『映画秘宝 2007年 04月号』

18)『映画秘宝 2007年 04月号』  洋泉社

映画秘宝 2007年 04月号 [雑誌]
 特筆すべきが、去年関東大震災を止めてくれた角川春樹の言いっ放しインタビューだけではなく、鈴木義昭による『日本セクスプロイテーション映画興亡史』で、第一回はエロ映画のあけぼのとして、何と香取環インタビューをやってのけている。まだ生きてたんだという驚きと、その証言の貴重さに圧倒される。
 『愛の寓話』シリーズなどでその動きはあるものの、ロマンポルノですら、纏まったインタビューなどが無いままに既に重要な関係者の死去が相次いでいる中で、ピンクとなると作品は消失し、当時人気のあった女優の消息なども不明なものが殆どと聞く。香取環のような最も有名なピンク女優ですら、引退後の消息は不明だったのだから、以前若松孝二のイベントで、ジム・オルークが『ゆけゆけ二度目の処女』に主演した小桜ミミに会いたいと懇願しても、若松が無理無理、わかんないってと答えていたのも当然の話だと頷ける。純粋なピンク女優ではないが、横山リエには二丁目の店に行けば会えるというぐらいのものか。
 そういう中で、香取環インタビューをやってのけたのは快挙としか言い様が無く、現在68歳になる香取環のスチールは、ちょっと上品なヨコハマメリーみたいになっているが、ロマンポルノ第1作『団地妻 昼下がりの情事』への主演依頼を断って白川和子に代わったハナシなど重要な証言も多く、充実した非常に感動的な内容だった。
 香取環は、ピンク映画第一作『肉体の市場』に主演したピンク女優第一号ということで有名だが、若松孝二のデビュー作『甘い罠』にも主演しているピンク映画史そのものを背負っている存在で、あれだけ観ることができない60年代ピンクの中で、自分が観ている香取環出演作は『沖縄怪談逆吊り幽霊』『ニュージャック&ベティ モダン夫婦生活讀本』『おんな地獄唄 尺八弁天』『性賊 セックスジャック』『性輪廻 死にたい女』『性家族』程度しかない。逆に言えば、600本とも言われる出演本数を誇るが故に、まだこれだけ観ることができているとも言えるわけで、ハミングバードのビデオを漁ればもう数本増えるとは思うが、ピンク映画の儚さを感じる。
 林由美香の完全な全出演作も、恐らく永遠に観ることはおろか、把握することすらできないだろうが、この量によって支えられているジャンルの持つ魅力は何だろうかと思う。
 結局、今後やるべきは、香取環も林由美香も極力追って行かなければならないと。そして同時代的に追うべき平沢里菜子も本腰を入れて追わないと、既に量に圧倒されて間に合わなくなりかけている。今なら、まだ、何とかなる。

 後、ラピュタ阿佐ヶ谷田中登特集上映は、ロマンポルノ12本、『安藤昇のわが逃亡とSEXの記録』『丑三つの村』、テレビ作品(横溝正史の『鬼火』等数本)も上映されるそうで、ロマンポルノ12本の中になかなか観れないアレやアレが入っているかどうか。明日から高倉健金田一の『悪魔の手毬唄』がかかるので最低2回は観に行くからチラシ出来てるかしらと。