『絞死刑』(☆☆☆☆★)

第31回ぴあフィルムフェスティバル 招待作品部門 大島渚講座
(162)『絞死刑』
☆☆☆☆★ 東京国立近代美術館フィルムセンター
監督/大島渚   脚本/田村孟 佐々木守 深尾道典 大島渚   出演/佐藤慶 渡辺文雄 石堂淑朗 足立正生 戸浦六宏 小松方正 松田政男 小山明子 尹隆道
1968年 日本 モノクロ 118分

 『日本春歌考』に続いて黒沢清大島渚講座。
 この作品については主に俳優の演技を中心に語られ、演技が重要視された作品であり、『日本春歌考』とは対照的に音は厳密で殊にリップシンクの厳密さについての言及が興味深かった。演劇的発想、出演者の素晴らしさ、殊に佐藤慶の演技について語る黒沢清という構図は個人的に非常に面白かった。佐藤慶黒沢清の作品に相応しい無表情を湛えた俳優と思うので。それに足立正生が制帽をクルっと後に返す瞬間が素晴らしいので見逃すなかれという発言には笑った。そんな見方したことなかったので。
 余談だが自分の隣に座っていた女子学生風の子が熱心にメモを取っているのは良いのだが、黒沢清の言うことを真に受けすぎて、ノートに「佐藤慶=代表作『四谷怪談』」と書いてあったのには、確かに良い映画だけれども、他にも色々あるしなどと思ったが。
 『絞死刑』は以前もフィルムセンターで観た上に大島作品の中でもビデオ、DVDの再見率が異様に高い作品ではあるが、それでもやはり面白かった。それに、以前の上映時は年配客がチラホラいただけだったので黒沢清効果のお陰で若い観客が『日本春歌考』以上に多かったのも嬉しかった。