『キネマ旬報 2010年1月下旬号』

キネマ旬報 2010年 1/15号 [雑誌]

キネマ旬報 2010年 1/15号 [雑誌]

 新年一号目のキネ旬だが、今号は毎年恒例の城戸賞受賞作掲載号となり、第35回城戸賞準入賞シナリオ『デモステネスと五月のプロペラ』(早船歌江子)が掲載されている。受賞者はシナリオ講座の同期だった方なので、わがことのように嬉しい。昨年も最終選考に残っていたので実力ある脚本家として才を発揮するのではないかと期待している。そんなわけで購入された方、ぜひ一読を。
 新作紹介に伊藤俊也の新作で三億円事件を題材にした『ロストクライム−閃光−』の記事。『映画監督って何だ!』があったとは言え、劇映画となると『プライド 運命の瞬間』以来11年ぶりの新作なのだから、伊藤俊也の悪戦苦闘のフィルモグラフィーを思わずにいられない。『女囚さそり』シリーズから『犬神の悪霊』『誘拐報道』までは断固擁護するとして、『白蛇抄』『花いちもんめ。』『花園の迷宮』『風の又三郎 ガラスのマント』という流れには首を傾げざるをえず、9年ぶりの新作となった『プライド 運命の瞬間』は公開時に『映画芸術』誌上で笠原和夫が、たまにマウンドに上がって豪速球を投げようとしても外れますわな(大意)と言っていたが、正に至言。しかし『プライド 運命の瞬間』はヒットし、直ぐに伊藤俊也は次のマウンドに上がる機会を得る。実際には得そうになる、だ。『金融腐蝕列島・呪縛』の監督を依頼され、実際に発表されるも、間もなくプロジェクトは形を変え、ベテランではなく若手監督で仕切り直しになったらしく、三池崇史が監督となった。結局公開時の監督は原田眞人になっていたが、伊藤俊也版『金融腐蝕列島・呪縛』を観たかったという思いは今も強い。その後、テレビで佐藤純彌が同じ東映東京出身の意地とばかりに『金融腐蝕列島「再生」』を撮っていたが。
 今年は、東映東京の逆襲とでも名付けたいぐらいに一斉に新作が公開される。伊藤俊也に続いて佐藤純彌も『桜田門外ノ変』を撮る。深作欣二の空き枠は深作健太が『完全なる飼育 メイド、for you』『クロネズミ』を撮るという具合だ。それに対して東映京都の深尾道典も『日を愛しむ』を準備していたようだが、こちらは噂では残念ながら製作中止になった模様。