『いれずみ突撃隊』(☆☆☆★★)

横尾忠則 編「憂魂、高倉健」刊行記念 孤高のスタア 高倉健
(113)『いれずみ突撃隊』
☆☆☆★★ 新文芸坐
監督/石井輝男  脚本/石井輝男  出演/高倉健 杉浦直樹 砂塚秀夫
1964年 日本 モノクロ 91分

 今回の特集でいちばん楽しみにしていた作品。もう、正に快作。翌年には『網走番外地』が控えており、キャストもWっているだけにその原型として見ることもできるが、観る前は『兵隊やくざ』をパクったようなものかと思っていたが、製作年度は本作の方がわずかに早い。例によってキャラクターありきの話なので、話自体はどうということがないが、一等兵高倉健が軍服を脱ぐと刺青が鮮やかに見えるのには高揚する。中盤で健さんと敵対している上官の安部徹が中国兵に狙撃されて死んでしまって以降は、匿名的な敵一団との戦いになるので、途端に失速気味になるのが残念だった。やはり個と個の女をめぐっての対立という構図が終盤まで持続すべきだったのではないか。それでもラストの周りの仲間たちが次々と戦死する中、健さんが上半身裸となって軍刀片手に敵軍に単独向かっていく後姿のラストには涙する。
 石井輝男らしいのは、終盤の敵からの砲撃止まぬ中、機関銃が熱で動かなくなった際にかける水が無いと言うや、健さんがズボンを下ろしてスグサマ放尿するくだり。緊迫感あふれる最中に突然の放尿には呆気にとられた。
 『いれずみ突撃隊』は新文芸坐では本日のみだが6/24〜6/30まで浅草名画座でも上映される。『日本女佼伝 激斗ひめゆり岬』『河内のオッサンの唄 よう来たのワレ』との無茶苦茶な三本立てである。