シネマヴェーラ渋谷 『妄執、異形の人々』 【9/2(土)〜9/29(金)】

 告知のスチールに「恐怖奇形人間」が出ていたので、シネマヴェーラのことだから、わかっている作品を並べてくるに違いないと思っていたが、今日、ラピュタでチラシが来ていたので一見して大いに喜ぶ。未だ、魅惑の名画座にもシネマヴェーラにもアップされていないので上映作品を書いておくと、

「獣人雪男」「九十九本目の生娘」「不知火検校」「黒い十人の女」「怪談蚊喰鳥」「マタンゴ」「くノ一忍法」「散歩する霊柩車」「黒蜥蜴(深作欣二版)」「吸血鬼ゴケミドロ」「セックスチェック 第二の性」「秘録おんな蔵」「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」「奇々怪々 俺は誰だ?」「盲獣」「おんな極悪帖」「怪猫トルコ風呂(ニュープリント)」「好色源平絵巻」「犬神の悪霊」「女獄門帖 引き裂かれた尼僧」「地獄(神代辰巳版)」「ゆきゆきて、神軍」「丹波哲郎大霊界2 死んだらおどろいた!」「無頼平野」「極道恐怖大劇場 牛頭」

 だそうで、上映期間中に高橋洋中原昌也トークショー等もあるとのこと。
 それにしてもこのラインナップに「ゆきゆきて、神軍」を入れ込む根性が凄い。確かに妄執のヒトではあるが‥一体何とカップリングさせるのか恐々日程を見ると「くノ一忍法」や「不知火検校」らしいので、安心したようなそうでもないような。
 ソフト化されている作品や上映の機会の割合多い作品も混在しているが、個人的に見逃せないのは、久々の上映となる「女獄門帖 引き裂かれた尼僧」や、これまで何度か上映の機会がありながら悉く逃してきた「犬神の悪霊」を今度こそ。又、一連のクレージーシリーズの亜流ながら相当な異色作と伝説に聞く「奇々怪々 俺は誰だ?」、浅草東宝亡き後はめったに観れない「獣人雪男」、東映系ではこれも長らく観たかった「怪猫トルコ風呂」と、深尾道典(「絞死刑」の原型脚本「ここではないどこかへ」や「愛のコリーダ」の最初の脚本執筆者、その後大島と訣別)が監督した「好色源平絵巻」が観れる。
 「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」は、7年ほど前に連続してガラガラのシネフェスタで静かに観たのと、満員のテアトルA&Tで例の箇所で場内が爆笑するのとで二回観ているが、割合よく上映しているということもあるが、例の箇所直前で“来た!!”という囁き声と共に爆笑になるのに付き合うのは一回きりで充分だと思ったので、劇場で観るのは気が進まないのだが、今回はどうだろうか。やたらと泣けるシーンでもあるので、最近はその視点で観返したいなと思っているが。
 小学生の頃に夢中になって観ていた「丹波哲郎大霊界2 死んだらおどろいた!」も、未見の方は是非。こうして並べると、いかに新東宝的かということが明確に出る作品だ。
 その他中島貞夫の様式美のみで見せきる傑作「くノ一忍法」や「黒い十人の女」、「散歩する霊柩車」も観返すべき秀作。
 俄かに期待した「追悼のざわめき」が入っていないのは残念だが、シネマヴェーラ渋谷はこの次には『候孝賢映画祭』を行うそうで、日本で上映可能な作品全てを上映するが、更に上映権の切れた作品は台湾と直接交渉しているとかで全作上映を目指すそうだ。山口百恵は入らなかったとか、一転今やってる小津は好調だとか聞くが、こんな良質な劇場が場末ではなく、渋谷のQ-AXビルでいつまでも凄い作品ばかり並べていてくれるわけがないので、何度も足を運ぶことで連帯を表明するしかない。