映画 「カレーライスの女たち」「2002年の夏休み」

2)「カレーライスの女たち」(武蔵大学8号館5階8504教室) ☆☆☆★★★

2003年 日本 カラー スタンダード 30分 
演出/松江哲明

 昨年の『シネアストの眼』でようやく初見を果たした秀作だが、面白い作品は直後にもう一度観たくなる法則に沿って再見の機会を伺っていた。『セルフドキュメンタリーの逆襲』でも上映されていたが、行き損ねていたのでようやく再見することができたのだが、やはり面白かった。
 カレーを作るだけで、女性がここまで描けてしまう作品になるということに、やはり驚く。
 この作品に関しては阿部嘉昭氏のコチラを読めば、語られ尽くしているので、特に特記することもないが、では視点を変えてー自分はこの作品の作為性が魅力だった。これは作者に訪ねたわけでもなく、単なる自分の想像だから実際は作為でも何でもなく事実だということも当然あるだろうが、開巻の自室のベランダから捉えた窓外の工事風景、それに続く自室の玄関を捉えたロングに作者自身が工事業者と喋り、続くショットでは一際大きな騒音が響き、そしてテロップで、自分が初めてつきあった彼女はカレーライスしか作れなかった、だから自分はカレーが好きになったという作品の根源が示され、工事が終わるまでの間、知り合いの女性宅を泊まり歩いてカレーライスを作ってもらうと説明される。
 ここまでで気になるのは、自室の玄関で工事業者と話すカットで、流石に会話の初めからではなく、中途(会話内容まではわからない)からではあるものの、FIXのせいか段取りっぽく見えてしまう。それを言い出せば、別にこの一連の工事のシークエンスはいらないと言うこともできる。頭から黒味にテロップで、前述した作者のカレーへの思いを提示し、続けて一人目の女性に会いに行っても作品は成立する。自分の記憶では家の前の工事が会話に上るのは二人目の女性の時のみだ。もっと言ってしまえば、工事のシークエンスと各女性宅の撮影が全く別時期であったとしても成立しなくもない。
 しかし、この開巻の工事シーンが無ければ、この作品は何ともギスギスした企画性が目立ってしまう。女性三人にカレー作ってもらってその部屋に泊まるという作品の根幹は観れば誰でもわかるし、工事というのが口実に過ぎないことも明白だが、開巻の一連のシークエンスが、この作品の寓話性を作り上げる。ここから緩やかに作品の世界観に取り込まれ、観客は作者と共にカレーライスと女の部屋をめぐる旅についていくことになる。(続く)

3)「2002年の夏休み」(武蔵大学8号館5階8504教室) ☆☆☆★★

2003年 日本 よみうりテレビ カラー スタンダード 分 
演出/松江哲明