『D坂の殺人事件』

16)『D坂の殺人事件』(実相寺昭雄) 

D坂の殺人事件 [DVD]
 ネットで注文しておいた『D坂の殺人事件』がようやく届く。東映だから、4725円と高いのだ。25%OFFで購入して何とか買って良いでしょうという価格に。
 『屋根裏の散歩者』に続く実相寺昭雄の乱歩シリーズ第二弾。明智小五郎は前作に続いて嶋田久作
 『乱歩地獄』までは、 実相寺の乱歩にハズレなしと豪語できたが、正に本作も秀作で、映画においては監督の色が乱歩の原作以上に出ることで秀作になり得ていたこれまでの流れの中で、実相寺は乱歩との距離感が程好かったのが巧く作用したのかとも思う。
 DVDは画質は良好。しかし、『屋根裏の散歩者』のDVDと比較して最大の不満はオーディオコメンタリーが収録されていないことで、グズグズしているから実相寺昭雄は死んでしまった。元来東映のDVDは無愛想な作りのものが多いので仕方ない面もあるとは言え、『屋根裏の散歩者』の実相寺×一瀬Pの音声解説がとても良かったので、本作でも聞きたかった。
 ノートを観ると、この作品は1998年6月5日にテアトル梅田で観ている。因みに学校をサボって平日のテアトルへ行くと、同級生の「LALAMIE CINEMA REVIEW」のヒトが同じくサボって来ていて、観終わってからも興奮しつつ話しながら帰っていったが、興奮し過ぎたか、このヒト翌日知恵熱出して学校来なかったとか、妙にそんなことを覚えている。
 せっかくだから、ノートに書いてあった感想を引用しようとしたが、ペーパークラフトで再現した街並みが良いとか、小林少年を三輪ひとみが演じていて、明智少年愛を匂わせているのが凄く良いとか、そこら辺まではまだ良いとしても、その箇所への脚本の薩川昭雄が如何に渚カヲルを引用して展開させたかとか、共通性を延々書いていたりしたので、あー、エヴァの熱気覚めやらぬ頃ねえという思いを抱きはしても、そのまま書き写す気にはとてもなれず止める。ま、『屋根裏の散歩者』の凝縮された完成度には及ばないものの、乱歩よりも大江春泥への固執がややバランスを崩したとは言え、満足しつつ観終わっていたようだ。
 そういえば、吉行由実ってこの作品で初めて存在を知った。今から考えると映画出演は未だ数本しか出ていない頃だったのか。翌年から監督やったりと手広く活動を始めたが、確かにこの時期の本作への抜擢は凄い。観ていて、こういう女優が今でも居るんだなと思って感心していた。『シルバー假面』に吉行由実が出てきた時も嬉しかった。