『PARIS,TEXAS,守口』『童貞。をプロデュース2〜ビューティフル・ドリーマー』『俺の流刑地』

イメージリングスpresents 「森達也の第2回ガンダーラ映画祭〜美しい国へ!」 (ロフトプラスワン

【出演】森達也(『A』『放送禁止歌』監督)、山下敦弘(『リンダリンダリンダ』監督)、向井康介(『神童』脚本)、松江哲明村上賢司、他
【司会】しまだゆきやす(イメージリングス

 昨年に続いてLA CAMERAでの上映後は傑作選をロフトで、という流れで顧問・森達也のコメントを聞きつつ観るという趣旨の「森達也の第2回ガンダーラ映画祭〜美しい国へ!」。
 LA CAMERAでも1回目と比較して盛況だったこともあって、ロフトも混むと聞いてはいたので、開場時間に入れれば良かったが、15分ほど遅れて入ると、イベント開始までまだ45分ほどあるというのに席の大半は埋まり、中央席は全く取れず、christofさんが居たお陰で隅にようやく席を確保したぐらいで、ロフトのイベント、しかも平日でこれだけ埋まっているのは久々に見た感がある。
 大体酷い時は―、前に若松孝二×阪本順治×深作健太のよくわからないイベントがあった時は、本当に数えるほどしか客がおらず、しかもその客の一人が妙な奴で、甲高い声で、よりにもよって若松孝二に、どういう了見なのか『機動警察パトレイバー』を観てくれと言い出して、それもしつこく繰り返すものだから、若松がキレ始めて、深作Jrは固まってるしで、阪本順治がDVDを持ってるから若松さんに見せとくからそれでエエやろと、とりなしてハナシを納めるという、その場に居るのが辛くて帰りたくなるようなコトもあった。
 そんなわけで、盛況なのはケッコーなハナシではあったが、直ぐ隣に童貞。シリーズの主人公二人が座っているので観難いことこの上なかったが、ま、自分は既に一度観ていることだし、初見の観客が多いようなので、隅で飲み食いしながら、ボーっと画面を眺めてトークを聞いてるぐらいで丁度良い。
 実は、何故か『童貞。をプロデュース2〜ビューティフル・ドリーマー』の全長版上映と勘違いしていて、今日上映されるのはLA CAMERAでの上映と同一版とは知らず、バージョン違いの比較をする気マンマンで居たので拍子抜けしたが、それはこっちが悪い。昨年も来たことだし、ロフトでまたやるというだけで結局来てしまうのだから。それに、映写ミスの多いような劇場で、つまんない自主映画観ているよりは、シネマアートン下北沢で「東映70年代傑作選」を観るか、ロフトでガンダーラ観てるかの方が、遥かに精神衛生上良いに決まっていると、その自主映画の全プログラムを観た自分が自信を持って言える。
 ところで、イベントタイトルに冠せられている森達也が、ドタキャンして来ないというリアル『ドキュメンタリーは嘘をつく』的展開(イベント開始迄に誰かがどこかで個人録画した某番組を再生していたような気がするので、より生々しかったが)となり、少々残念ではあった。が、上映作品の濃密さとトークも盛り上がっていたので、直ぐに不在を忘れたが。
 上映順は、『PARIS,TEXAS,守口』『童貞。をプロデュース2〜ビューティフル・ドリーマー』『俺の流刑地』だったが、意外だったのは、『PARIS,TEXAS,守口』は、再見しても爆笑させてくれる秀作だったが、隅で観ていると、開場のリアクションが薄いように感じた。非常に生真面目に観ているようで、笑いも起きない。やはり場の違いが大きいのだろうかと思ったが、段々場があったまってくるに従って、作を追うごとにリアクションは良くなって盛り上がって行ったが、今回初めて観るという観客が多かったようで、山下作品だ、というような身構えがあったのだろうかとも思うが、このまま最後まで生真面目に観る客だったら困ると思ったが、間に挟んだトークを経て、ガンダーラな雰囲気になったように思う。何せ、何でしまだPが10年前の河瀬直美のカンヌ受賞映像を流しているのか、というような空気が流れた時は、あららと思ったのだが。こっちは、よりにもよってソレを出すかと笑い転げていたが、客の年齢層からして、あまり受けないのか。

 再見した改めて思ったが、既に上半期が終わりかかっている中、『PARIS,TEXAS,守口』『童貞。をプロデュース2〜ビューティフル・ドリーマー』『俺の流刑地』を超える日本映画が何本あっただろうか。日本映画の質が下がったからこれらの作品が突出して見えるワケではなく、アカラサマにもう映画とは言えないような作品が大量に横行し始めた中で、質の高い作品が纏まってガンダーラ映画祭で上映されていたら目立つのは当然で、自主映画だから凄いワケでも偉いワケでもなく、面白い映画を観客に見せているから凄いのだ。
 第2回ガンダーラ映画祭は、6/18(月)〜7/1(日)にアップリンクファクトリーでも上映されるらしいので、見逃した方は是非。
 自分は、アップリンクでの上映は、今日も飛び入りで自身の童貞経験を訥々と語っていた古澤健の『この作品のタイトルは「石仏さん」です。』を、上映初日の全く面白くなかったバージョンでしか観ていないので、再編集して面白くなっていると聞くので、観に行く。*1
 『童貞。をプロデュース2〜ビューティフル・ドリーマー』は、上記アップリンクでも上映されるが、1作目と合わせて今夏、池袋シネマロサにて公開されるので、アップリンクで観て面白ければシネマロサにも行くと良いかと。
 古澤健松江哲明といった、普段そう自作をグチャグチャいじるタイプではない監督が、編集をやり直したり、ロング版を作っているという視点で観ても面白いと思う。
 などと思いつつ、盛況のうちにイベントは終了。



135)『PARIS,TEXAS,守口』 (ロフトプラスワン) ☆☆☆★★

2007年 日本 スタンダード 分
構成/山下敦弘向井康介

136)『童貞。をプロデュース2〜ビューティフル・ドリーマー』 (下北沢 LA CAMERA) ☆☆☆★★

2007年 日本 スタンダード 37分
構成/松江哲明


137)『俺の流刑地(略称・俺ルケ)』 (下北沢 LA CAMERA) ☆☆☆★★

2007年 日本 スタンダード 分
構成/村上賢司

*1:あと古澤健で言えば、『怯える』が6月17日(日)にユーロスペースで上映されるので、合わせて観ると良いかと。映画美学校だし、観たくねえやと言いたいところなのだが、実際それまでそうしてきたのに、『オトシモノ』を観てしまったせいで、古澤健の作品は追わねばならなくなったので、仕方ない。従って、最新作の美学校実習作『先生、夢まちがえた(仮)』も潜り込んででも観なければならないので厄介だが、これまた仕方ない。