『PG NO.105 すべての死者よ、甦れ〜池島ゆたかが見た、生きた、ピンク映画傍証50年史〜』

(19)『PG NO.105 すべての死者よ、甦れ〜池島ゆたかが見た、生きた、ピンク映画傍証50年史〜』

 今年最高の映画書の一冊。先ごろ、イメージフォーラムでピンク映画の特集上映が組まれた際、その最終日に松島出版の松島氏と帰り道一緒になった。その時、映画のパンフやミニコミ誌のことを話した時に『DVU』などに松島出版イズムが継承されてますね、というようなことを言うと松島氏は、もう若い奴に任せたと冗談めかして言っていたが、そんなことはないと思った。松島出版のことだから、絶対若い奴には負けねえぞ、これでどうだ!オマエらやってみろ!という返答を出すに違いないと思っていたら、本書が出た。商業誌では絶対出来ない(実際、商業枠で作られていた書籍用のインタビューとして行われていたものだが、ごく一部しか掲載できないというので、ピンク映画的ゲリラ性を発揮して長大なインタビュー本として『PG』別冊として出版)濃密さに満ちた池島ゆたかの個人史と映画史ならびにピンク映画史が併走する凄い本である。
 だから、ピンク映画に興味はあっても、池島ゆたかに興味がないという人がもし居たとしても、冒頭はピンク映画が始まる以前に作られていたお色気女ターザン映画を観ていた高校生の池島青年のエピソードから始まり、以降観客として60年代のピンク映画を観ていた思い出から、やがて70年代、80年代、90年代、そして現在へと、出演者として、監督として活動する一人の映画人の人生とピンク映画が語られると言えば興味を持ってもらえるのではないだろうか。
 とにかく質量ともに圧倒され、何度でも読み返したくなる面白さに満ちた書である。