映画 『性と愛のコリーダ』『発禁 肉蒲団』『濡れた欲情 ひらけ!チューリップ』

梅田日活ロマンポルノ特集 第2回梅田日活劇場ホームページ ロマンポルノ女優人気コンテスト(73・74年篇)より

 昼頃、大阪に着いたものの、用件までにまだ大分時間があり、行きつけの店も悉く休みになっていたので、映画でも観て時間を潰そうとしたら、いずれも微妙で、どうするかと。フト、ロマンポルノかピンク映画でも観たいと思い立ち、堂山の梅田日活前まで行く。そうすると、丁度『性と愛のコリーダ』『発禁 肉蒲団』『濡れた欲情 ひらけ!チューリップ』の3本立てをやっていたし、時間も丁度良かったので嬉々として入る。『発禁 肉蒲団』は初見、それ以外は以前観てはいたが、劇場で観るのは初めてである。
 梅田が便利なのは、ミニシアターが密集していることで、心斎橋がパラダイスシネマ撤退後のシネマートになってからは微妙な並びなのでアレだし、シネマ・ドゥも日本橋の国名小劇も無くなった現在では、ミニシアター系を観ようと思えば、梅田でほぼ事足りる。たいして広くもないから、移動も徒歩でそう時間がかからないので、東京のようにハシゴをしようとしたら、渋谷から新宿へ、恵比寿へ、神保町へ、有楽町へ、或いは上野へと、相当な移動を強いられることはなく、気軽にハシゴできるのが良い。扇町にあった扇町ミュージアムスクエアへ行くのも、天六ホクテン座へ行くのにしたって、梅田から徒歩でも近い。そういった環境に慣れていたせいか、東京のミニシアター事情に初めは困惑し、見逃す作品が続出した。最近はヒットしている作品なら複数の劇場でかかったりするので、そう面倒でもなくなったが。
 成人館で言えば、自分はこの梅田日活劇場ぐらいしか知らなかった。ここも古めかしいとは言え、清潔ではあるし、レディースシートを導入したり、特集上映に力を入れているので、成人館の印象というのはここが基準となっていて、こんなもんかと思っていたので、新宿国際の荒涼とした光景を初めて観た時は唖然とした。
 久々に入った梅田日活劇場だが、相変わらず70年代か60年代からそのままな雰囲気の場内だった。客層もいかにも大阪な感じのオッサンと、自分と同じ位の年齢のロマンポルノ目当てで来たようなヒトが僅かに居たぐらいのものだった。
 土地柄や、そこに居るヒトのナリを知っているせいか、梅田日活では特に怖い思いをしたこともない。上野ではそうでもないが、新宿国際とかだと、得体の知れないヒトが常時徘徊していたりして、後ろに立たれるとヒヤリとする時がある。
 ただ、禁煙の灯りが灯っていようが平気でタバコを吸うのはどこも同じで、まあ、こういう場ではしゃーない。
 
 こんなことが起こった。自分の前に座っていたオッサンが、観ている最中に自身の服の中をまさぐり始め、タバコを咥えたのが、横を向いた際にわかった。どうも、火がないらしい。で、そのオッサンの近くに座っていた関係ないオッサンに、そのオッサンが地声で、「すんまへん。火、ありまへんか」と聞く。聞かれた方も手振りで無いと言うなり、小声で無いと言えば良いものを、これまた地声で「わし、吸わへんから、火なんか持ってないで」と、実に論理的に返した。そこまで懇切丁寧に説明する必要があるのか。
 で、その聞かれたオッサンも、それなら放っておけば良いものを、お節介なのか何なのか、クルリと後ろを振り返り、おとなしく観ている自分に向かって、「兄ちゃん、火、持ってないか」と聞いてきた。こっちもこのオッサン達のペースにいつの間にか乗せられていたようで、小声で無いと答えておけば良かったものを、何故か「僕、もう止めたんで持ってないですわ」と、これまた実に懇切丁寧に答えてしまう。そうすると間髪入れずに、「ほう、止めたんか。なんで?」と問われ、これまた答えなくても良いのに、危うく「いや、前につきあってた子が止めて、言うから止めたんです」などと言いそうになったが、自分から話を長引かせてどうすると気づき、「ええ‥」と会話を打ち切って、再びスクリーンを見詰めるヒトに戻った。
 ちなみに、火を欲しがってたオッサンは、こちらの会話を尻目にフラフラと外に出て行き、どうやら受付のオッサンに火を貰ったらしく、煙を吐きながら場内に戻って、「おおきに」と自分達に言いながら席についた。場内に灯っている『禁煙』の文字の立場はどうなるんやと。
 しかし、なんでこんなオッサンらと、そんなコミ入ったハナシをせないかんねん、映画を観ている最中やのに。
 

303)『性と愛のコリーダ』 (梅田日活劇場) ☆☆☆★★

1977年 日本 日活 カラー スコープ 分
監督/小沼勝    脚本/田中陽造 鹿水晶子    出演/八城夏子 岡本麗 片桐夕子 谷ナオミ 室井えりな
性と愛のコリーダ [DVD]








304)『発禁 肉蒲団』 (梅田日活劇場) ☆☆☆

1975年 日本 日活 カラー スコープ 分
監督/白井伸明    脚本/大和屋竺    出演/東てる美 岡本麗 二條朱実 芹明香 谷本一

305)『濡れた欲情 ひらけ!チューリップ』 (梅田日活劇場) ☆☆☆★★★

1975年 日本 日活 カラー スコープ 分
監督/神代辰巳    脚本/神代辰巳 岸田理生    出演/芹明香 谷ナオミ 二條朱実 小松方正 間寛平 

 大阪の劇場で観る『濡れた欲情 ひらけ!チューリップ』は迫力が違う。
 『(秘)色情めす市場』を初めて観た学生の頃、天王寺に住んでいたので、ビデオを観終わった後に興奮したまま、自転車で10分程で行ける飛田遊郭内を走り回った。『アンチェイン』を新世界のシネフェスタで観た後に、出てくると映画と同じ光景が広がっていること興奮したり、『追悼のざわめき』でも同じ思いがあった。そういう意味で、『(秘)色情めす市場』を大阪の劇場で観ていないのはやはり残念で、できれば今年3月に閉館が決まったという新世界のシネフェスタで観たかった。観終わって直ぐに映画の舞台を走り回りたい欲求に駆られる作品だから。
(続く)