俳優・船越英二死去

molmot2007-03-19

http://www.asahi.com/culture/movie/TKY200703190208.html

 17日、脳梗塞のため静岡県の病院で死去。84歳。


 50年代、60年代の大映を支えた名優だけに代表作も多く、好きな作品も多いので残念だ。
 最も古い出演作で観ているのは『毒蛇島綺談 女王蜂』だろうか。
 個人的には、どうしても市川崑と組んだ諸作が印象深く、市川崑の黄金期を語る上で欠かせない。
 『日本橋』から始まって、『満員電車』『穴』『あなたと私の合言葉 さよなら、今日は』『野火』『女経 第二話 物を高く売りつける女』『ぼんち』『黒い十人の女』『雪之丞変化』『破戒』『私は二歳』『ど根性物語 銭の踊り』といった作品での船越英二は、市川崑モダニズムを体現する絶妙の俳優で、その凄さが10年前の『黒い十人の女』のリヴァイヴァルで広く再認識されたのは嬉しかった。
 市川崑と組んでその魅力を発したなら、当然増村保造と組んだ作品でもより素晴らしく、各作品への思いを馳せると、船越英二の演技者としての幅の広さが伺える。
 子供の頃に夏休みにテレビ放送された『大怪獣ガメラ』での博士役(志村喬ポジション)が、映画では初めて観たのかとか思い出す。
 大映倒産後はテレビに転じたので、映画出演は数えるほどで、個人的には市川崑ともう一度組んで欲しいという思いがずっとあり、『どら平太』や『黒い十人の女』のリメイク時辺りなら、行けるんじゃないかと踏んで密かに期待していたが。
 それでも8年ほど前だったかNHKで放送された『映像美の巨匠 市川崑』でこれまでの出演者にインタビューしていたが、船越英二も懐かしそうに市川崑との充実した仕事ぶりを語っていた。
 何せ、『野火』で二週間近く絶食に近い状態に自分を追い込んで撮影に入り、インしてファーストカットを撮り終わった途端に屈みこんで動けなくなってしまい即入院、撮影が半月程延びてしまったというエピソードがあるが、撮影所時代ならではの大らかなノンビリした感と、船越英二の生真面目さを物語る出来事だと思う。