新春大島渚予告篇大会 『白昼の通り魔・予告篇』『絞死刑・予告篇』『新宿泥棒日記・予告篇』『東京戰争戦後秘話・予告篇』『日本春歌考・予告篇』『少年・予告篇』『儀式・予告篇』『愛のコリーダ・予告篇』『戦場のメリークリスマス・予告篇』『御法度・予告篇』
『白昼の通り魔・予告篇』 (YOU TUBE)
1976年 フランス カラー スコープ 分
構成・演出/佐々木守 出演/川口小枝 小山明子 佐藤慶
『絞死刑・予告篇』 (YOU TUBE)
1968年 日本 モノクロ スタンダード 4分
構成・演出/足立正生 出演/大島渚 佐藤慶 小松方正 戸浦六宏
以前、YOU TUBEに大島渚の予告篇が海外で何本かアップされていたのでココにも貼り付けたことがあったが、肝心の『日本春歌考・予告篇』は何故か、はてな上ではうまく貼れなかったり、『絞死刑・予告篇』が無かったりして残念だったが、さっき見たらあった。これで、予告篇としての大島渚を語る上での最重要作全てが挙がっているようなので今の内に改めて。『日本春歌考・予告篇』も貼れるようになったようだし。
まずは、足立正生監督による『絞死刑・予告篇』。『幽閉者 テロリスト』公開前だけに丁度良かった。
『絞死刑・予告篇』こそは、大島渚の予告篇史の最高傑作であり、足立正生のフィルモグラフィーにおいても重要な位置を占める作品だ。
自分のこの予告篇の初見は、7年前の『足立正生全映画上映会』。その後、『絞死刑』のDVDで再見できた。
予告の構成は、メイキング風な撮影現場へ向かう車中の大島を捉えたショットから始まり、『絞死刑』の撮影現場である竹園の廃映画館へ大島が入っていくと、例の死刑場のセットが見えてくる。この作品が、廃館した映画館を利用してセットを組んだと知識的に知ってはいても、こういったメイキングはこの予告で見るのが初めてなので、まずは物珍しさに惹かれるが、そういった映像のバックでは全篇に渡って、大島がアジっている。これは勿論、本編冒頭の決して聴き取り易くは無いものの、異様な迫力を持たせる大島自身のナレーションに呼応した、作品のテーマを予告でも大島本人に語らせる意図がある。本編のカットがインサートされて、大島が絞首縄にぶら下がって、更に激しくアジるという異様なカットを見せる。ここでの大島の国家への徹底抗戦を宣言する姿は勇ましいが、同時に現在からは空しさを感じさせる部分もある。しかし、「俺とそのゲバラ達」という言葉と共に、メインスタッフ、キャストが指名手配写真風にコラージュされていくのは素晴らしく、この映画とその共犯者達を高らかに紹介し、観ている者を高揚感で包み込む。
足立は、『絞死刑』本編に保安課長の役で出演している。この作品はATG自社製作第一回作品、つまりはATGと監督側プロダクションが500万円ずつ製作費を折半し合う方式で製作された一千万映画の記念すべき1作目となったが、当時ですらも破格の低予算だけに、セット一杯、出演者も純粋な創造社所属俳優とその周辺俳優、または周辺の関係性の濃い素人が出演している。既に創造社同人を離れ『映画芸術』等で『白昼の通り魔』批判を繰り広げたりしていた石堂淑朗が出演しているのも、初見時は何も知らないので何とも思わなかったが、後から考えれば時期が時期だけに凄い違和感だ。もっとも、続く『帰ってきたヨッパライ』の脚本には、足立正生と共に石堂淑朗も参加が予定されていたらしいので、後期創造社の変貌を考える上で、『天草四郎時貞』を最後に劇映画では組んでいない石堂淑朗を再び迎える動きがあったことは、覚えておいた方が良い。
ちなみに松田政男の検察事務官役も、当初は小林信彦にオファーされたが、年末の一ヶ月、撮影以外他の仕事が一切できないのでは困ると断られた。その後は長部日出男にハナシが行くがこれも断られ、ギリギリで松田政男に決まったという。どうも役のイメージでは恰幅の良いキャラクターを欲しがっていたようだ。
そういった、大島と非常に懇意な役者と素人の混成の中で、足立正生は本作の予告篇を依頼される。『映画/革命』での足立の証言を幾つか抜粋すれば、<大島さんは即座に「それは足っちゃんが作る」と言う、お前が作らなけりゃ、俺が作るとも脅すんですよ><私が「格好いいのがいいか、悪いのがいいか」と聞くと、格好いいのしか嫌だと言う。><今で言うメイキング風に、二代目のカメラを持ち込んで撮った。><若いスタッフとアイディアを出し合って、登場人物は、全員の顔を指名手配写真にして入れるとか基本的な構図が出来上がった。>ラストの大島が絞首縄にぶら下がって演説する件については、<大島さんはヤケクソになって、べろんべろんに酔っぱらって来て、自分で首に縄を掛けながら、「さあ、やるぞ!」と一気に撮らせてくれた(笑)。>
原将人は、この予告篇を<予告篇でゲストの足立正生がギターソロをとったというところか。ヴォーカルは大島渚。(中略)しかも、映画を語りながら、死刑制度の是非に関して問い掛けるので、説明に伴うわずらわしさもかったるさもない。そして、最後に、まるでバンドのメンバー紹介のような顔写真入りのキャストとスタッフの紹介がある。>と、見事に解説していた。
刑務所に幽閉されていた幽閉者であり死刑囚Rの姿は、足立の新作に何か影を落としているのだろうか。『幽閉者 テロリスト』の企画を耳にした時、過去の足立の作品よりも何よりも直ぐに思い浮かべたのは『絞死刑』であり、足立が監督した『絞死刑・予告篇』だった。
■資料
『映画/革命』(足立正生)/『映画芸術臨時増刊 足立正生零年』
『東京戰争戦後秘話・予告篇』 (YOU TUBE)
1970年 日本 モノクロ スタンダード 分
構成・演出/原将人 出演/大島渚 後藤和夫 岩崎恵美子
『日本春歌考・予告篇』 (YOU TUBE)
1967年 日本 カラー スコープ 分
構成・演出/佐々木守 出演/大島渚 荒木一郎 岩淵孝次 串田和美 吉田日出子 伊丹一三 小山明子
「ユリイカ」での大島特集の際や「大島渚1968」で佐々木守が「日本春歌考」の予告について語っているが、大島が佐々木に、『守の作った予告を観に行こう』と劇場まで行って共に観て激賞したという。
この予告で印象深いのは、黒バックに白文字で『一つでたホイのよさホイのホイ』と出てから本編とは微妙に異なったカットが幾つか流れ、再び黒バックで『三つでたホイのよさホイのホイ』と出るのが続いていくわけだが、その文字に合わせて、エエ声男優を多数抱える創造社から小松方正が棒読みで読み上げるのが笑ってしまう。こういう作りだというのは、前述のインタビューで語られていたので分かっていたが、予想よりも遥かに早口で『五つでたホイのよさホイのホイ』と次々と読み上げていくので、爆笑度が高まる。
創造社は大島が映画を監督し、田村孟や佐々木守が脚本を書く場と規定されがちだが、実際はそうでもなく、VPを田村孟や佐々木守が監督したりもしているが、そういったものが発掘されれば創造社を異なる視点から眺めることができると思う。
『新宿泥棒日記・予告篇』 (YOU TUBE)
1969年 日本 モノクロ スタンダード 分
構成・演出/不明 出演/横尾忠則 横山リエ 田辺茂一
『少年・予告篇』 (YOU TUBE)
1969年 日本 カラー スコープ 分
構成・演出/不明 出演/渡辺文雄 小山明子 阿部哲夫 木下剛志
『儀式・予告篇』 (YOU TUBE)
1971年 日本 カラー スコープ 分
構成・演出/不明 出演/河原崎健三 佐藤慶 中村敦夫 賀来敦子
『愛のコリーダ・予告篇』 (YOU TUBE)
1976年 フランス カラー スコープ 分
構成・演出/不明 出演/松田英子 藤竜也
『戦場のメリークリスマス・予告篇』 (YOU TUBE)
1983年 イギリス・日本 カラー スコープ 分
構成・演出/不明 出演/デヴィッド・ボウイ 坂本龍一 ビートたけし
『御法度・予告篇』 (YOU TUBE)