映画(TV/VIDEO/LD/DVD)「ポセイドン・アドベンチャー」「BORDER LINE」

55)「ポセイドン・アドベンチャー」[The Poseidon Adventure] (LD) ☆☆☆☆ 

1972年 アメリカ  カラー シネスコ 102分  
監督/ロナルド・ニーム    脚本/スティーリング・シリファント    出演/ジーン・ハックマン アーネスト・ボーグナイン レッド・バトンズ キャロル・リンレイ ロディ・マクドウォール
ポセイドン・アドベンチャー [DVD]
 10数年振りの再見だが、全く色褪せていなかった。やはりパニック映画は良い。
 元々「タワーリング・インフェルノ」を先に観て心酔していたので後で本作を観て、そのオリジナル要素を知り、この作品にもやはり浸水した。
 最近の2時間半や3時間以上かけて沈没する映画やアクション映画を見せられていると、本作の無駄の無さには感心する。100分で、10人ほどの集団を十分に描き、夫々のキャラクター、見せ場も用意することができるのだ。
 船の転覆こそ、やはりミニチュアじみてはいるが、その前後の見せ方によって例えミニチュアであっても観客はそれを本物と自然に補完できるのだから、むしろ現在の中途半端なCGを使用した場合に見られる観客に強引な補完を強いるものより良い。
 クリスマスツリーを梯子にして登る際の最初に登る少年を見つめる人々の顔の素晴らしさ。殊にアーネスト・ボーグナインの見上げる目が良い。
 パニック映画の楽しさは幼児の頃から今も変わらない。観ている自分も登場人物の一員となって観てしまい、手に汗握る。迫る水、火、ガスが随所で吹き出る危機感。
 何度観ても良いのは、例の潜水シーンで、邪魔でしかなかった太ったバアさんが、私は水泳が得意なのと突然飛び込み大活躍するところで、今となってはそんな急にと笑ってしまうのだが、映画における突然ナニを言い出すんやリストの上位に入る素晴らしさだ。これに匹敵する驚きは「ミッション・トゥ・マーズ」のラストで、突然ここ残ると言い出して宇宙人と一緒に行ってしまう、「ビルマの竪琴」の水島状態なシーンぐらいか。
 ジーン・ハックマンのラストには何度観ても驚き、泣きそうになる。そして鉄板が切られるのを見つめる生存者達の見上げる目でも、やはりアーネスト・ボーグナインのあの目が印象に残る。
 
 来年にはウォルフガング・ペーターゼンのリメイク版が公開されるので、職人ペーターゼンだけに期待したいが、平行してNBCでTVミニシリーズも放送されるらしく、コチラで予告を観ることができる。凡庸な海洋アクションになっていないかと不安になるが。「沈黙の戦艦」と言うか幻の「ポセイドン・アドベンチャー」下敷き版「ダイ・ハード3」みたいになっているが。この調子で行くと「タワーリング・インフェルノ」もリメイクされるのだろうか‥

56)「BORDER LINE」 (DVD) ☆☆★★ 

2002年 日本  カラー ビスタ 118分  
監督/李相日    脚本/李相日 松浦本    出演/沢木哲 前田綾花 村上淳 光石研 麻生祐未
BORDER LINE [DVD]
 開巻から1/3程までは、画の繋ぎも良いし好調だと思ったが、村上淳沢木哲を置いて走り去ってからは取り留めないモノに終始し、どんどん観ていて苦痛になった。
 こんな5本の映画が作れるくらいの人物とエピソードを投入してどうするつもりだったのだろうか。これだけのテーマを抱えて人物もエピソードも捌ききれていないのに。寓話だと言うのはわかる。しかし、寓話として捉え切れていないから、細部が単に手抜きに見えてしまう。省略とか説明しなくて良い表現とは思えなかった。
 「青 chong」の時から顕著な北野武臭は今回も残っていて、それが単なるマネの領域に留まってはいないから良いとは思うが、それでもそれが有効に作用していたとはとても思わなかった。
 同じ事件をモチーフにしても「17歳の風景」は語り足りていないし、本作は肝心の部分が空白でそれを言われない為に過剰に周りを不要な人物とエピソードで固めている。
 群像劇をやるにはもう少し作を重ねてからやった方が良かったと思う。
 移動という肝心の箇所が抜けていることや、凧の使い方も納得できなかった。