『スパルタの海』『コレラの城』『丹下左膳』『三匹の侍』『無頼漢』

molmot2007-09-22

妄執、異形の人々II
259)『スパルタの海』(シネマヴェーラ渋谷) ☆☆☆★

1983年 日本 東和プロダクション カラー ビスタ  104分
監督/西河克己     脚本/野波静雄     出演/伊東四朗 小山明子 平田昭彦 牟田佛三 


トークショー:木全公彦×磯田勉×真魚八重子×モルモット吉田

 来て頂いた方、ありがとうございました。木全さん、磯田さん、真魚さん、シネマヴェーラ渋谷関係者の方々にも感謝を。
 記念すべき『スパルタの海』一般公開初日という理由が大きいのでしょうが、満席となったようで。トークの出来は兎も角、上映の方はこの後も『スパルタの海』『処女監禁』『二匹の牝犬』『徳川一族の崩壊』『にっぽん'69 セックス猟奇地帯』『異常性愛記録 ハレンチ』『鬼畜大宴会』『戦後猟奇犯罪史』『砂の香り』『ビューティー・ペア 真っ赤な青春』『怪談せむし男』等、個人的には初見、再見、劇場で観るのは初めてという作品も含めて見逃せない作品が続きますので、来年<妄執、異形の人々III>をやってもらう為にも、皆様、是非劇場へ足をお運びください。
 観ている範囲の作品で個人的イチオシは、『にっぽん'69 セックス猟奇地帯』です。
 初見時の感想を貼っておくので、鑑賞の参考にしてもらえれば…。

にっぽん’69 セックス猟奇地帯』(新文芸坐) ☆☆☆★
1969年 日本 東映京都 カラー スタンダード 
監督/中島貞夫 出演/唐十郎

 
 ようやく観ることができた思いが先立つのだが、「新宿泥棒日記」と並ぶ1968年の新宿を捉えた貴重な風俗資料として一級のものだが、その件は後述するとして、まずカラーであることに些か驚く。(撮影は16mm、上映は35mmにブローアップしている)同時代の同系統の作品のほとんどがモノクロであることから、本作も同様に思い込んでいたのだが、そこは流石メジャー会社といったところであろうか(「遊撃の美学 映画監督中島貞夫」によると製作費は1900万だった由)。
 開巻は、カラーで捉えられた1968年の新宿である。空撮を使用している段階でATGとはエライ違いなのだが、続いて東口や現アルタ前で、歩きながらシンナー遊びに耽る若者達を捉える。撮影は中島貞夫の盟友赤塚滋で、晩年の数年をお見かけしたかぎり温厚な気真面目な方なので、この様な同時代性に溢れるキワモノドキュメンタリーを、どのような思いで撮影しておられたのかという思いを抱きもしたが、プロとして実直に撮影しておられた。
 花園神社の唐十郎を始めとする状況劇場演じる「腰巻お仙」の一部、10・21の新宿騒乱等、1968年の半ば伝説化している新宿の息吹を伝えていて非常に面白かった。前述した大島渚の「新宿泥棒日記」と本作の比較だが、言わば「バウンス koGALs」と「ラブ&ポップ」の表裏関係に近いと思った。同じく援助交際を題材にし、渋谷という街を舞台にしながら前者は表通りを舞台にオーソドックスな青春物語に昇華させた佳作であり、後者は極力裏通りを舞台にし、撮影手法を含めて極めて実験的側面の強い作品に仕上がった。これは本作と「新宿泥棒日記」にも当て嵌まる。話題の場所、ヒトを節操無くオーソドックスに捉えた本作と、大島渚の新宿像を多重な世界観と実験的手法で描いた「新宿泥棒日記」。(因みに「新宿泥棒日記」の製作費は「大島渚1968」によると2000万円とのこと。両者共ほぼ同額だが役者を使わない中島の方が製作費的にはかなり楽だった模様)。又、京都出身で創造社設立後、代々木に事務所があった関係で新宿で飲むようになった大島と、東京で大学生活を送り、東映京都に籍を置く中島の新宿というものに対する距離感の違いと考えても良いかも知れない。因みに「にっぽん’69 セックス猟奇地帯」の公開が1969年1月18日、「新宿泥棒日記」が同年2月15日である。
 個人的にはこのまま全編新宿を描いてもらえると良かっのだが、東映的猥雑さに満ちた本作がそのまま終わるわけはなく、続いて美容整形の実態と称して隆鼻手術、豊胸手術等の様子が生々しく描かれる。これは余りにも露悪的で、シリコン注入や、二重瞼にするために瞼を切開する様など、この手のものに平気な自分としても流石に気分が悪くなった。殊に、その手術の様子が、というよりも部屋のカーテンが汚いとか、清潔に思えない部屋で整形手術をやっていることが不快。こんな時代に整形やると弘田三枝子みたいになってしまうという偏見があるのだが…
 以後、海水浴場でボディペインティングする少女、銀座でパフォーマンスを繰り広げるゼロ次元、カウンタ−の下で踏まれることに快感を覚える性倒錯者(クレジットされていないが実は、沼正三)、乱交パーティー、写真スタジオと称した風俗店、トルコ風呂、関西ストリップ、刺青を彫られる女等、これでもかとケバケバしいまでに当時の性風俗が紹介される。個人的に面白かったのが、ブルーフィルム業者で、無人島に上陸して女を酔わせた上で撮影に入る様子など、「エロ事師たち 人類学入門」を想起させ興味深い。そして圧巻が飛田遊郭にカメラを持ち込んでいることで、これは風俗資料として貴重である。
 ラストは再び唐十郎が沖縄を訪ね、基地のある街としての沖縄を捉え、混血女性へのインタビューなどが行われる。
 全体としては、ひたすら猥雑に日本の現況を撮影し、投げ出すように提出する姿勢が好ましく、風俗的部分には退屈なものが幾つかあるが、新宿、ブルーフィルム、飛田が登場しただけで個人的には満足した。

一周忌追悼 丹波哲郎
260)『コレラの城』(新文芸坐) ☆☆

1964年 日本 松竹京都 モノクロ スコープ  分
監督/菊池靖 丹波哲郎     脚本/田坂啓     出演/丹波哲郎 南原宏治 花沢徳衛 鰐淵晴子 三島雅夫

261)『丹下左膳』(新文芸坐) ☆☆☆

1963年 日本 松竹京都 モノクロ スコープ  分
監督/内川清一郎     脚本/内川清一郎 野口泰彦     出演/丹波哲郎 鰐淵晴子 瑳峨三智子 北竜二 園井啓介 東野英治郎 笠智衆    

262)『三匹の侍』(新文芸坐) 不完全鑑賞につき評点なし

1964年 日本 松竹京都 モノクロ スコープ  分
監督/五社英雄     脚本/阿部桂一 柴英三郎 五社英雄     出演/丹波哲郎  幹二朗 長門勇 桑野みゆき 香山美子

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263)『無頼漢』(新文芸坐) ☆☆☆★

1970年 日本 東宝=にんじんくらぶ カラー スコープ  分
監督/篠田正浩     脚本/寺山修司     出演/仲代達矢 岩下志麻 小沢昭一 丹波哲郎 渡辺文雄  米倉斉加年 山谷初男  

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