DVD 「大島渚 DVD-BOX 3」

大島渚 DVD-BOX 3』 
67)「日本の夜と霧」(大島渚
68)「無理心中 日本の夏」(大島渚
69)「帰って来たヨッパライ」(大島渚

大島渚 DVD-BOX 3 日本の夜と霧 [DVD] 無理心中 日本の夏 [DVD] 帰って来たヨッパライ [DVD] 
 『大島渚 DVD-BOX 3』が届く。8200円。
 大島BOX第三弾にして、これで松竹の大島BOXはコンプリート。「御法度」、ポニーキャニオンからの創造社、大島プロダクション製作のDVDも揃っているので、国内で発売されている大島DVDは全て揃ったことになる。結局買い始めてからここまで来るのに5年かかったわけで、発売が始まってからはスムーズに殆どの作品が出た吉田喜重今村昌平に比べると、大島は意外と困難だったなと思う。
 と言っても、小津がDVDで全部発売されて良かったという妄言(フィルムが現存しない作品の多さを考えよ)と同じく、大島だってこれで、全部発売されたとは言えない。劇場長編で言えば、東映の「天草四郎時貞」と、フランスで撮った「マックス・モン・アムール」はビデオが発売されているのみだ。東映のDVD事業への鈍足ぶりからして、客分監督且つ、評価興行共に低い「天草四郎時貞」がDVD化される日が来るのはいつかと思うばかりで、ビデオ化自体が「御法度」公開に合わせて1999年にようやく実現したのだから、DVDなど当面無理だろう。「マックス・モン・アムール」は中古ビデオで入手しているので「天草四郎時貞」も手頃な価格なら買っておいても良いかもしれない。
 個人で録画している未ソフト化作品は「ユンポギの日記」と「日本映画の百年」「アジアの曙」数話程度なので、これらは勿論、「忘れられた皇軍」他テレビドキュメンタリー作品のソフト化が待たれる。
 後はフランス盤の「愛のコリーダ」も買おうかと。フランス公開版と海外公開版の2枚組みになっているとのこと。日本で出ているDVDは、薄くなったとは言え、汚らしいボカシがかかっていて作品を破損している。「戦場のメリークリスマス」はどういうわけか、マスターがビデオマスターらしく、退色していて酷い欠陥品で、先日WOWWOWでやっていたのを眺めたら美しい発色だったので、このレヴェルでソフト化してもらわないと困る。「愛のコリーダ」と「戦場のメリークリスマス」はポニーキャニオンから再発された廉価版で購入したので、未だ腹が立たなかったが、両作とも別の意味で欠陥商品だ。
 『大島渚 DVD-BOX 3』は、前回購入時に疑問だった松竹製作作品のみスクイーズで、創造社提携作品はそうではないという差別化が意味不明だったが、今回は3作ともスクイーズ化されておらず、より奇妙だった。これまでの例に合わせれば「日本の夜と霧」はスクイーズ化されている筈なのだが。しかもこの作品だけチャプターがない。まあまあ、17カットしかないからと好意的に考えなくもないし、普段チャプターを使用することなど滅多にないし、大島自身チャプター嫌いらしいので、別に良いのだが、「日本の夜と霧」への冷淡な態度は、やはり42年を経ても松竹には何かあるのかとさえ思う。
 「無理心中 日本の夏」は、「悦楽」同様7年前に特集上映で観たきり、観返していなかった。理由も「悦楽」同様失敗作と思ったからで、再見で覆るかどうか。田村正和が主演というのも異色で、「東シナ海」といい、妙な失敗作に出ている印象が強い。
 「帰って来たヨッパライ」もしばらく再見していないので、また観たい。今こそ観るに相応しい作品だと思う。「日本春歌考」と同じく初見時は、なんじゃこりゃとしか思わなかったが、再見の度に評価が上がっているので、楽しみだ。唐突にインサートされるフォークルが新宿西口街頭でインタビューするシークエンスが突出していて、“あなたは日本人ですか?”という問いに皆が笑顔で“いいえ韓国人です”と答えるという。しかもそこに登場するのが、佐々木守田村孟大島渚自身であったりという、大島のアヴァンギャルドな方法論が行き着いた感のある美しいものだった。