福間健二監督作『岡山の娘』11月15日(土)よりポレポレ東中野レイトショー公開21:00〜


 いよいよ本日より『岡山の娘』がポレポレ東中野でレイトショー公開される。
 今や大量に溢れかえっているビデオ撮影でレイトショー公開される日本映画の1本だが、そこらの作品とは一線を画する素晴らしい「詩映画」になっている。


 『岡山の娘』を取り上げた紙媒体の一覧が公式ブログに載っていたので引用しておくと下記の通りとなる。

現代詩手帖」11月号 作品評(原將人)
映画芸術」 425号 インタビュー(聞き手/金子遊・作品評(那須千里)
「シナリオ」12月号 『岡山の娘』シナリオ掲載・インタビュー(聞き手/塩田時敏
キネマ旬報」11月下旬号  インタビュー(聞き手/切通理作)・作品評(石原陽一郎・暉峻創三
STUDIO VOICE」12月号 作品評(川本ケン)
朝日新聞」11月7日夕刊  紹介記事

 これ以外にも「映画秘宝 12月号」では田野辺さんの短評が載っている。「現代詩手帖」にも映芸にもキネ旬にも秘宝にも取り上げられ、シナリオ掲載から、果ては朝日新聞にも取り上げられ紹介記事が載る状況に、レイトショーの映画にしては破格の扱いと思った人も多いに違いないが、それは作品が奇妙な魅力が満ちているからに他ならない。



 劇中に大量に引用される詩が客席に響いてくる。画面から言葉をこれだけ観客の耳に心地よく届かせる作品が現在、どれほどあるだろうか。
 夏の岡山の瑞々しい映像が美しい。横移動を多用したその風景は、一見変わり映えしない地方都市のものに過ぎないが、そこに吉田喜重の『鏡の女たち』や、井土紀州の『ラザロ』の風景と同じ不穏感を覚える。何故そんなものを感じるのか分からないが、兎に角、この岡山の風景には美しさと同時に恐ろしさも感じる。娘の苛立ち、憎悪、が街を変えさせるのか。
 次々と引用される詩や、画面に向かって被写体が語るといった手法にヌーヴェルバーグを想起させはするものの、その手法が引用に留まらず、自ら再構築した上でやっているので、鼻につかない。実際、<福間健二・「岡山の娘」製作のための12のメモ>という覚書の中のひとつには、「7 ゴダール以後、大島渚以後という時代を生きていることを忘れないようにする。」という刺激的な一文もある。
 この作品の魅力を言葉にするのは、難しい。画面から既に豊かな言葉が溢れているので、更にそれを語る言葉を探すのが困難だから。しかし、観終わった後に思わず言葉を探したくなる。現在の映画でそういった体験をさせてくれる作品というのは極めて稀有だ。それだけに多くの観客に観てもらいたいと思う。


 監督の福間健二は、詩人として有名だが、映画方面でもその名が知られている。『石井輝男映画魂』『大ヤクザ映画読本』 『ピンク・ヌーヴェルヴァーグ』といった現在の日本映画旧作発掘の上で欠かすことが出来ない書を90年代前半に著している。『異常性愛記録 ハレンチ』や『恐怖奇形人間』のリヴァイバルだって福間監督の書があってこそである。
自分の世代では、これらの書と「映画芸術」の時評で映画を教えられたという思いが強く、ネットもない時代にはフィルモグラフィーの把握だってそう簡単でもなかったので、石井輝男やあの大量に作られたヤクザ映画やピンク映画にどんな作品があって、何が面白いのかを教えてくれた人である。『Pink & Porno 銀幕のエロティシズム』の福間健二×切通理作対談なんて何度も読み返したものだ。

 
 公開に合わせて下記の日程でトークショーが組まれているが、ゲストが多彩で良い。

11月15日(土)、監督と出演者による舞台挨拶あり。
期間中、上映前に下記のゲストとのトーク(各日21時〜)を行ないます。

11月16日(日) 若松孝二(映画監督) 
11月19日(水) 三角みづ紀(詩人) 
11月21日(金) 宮台真司(社会学者)
11月22日(土) 原將人(映画監督) 
11月23日(日) 切通理作(評論家) 
11月27日(木) いまおかしんじ(映画監督)
11月28日(金) 井坂洋子(詩人)
11月29日(土) 沖島勲(映画監督)


特別鑑賞券1,300円(税込)好評発売中!
チケットぴあ Pコード 460-075 (12月5日まで)
当日料金:一般1,500円/学生1,300円/シニア1,000円(すべて税込)
リピーター割引あり。半券提示で2回目から1,000円でご覧になれます。
★毎日先着15名様に「岡山ミニみやげ」プレゼント!


 ところで『岡山の娘』は、福間健二監督第三作目の作品となる。大学生の頃から若松プロに出入りし、若松孝二監督作『ある通り魔の告白 現代性犯罪暗黒編』で脚本・主演を務め、そのギャラで自主映画『青春伝説序論』を監督し、26年後に第二作『急にたどりついてしまう』を撮った。そこから13年の歳月を経て第三作が完成したわけだ。しかし、『青春伝説序論』も『急にたどりついてしまう』も、公開後、観る機会はほとんどなかった。2001年の「アンダーグラウンド・フィルム・アーカイブス」で『青春伝説序論』が上映されたぐらいのもので、『急にたどりついてしまう』に至っては公開後、まったく上映されていない筈だ。自分は17歳の時に『急にたどりついてしまう』という映画が観たくて観たくて、たまらなかったが、地方では観る機会もなく、東京に来れば一度ぐらいはその機会があるだろうと思っていたが、全くなかった。結局パンフレットだけをどこかで入手して飽きずに眺めていたが、それらの作品が公開を記念してオールナイトで一挙に上映される。
 残念ながら当初予定されていた脚本・主演作にして若松孝二監督の傑作『ある通り魔の告白 現代性犯罪暗黒編』はフィルム状態が悪く上映が見送られたが、下記の通りの監督作二本に加えてサトウトシキ監督に脚本を提供した『悶絶本番 ぶちこむ !!』と、出演作にして足立正生監督の最高傑作『女学生ゲリラ』も上映されるので、この機会を逃せば次は十年は無いと踏んでいい。『岡山の娘』と同時に発見可能な映画監督・福間健二を体感できるオールナイトになるだろうから、是非万難を排して駆け付けることを勧める。

『岡山の娘』公開記念オールナイト


福間健二の監督・脚本・出演した幻の作品群が一夜に集結!
11月22日(土)23:30〜
トーク  ゲスト/足立正生(映画監督)×サトウトシキ(映画監督)×原將人(映画監督)


急にたどりついてしまう』 監督・脚本/福間健二 1995/35ミリ/90分
出演/伊藤猛、松井友子、北風太
東京郊外の小さな町で出会った信次とリサ。その大事な場面とは?


青春伝説序論』監督・脚本/福間健二 1969/16ミリ/40分
出演/長谷川隆志、林いづみ     
リスとエル。伝説と空想の迷路をさまよう1968年の青春。


悶絶本番 ぶちこむ !!』(原題『ライク・ア・ローリング・ストーン』)
監督/サトウトシキ 脚本/立花信次(福間健二)1995/16ミリ/60分
出演/本多菊夫、田中要次、葉月螢、吉行由実
何もかもを失った男のさすらいと出会いの物語。


女学生ゲリラ』監督/足立正生 脚本/出口出 1969/35ミリ/73分
出演/芦川絵理、谷川俊之、福間健二 
卒業式を粉砕する造反高校生たちの夢見たものは?



整理番号付き前売券発売中 2,200円  
チケットぴあ Pコード 554-595(11月21日まで)
当日料金 2,500円
★来場者にもれなく、福間健二詩集『きみたちは美人だ』をプレゼント! 

http://d-mc.ne.jp/blog/musume/?page_id=14