『伝記 毛沢東』(☆☆☆★)

戦後の作家展関連上映 映画監督・大島渚

(17)『伝記 毛沢東
☆☆☆★ 川崎市民ミュージアム
ディレクター/大島渚  語り/大島渚
1978年 日本 カラー 66分

 川崎市民ミュージアムで行われている「戦後の作家展関連上映 映画監督・大島渚」では、劇映画以外にもテレビドキュメンタリーが上映されている。それらの作品は過去の大規模な大島渚のレトロスペクティヴで上映されたというが、首都圏から程遠い場に住んでいた遅れてきた世代としては今回の特集は貴重で、これまで観る機会が無かっただけに是非観ようと思っていた。初日の『ごぜ 盲目の女旅芸人』と『裸の時代 ポルノ映画・愛のコリーダ』は見事に寝過して見逃すという幸先の良いスタートを切った。大体自分は午前中は起きれないし、起きても使い物にならないから、午後から夜中にかけてで構わない仕事へと徐々にシフトさせたぐらい午前中を避けた人生を送っているのだから、土台11時に川崎市民ミュージアムに到着するのは不可能なのかと思ったが、奇跡的に2日目は起きることができた。しかし、駅には着いたもののバスの時間が合わず、金もないのにタクシーで向かう。午前中のテレビドキュメンタリーは入場料無料なので、タクシー代を何とか納得させるが、帰りのバスが何故か故障し、途中で代替バスに乗り換えさせられ料金がタダになったので、まあ全体としては損はしてないと思うことにした。
 肝心の作品は、ライブラリー・ドキュメンタリー時代の大島渚のテレビドキュメンタリーにはじめて触れることができた(以前観たことがあるのは『日本映画の百年』ぐらいだ)ことの感動が大きかったが、予想通り大島自身の決して聞き取り易いとは言い難いナレーションで毛沢東の人生が語られていく。しかしそれを、です・ます調で語るのが意外で、柔らかな印象を与えた。殊に少年期の写真に加えれたナレーションには大島の少年への思い入れにどうしても注目してしまうが、取り立てて少年期に熱が入っているようにも見受けられなかった。しかし、大島の声は徐々に熱を帯び始め、革命期には最高潮に達する。
 大島はこの作品以前にも『毛沢東 その生涯と文化大革命』というテレビドキュメンタリーを「20世紀アワー」の枠で製作している筈で比べてみたい。