映画(TV/VIDEO/LD/DVD)「東京戰争戦後秘話」

40)「東京戰争戦後秘話」〖「戦争」の戦は略字】(DVD) ☆☆☆★

1970年 日本 創造社=ATG モノクロ スタンダード 94分  
監督/大島渚   脚本/原正孝(原将人) 佐々木守     出演/後藤和夫 岩崎恵美子 福岡杉夫 大島ともよ 福田健一  
東京戦争戦後秘話 [DVD]
 久々に再見するが、異物感は変わらず。DVDで発売して間もなくワゴンセールで投売りされていて、二千円で買ったことを覚えている。
 武満徹のリリカルな音楽。「白昼の通り魔」とまではいかないまでも細かく割られたカット。スコープサイズが圧倒的に多い大島作品の中で数少ないスタンダードサイズであること(「新宿泥棒日記」を別格とすればドラマでスタンダードは劇映画では初の筈)。シークエンス毎に訪れる俯瞰ショットの多さ。大島、篠田、吉田、鈴木、今村といった固有名詞が飛び出してくる唯一の作品。そして風景。開巻のボレックスで撮った16mmの映像なのに音声が入っている異物感。あそこはやはり無音で行くべきではなかったのか。「帰って来たヨッパライ」同様の開巻シーンの反復、煙草屋のバアさんの登場。
 ATG映画を僅かにしか観た事がなかった高校生の頃、「ATG映画を読む」を読みながら、妙に気になる作品、引っ掛かる作品は、みんな解説が短かった。全貌が掴めないという思いは、より観たいという飢餓感となった。「東京戰争戦後秘話」「天使の恍惚」「午前中の時間割り」「煉獄エロイカ」‥何故解説も扱いも短かったのか、今となっては理解できなくもないが、単なる傑作でも駄作でもない異物感の溢れる映画の魅力からは逃れられない。

 原将人による予告篇は、映画史に残る素晴らしいモノ。自由奔放な作りで見せきり終盤には戸浦六宏の「風景により、風景に射精し‥云々」と高らかに続く言葉が心地良い。
 原将人と言えば、「東京戰争戦後秘話」のリメイクを広末涼子でやってしまったとも言える「20世紀ノスタルジア」から約10年を経て、新作「仲よき事は美しき哉」が観られる筈だが、進展はどうなのだろうか。その前にも商業作品第2弾として「20世紀ソングス」というのをやると聞いていたが、実現しなかったようだ。昨年に大分でインしたという記事を読んで以降続報を聞かないので、無事にアップしていれば良いがという思いだが。出演は、宍戸開、近藤公園坂上二郎、白石奈緒美、車だん吉小山明子だそうで、小山明子の名前に、「東京戰争戦後秘話」を起点とする、大島と原将人、創造社の血脈を感じる。佐々木守田村孟も、渡辺文雄小松方正も戸田重昌も亡く、大島も体調が思わしくない中で、原将人の新作に出演する小山明子の姿を、早く観たいと思う。