『大東亜戦争』(☆☆☆★)

恵比寿映像祭 大島渚の戦争 敗者は映像を持たない

(18)『大東亜戦争
☆☆☆★ 東京都写真美術館
構成/大島渚  語り/小松方正 戸浦六宏
1978年 日本 モノクロ 98分


 1日の間に場所を変えて、大島渚のテレビドキュメンタリーを2本連続で観る機会というのは随分と珍しいと思う。しかも共に川崎市民ミュージアムに所蔵されているビデオを使っての上映だ。午前中の『伝記 毛沢東』に続いて午後は、これまた長い間タイトルのみを耳にしていた『大東亜戦争』を観ることができた。何故今回この作品が恵比寿映像祭で上映されることになったのかは知らないが、想像では今回の映画祭に関係しているらしい宇川直宏氏の推薦ではないかと思うのだが。というのも、『御法度』公開時に宇川直宏×中原昌也対談というのがあって、今どこにもフィルムが残ってなくて『大東亜戦争』を観ることができないと宇川氏が話していたからだ。
 上映前に川崎市民ミュージアムのキュレーターが語ったところでは、現在川崎市民ミュージアムには大島のテレビドキュメンタリーが15本保存されているそうだ。本作は、前篇、後篇に分けて放送されたという。
 冒頭には本作が当時の言葉、音、音楽もすべて当時のものを使用していることが文字で示される。実際には足りない箇所は小松方正が当時のニュースフィルムの語調で読み、更にクレジットがないので確認できないが、戸浦六宏は客観視したナレーションを行っていた。そういう意味で、厳密に言えばこの作品で示される当時の画、音のみで構成されているというのはウソで、むしろ追加された映像、音に注目する方が面白い。度々挿入される年月日を示した文字に『新宿泥棒日記』を思う。
 それにしても小松方正の特徴ある声で“大本営発表!!”というフレーズをループで聞かされ続けると中毒症状を起こしそうになった。