映画(TV/VIDEO/LD/DVD)「帰って来たヨッパライ」「無理心中 日本の夏」

41)「帰って来たヨッパライ」(DVD) ☆☆☆★

1968年 日本 創造社=松竹 カラー スコープ 80分  
監督/大島渚   脚本/田村孟 佐々木守 足立正生 大島渚     出演/加藤和彦 北山修 端田宣彦 佐藤慶 車大善 渡辺文雄 緑魔子 殿山泰司 小松方正 戸浦六宏 足立正生  
帰って来たヨッパライ [DVD]
 久々の再見となったが、やはり楽しめた。今こそ観返すに相応しい作品だ。どこか地上波で深夜で良いから放送してほしいものだ。
 初見時は、フォークルにそれほど感心はなかったので大島作品として接しただけだったが、以降フォークルもかなり聴きこんだので、アカペラで「イムジン河」を唄う本作への愛着は深くなったが、作品としても魅力的な箇所が多い。
 但し、部分部分が突出して魅力的だというだけで、作品としては歪な印象だ。
 60年代中盤から後半にかけての大島作品は、創造社の作品と一纏めにするだけではなく、松竹提携作品とATG作品とが平行して製作されていたことが重要で、それは大島に限らず中期の吉田喜重の松竹提携作品にしても同様なのだが、大島の場合は厳然とATG時代と区分けできるわけではなく混在していたことが面白い。
 大島・吉田共に松竹が提携作品で求めているものはエロで、大島は「悦楽」「白昼の通り魔」「日本春歌考」と発表し、「無理心中日本の夏」は松竹の了解を得るのに苦労したらしいが、ここでも桜井啓子のエロ要素が売りになっている。本来ここで松竹との関係は終わっていてもおかしくなかったようだが、「帰って来たヨッパライ」が成立しているのは、フォークル側からの指名という要素が大きいようだ。松竹側は、前田陽一小林信彦が「進め!ジャガーズ 敵前上陸」脚本執筆中に非公式に参加を打診しており、これがフォークルの要請で引っくり返ったわけだ。
 松竹提携作品は、製作費の心配がないせいだろうか、暴走の具合が凄まじく、「悦楽」「白昼の通り魔」以外は、よく松竹系の全国の劇場でかけたものだとヒヤヒヤするような作品ばかりで、本作の『部分部分が突出して魅力的』というのは、奇跡的な傑作である「日本春歌考」にしても同様だが、常時失敗と紙一重な危うさに満ちた実験性に依存していることがわかる。
 それでも、東シナ海を渡り、釜山港に入港し、ベトナム戦に参加する様を不忍池や新宿淀橋浄水場跡地でやってしまうのは何と言っても魅力的だし、列車の車窓から絵でベトナム戦を見せるのも素晴らしい。
 この時期の緑魔子は当然ながら可愛いし、以前も書いたドキュメントパートの街頭インタビューで全員韓国人の件も素晴らしい。
 「絞死刑」の刑務官に続いて愚鈍な国家権力の象徴として、警官を演じる足立正生も良いし、例によって画面のそこかしこに存在する日の丸も良い。
 何度も見返したくなる作品だ。


42)「無理心中 日本の夏」(DVD) ☆☆★★

1967年 日本 創造社=ATG モノクロ スタンダード 98分  
監督/大島渚   脚本/田村孟 佐々木守 大島渚     出演/桜井啓子 佐藤慶 田村正和 戸浦六宏 殿山泰司 小松方正 観世栄夫 観世栄夫  
無理心中 日本の夏 [DVD]
 7年振りに再見したが、印象は変わらず。大島のワースト作ではないだろうか。観念性が昇華しきれていない不発作。同じ状況映画でも、同年の若松孝二の「犯され白衣」の方が遥かに表現としても昇華されている。
 まあ、倖田來未でリメイクしたら良いという説が一部にあるが、確かにこれだけ失敗作だとリメイクしがいがある気もするが、桜井啓子=倖田來未というのが合ってるんだかどうなんだか。
 それにしても、こんな失敗作を作る直前に「日本春歌考」を撮り、本作の後には「絞死刑」を撮るのだから(「絞死刑」にも桜井啓子は1カット出演)、当たり外れの激しさを物語る。
 せっかくDVDで買ったんだから、何回か観返したい。とりあえず、機関銃が「東京戰争戦後秘話」での後藤和夫が持つ機関銃との共通性を発見したのみ。