読了 『ヒッチコック万歳! 』『世界が完全に思考停止する前に』

25)『ヒッチコック万歳!』植草甚一 (晶文社) ☆☆☆☆
26)『世界が完全に思考停止する前に』森達也 ☆☆☆★★(角川文庫)

ヒッチコック万歳! (植草甚一スクラップ・ブック) 世界が完全に思考停止する前に (角川文庫)
 25)現在のようなヒッチコックの全作が観れる環境になってしまうと、本書のような時代に書かれたものを読んでいて辛い思いをすることがある。何の苦労もなく『下宿人』から『暗殺者の家』以前の作品群を観ることができてしまった側からは、植草甚一が観れないその時期の作品へ、思いを馳せている姿が妙に物悲しくなって、植草甚一のようなヒトに現在の豊潤な環境でヒッチコックを見せたいと思ってしまう。或いは、小林信彦のように、『暗殺者の家』以前は、それほど重要でもないでしょうと(実際はそんなことはないのだが)無視してしまうのも又、傲慢さに腹が立つ。
 何にしても、観れない作品を海外の批評を参照して読み解くのが、その参照先が明らかに誤った評価を下して批判しているものだったりするだけに痛々しくなる時もある。
 50年代の諸作への批評は感嘆するのみ。
 26)納得したり、反発したりしながら読み進む、森達也そのものな一冊だった。