『素晴らしき休日』『監督・ばんざい!』

molmot2007-06-15

156)「素晴らしき休日」(テアトルタイムズスクエア) ☆☆★★

2007年 日本 カラー ビスタ 3分
監督/北野武    脚本/北野武    出演/モロ師岡  ビートたけし


 カンヌ国際映画祭60周年特別記念企画として世界各国のカンヌ所縁の監督に劇場をテーマにした3分間の短編を製作するというもので、観たいと思っていたが、『監督・ばんざい!』との併映が決まり、幸いだった。
 恐らく、今村昌平が生きていたり、大島渚が元気なら、そちらにハナシが行ったのではないかと思うが、その次に位置しているのが北野武というわけか、などと思う。撮影順序的には、本作が最新作ということになる筈。
 他の監督の作品を観ていないので比較できないが、一見して驚くのは、ロケセットではなく、態々この撮影用にセットを組んでいることで、戸外にしても相当人工的で、実景にCGで手を加えたのか、セット+CGなのか判然としないが、カンヌ側からは大して予算をもらえたわけでもないと思うのだが、これだけの規模の作品にしてしまうのところが、如何にも毎回予算を豊潤に使える北野作品らしいと妙な感心はさせられる。
 モロ師岡演じる観客が古びた映画館にやって来て、上映トラブルに合いながらも『キッズ・リターン』を観るというだけのものだが、劇中のスクリーンに『キッズ・リターン』のタイトルが浮かび上がっただけで興奮させられる。10年前までは、もっと言えば『キッズ・リターン』までは、タイトルが出るだけで興奮させられるものが北野作品にはあった。
 映写室で映写するたけしという、上記スチールにも見られるショットが何度か反復されるが、いかにビートたけしが映画的な表情をしているかを改めて感じさせ、フィリップ・ノワレに劣らず映写室に居るだけで映画になってしまう顔であることを確信させられたほどだったが、その素晴らしい表情に比して、この作品の人工的な作りこみは違和感を感じ、『楽日』みたいな映画館にたけしが居ればそれだけで良いと思ってしまうのだが、本作に雰囲気的には最も近い『菊次郎の夏』以降のそれまでの青から緑への変調、『DOLLS』『TAKESHIS'』の赤など、色調の変化や、CGの妙な使い方などが、この作品の人工的な着色世界への違和感を感じさせる。

157)「監督・ばんざい!」[OPUS 19/31] (テアトルタイムズスクエア) ☆☆★★★

2007年 日本 『監督・ばんざい!』製作委員会 カラー ビスタ 104分
監督/北野武    脚本/北野武    出演/ビートたけし 江守徹 岸本加世子 鈴木杏 吉行和子 宝田明 藤田弓子 内田有紀 木村佳乃 松坂慶子 大杉漣 仁科貴