『シナリオ 1976.08』『シナリオ 1978.02』

27)『シナリオ 1976.08』 (シナリオ作家協会)  
28)『シナリオ 1978.02』 (シナリオ作家協会)  

 27)『性処女・ひと夏の経験』(中島丈博)、『犯される』(佐治乾)、『色情海女』(大工原正泰)。
 28)『ワニと鸚鵄とおっとせい』(山元清多)、『肉体の門』(田中陽造)。
 共に100円。
 27)は、ロマンポルノ特集号で、始まってから五年を経ての変化や問題が各監督、ライターから語られる。インタビューも田中登神代辰巳曽根中生、加藤彰、小沼勝藤田敏八、蔵原惟ニ、山本晋也と豪華。
 
 ロマンポルノとは離れるが、この時期は丁度角川春樹が映画製作を発表した時期となるようで、角川映画のラインナップが書かれている。『犬神家の一族』『いつかぎらぎらする日』『オイディプスの刃』とあるが、これは既によく知られているように、『犬神家の一族』以外は後年形を変えて実現しているものの、この段階ではポシャったものだ。
 
 『いつかぎらぎらする日』は、1973年に東映が監督・深作欣二、脚本・笠原和夫で進めていた『実録・共産党』が中止になった後に角川で引き継がれたもので、タイトルは河野典生の『いつかぎらぎらする日々』からタイトルだけ貰ってきたという形になっている。しかし、角川側のニューシネマみたいなものにしたいという要望と笠原和夫で合うわけもなく、結局製作中止となっている。それはよく知られたことなので良いのだが、この記事中で気になるのは主演が川谷拓三であると書かれていることと、河野典生が<「映画の発表前に題名を借りたいとの連絡があったが、私ははっきりと断った」>というコメントを寄せていることで、角川春樹の強引さが既にこの段階から浮き彫りになっている。それから15年以上過ぎてから松竹で深作と丸山昇一が組んだアクション映画のタイトルが『いつかギラギラする日』なのは、プロデューサーの奥山和由がこのタイトルを気に入っていた為に、前年『幕末純情伝』『ぼくらの七日間戦争2』で初めて組んだ角川春樹に直談判してタイトルだけ貰ってきたもので、監督は同じ深作であっても、『実録・共産党』とは一切関係ない。
 
 『オイディプスの刃』は、監督が当初三隅研次でATGの企画としてスタートし、途中で角川に吸収され、結局村川透が監督となり、松田優作主演でATG系公開作品になる予定だったようだ。実際フランスロケも行ったらしいが、途中で撮影中止となり、10年後に成島東一郎の監督で実現している。