予告 「日本春歌考」

1967年 日本 創造社 カラー スコープ 3分 
監督/佐々木守   出演/荒木一郎 岩淵孝次 串田和美 吉田日出子 宮本信子 伊丹一三(伊丹十三) 小山明子
 日本春歌考 [DVD]
 松竹関連の大島作品のDVD化で特筆すべきは、「愛と希望の街」以外は予告篇が収録されていることで、これで既に予告が収録されているポニーキャニオンから出ている作品も含めれば、大島渚の予告篇の全貌はほぼ掴めたということになる。たかが予告として軽々しく扱ってはイケナイのは、まず基本的に予告としてよく出来ているものが多いのもあるが、この頃までの日本映画は予告篇は本編をそのまま使うのではなく、予告篇監督を担当する助監督が、予告用に新たに撮影していることが多い。従って極端なものになると加藤泰の「羅生門」の予告の様に本編とは全く異なる加藤泰の「羅生門」と称して良いようなショートフィルムとして楽しむことができる。大島作品の場合でも予告篇を監督している顔ぶれが面白い。「絞死刑」は足立正生、「東京戰争戦後秘話」は原正孝(原将人)が担当しているが、作品への批評と言って言い様な予告になっている。そして、「白昼の通り魔」「日本春歌考」は佐々木守が予告篇を監督している。
 「ユリイカ」での大島特集の際や「大島渚1968」で佐々木守が「日本春歌考」の予告について語っていたのが印象深く、一度観て観たかった。何せ大島が佐々木守に『守の作った予告を観に行こう』と劇場まで行って共に観て激賞したという。
 この予告で印象深いのは、黒バックに白文字で『一つでたホイのよさホイのホイ』と出てから本編とは微妙に異なったカットが幾つか流れ、再び黒バックで『三つでたホイのよさホイのホイ』と出るのが続いていくわけだが、その文字に合わせて、エエ声男優を多数抱える創造社から小松方正が棒読みで読み上げるのが笑ってしまう。こういう作りだというのは、前述のインタビューで語られていたので分かっていたが、予想よりも遥かに早口で『五つでたホイのよさホイのホイ』と次々と読み上げていくので、爆笑度が高まる。
 創造社は大島が映画を監督し、田村孟佐々木守が脚本を書く場と規定されがちだが、実際はそうでもなく、VPを田村孟佐々木守が監督したりもしているらしく、そういったものが発掘されれば創造社を異なる視点から眺めることができると思う。

■追記
YOUTUBEにあったので貼っておく。これが『日本春歌考』の予告だ。