、その後の予定をキャンセルして這うようにして慌てて家に引き返す。その最中に車に跳ねられそうになるわで、『裸足のピクニック』並に不幸が押し寄せてくるので、生首事件を見に行ったのが悪かったかと思いきや、それ以前にココで批判めいたことを書いたのが悪かったんではないかと。そーいや批判対象者の方は、どうもその手の能力を有しているらしい気配もあることだし、これは呪いに違いないと判断して慌てて削除しておく。もう二度とそんなことは言うまいと思う。ついでに白井佳男の黒子を引き千切ってやるから死んだらええねんと言ったのも謝っておこう。


 70年代前半の活動家のハナシみたいな内容を近未来に持っていっているのにまず好感を覚え、『ミュンヘン』『夜よ、こんにちは』と同年に公開されることに意味感じる。本当は『幽閉者 テロリスト』も今年公開されると更に良かったのだが。
 活動家映画は基本的に絶賛体勢に入るので、本作もハナから好感を持っていたが、子供が生まれない社会と、活動家の描写、SFという要素が遊離していなければ良いと思っていたが、杞憂に終わった。しかも1時間49分で描ききるのだ。これは前半がもう震えるほど素晴らしかっただけに、後半にやや失速感と急いだ感があったので、もう少し尺を延ばしても良いとは思ったが。
 開巻のカフェのテロシーンからして興奮する。『天使の恍惚』が脳裏をよぎる。クライヴ・オーウェンが拉致されて新聞紙で壁一面を貼り付けた部屋へ連れて行かれるのに、『夜よ、こんにちは』の拉致や『絞死刑』の新聞紙の部屋を想起する。主人公は元活動家で今はノンポリだ。『テロルの季節』のように再び爆弾を投げるのかと期待する。
 いかにもラブ&ピースなマイケル・ケインを好ましく見詰め、ジュリアン・ムーアの活動家ぶりに瞠目し、殊に車中でのピンポン球の口でのキャッチボールが凄い。瞬時に画面を飛び交うピンポン球に感動し、その後の商業映画とは思えない展開に唖然とする。しかし、内ゲバといった要素も入れ込み、活動家映画としての素晴らしさは更に高まっていく。
 ここから終盤にかけての、あらゆる要素がどんどん落ちていって、作品の根源的要素のみが残るという剥がれ落ちていく描写に惹かれる。ジュリアン・ムーアも、マイケル・ケインも、チャーリー・ハナムさえも、不意にどんどん剥がれ落ちていく。あまりの呆気なさに、少し驚きつつも、抱かれていく子供同様に作品本体が纏っていたものを脱ぎ捨てて行く様で、崇高感があった。ここでは『宇宙戦争』の終盤の様に、玄関に立って待っていてはくれない。
 クライヴ・オーウェンにクレア=ホープ・アンティが牛小屋で纏っていた上着を脱ぎ捨てて、牛の中に立ち尽くすショットは嫌いじゃないが、これ見よがしになっていないかどうか。これは再見して再確認したい。
 終盤の戦火の中の階段を降りていく際のクレア=ホープ・アンティの手元を見詰める兵士達の表情に泣く。


【以下ネタバレ含む】
 ラストは、全てが削ぎ落とされた果ての寓話となって箱舟を待つだけに、あまり形を明快に見せない方が良かったのではあないか。

 何度か観返したいという思いに駆られる秀作だった。エンドロールでジョン・レノンの『Mind Games』に収録されている『Bring On The Lucie』が流れたのには、さめざめと涙が流れた。


NONSTOP!! 暴走列島70's
290)『地獄の天使 紅い爆音』  (ラピュタ阿佐ヶ谷) ☆☆☆★★

1977年 日本 東映東京 カラー スコープ  78分
監督/内藤誠    脚本/田中陽造 荒井晴彦 内藤誠    出演/入鹿裕子 舘ひろし 小野進也 森下愛子 内藤やす子 成瀬正

 明日からは『狂走セックス族』がいよいよ上映。