『悲しいだけ・欣救浄土』

(6)『悲しいだけ・欣救浄土』藤枝静男

 前々から買おうと思いつつ買い逃していた(学芸文庫は高いのだ)『悲しいだけ・欣救浄土』を購入。帰りの電車で表題の『欣救浄土』読了。いくら短編と言えども全体の半分が若松孝二の『性の放浪』の内容説明で占められるのは凄い。しかし、この作品への最高の批評にもなっている。“「性の放浪」が章に伝えたモティーフは虚無・疑似死であった。あの漫才師のような男(モル註:山谷初男)は、あの映画のなかで、いつも引き返すことの可能な死―蒸発の楽しみを演じて見せてくれたのであった。”って見事に表してるなあ、と。若松というよりもむしろ脚本を書いたの沖島勲を考える上でも参考になる。

悲しいだけ・欣求浄土 (講談社文芸文庫)

悲しいだけ・欣求浄土 (講談社文芸文庫)