『これで、いーのかしら。(井の頭) 怒る西行』パンフレット


 現在、ポレポレ東中野で上映中の沖島勲監督の新作『これで、いーのかしら。(井の頭) 怒る西行』のパンフレットに「これが、エーガなのかしら。 幻映の東京散歩」という作品評を書かせていただきました。これは試写で観た際にブログへ書いた感想に加筆修正を加えたものです。沖島監督がその後、俳優として鎮西尚一監督の新作『熟女 淫らに乱れて』に出演されたので、そのあたりも加えました。
 ちなみに、この作品を観に行った日は沖島監督と松江哲明監督のトークがあり、話題は当然同じ年に同じく一発撮りで北と南から井の頭公園目指して歩く映画を撮った偶然性への驚きから始まりましたが、偶然と言えば、自分がこの作品の試写状を受け取ったのは、ちょうど同じくポレポレ東中野で松江監督の特集上映の最中で、ポレポレに着いてみると1階のテラスに松江監督と前野健太さんが居たので、既に『ライブテープ』を観ていただけに、思わず二人に「これ『ライブテープ』に似てるんじゃないですか?」と試写状を見せたところ、松江監督は「何これ?」と驚き、前野さんは面白がって観たがっていた記憶があります。
 実際に作品を観ると、これはもうぜひ『ライブテープ』と連続上映して、監督二人のトークが聞いてみたいと思ったものの、この時点では二作とも公開のメドが立っておらず、大体興行がそう都合よく組まれるはずもないので無理だろうと思っていたら、半年後には別々の劇場(と言っても東中野と吉祥寺)で同時期に上映され、監督二人のトークも実現したのだから、どうもこの作品にはそういう偶然性がつきまとっているような気がします。それこそ、何故かパンフレットに書かせていただけたのも、自分が以前から松江監督と沖島監督のファンだったから、試写で見せてもらってそのリンクぶりを最初にブログに書いていたというだけの偶然にすぎないわけですが、そういったことも含めて、不思議な気分で沖島監督と松江監督のトークを聞き入っていました。   


 自分のことはさておいて、このパンフレットが大変充実しているので、ぜひ手にとっていただければと思います。本作の撮影地点を記したルートマップ、シナリオ採録、『一万年、後…。』のプロデューサーでもある山川宗則さんの評、稲川方人さんの評、最後に沖島監督のロングインタビューという構成になっています。パンフレットには作品題よりも大きく「沖島勲怒涛の語り」と記されているのが何とも凄い。
 個人的にドキュメンタリー作品のシナリオ採録というのが非常に好きで、劇映画のシナリオ掲載は別にして、ドキュメンタリーの完成作品からのシナリオ採録というのはビデオ時代以前の慣習だろうとは思いますが、ここでは、劇中では心地よく良い意味で聴き流すことができる沖島監督の語りを文字で読み直すことで、作品の見え方が違ってくるのではないかと思います。また千浦僚さんによるロングインタビューでは、『一万年、後…。』の後に準備していたという劇映画企画『モノローグ―戦後小学生日記―』についても既にシナリオを読んでいた千浦さんが聞いているので、非常に奥行きのあるインタビューになっていて面白かったです。