『若松孝二 反権力の肖像』『赤い春―私はパレスチナ・コマンドだった』

)『若松孝二 反権力の肖像』(平沢剛・四方田犬彦 編)  作品社
)『赤い春―私はパレスチナ・コマンドだった』(和光晴生) 集英社インターナショナル 

若松孝二 反権力の肖像

若松孝二 反権力の肖像

赤い春 私はパレスチナ・コマンドだった

赤い春 私はパレスチナ・コマンドだった

 『若松孝二 反権力の肖像』は、下記の内容を見れば分かるが、

序 若松孝二を導入する(四方田犬彦
監禁と逃走(四方田犬彦
仕掛けられたスキャンダル――「国辱映画」『壁の中の秘事』について(ローランド・ドメーニグ)
若松映画がベルリン映画祭のコンペを飾る意味(渋谷哲也
子宮への回帰――六〇年代中期若松プロ作品における政治と性(シャロン・ハヤシ、山本直樹訳)
括弧つきの反復――若松映画のアクチュアリティ(古畑百合子)
劣情有理――『理由なき暴行』について(平井玄)
ラディカリズムの継続――一九七〇年代以降における若松孝二論(平沢剛)
若松孝二インタビュー(聞き手 四方田犬彦・平沢剛)
沖島勲インタビュー(聞き手 平沢剛)
若松孝二フィルモグラフィー
後書き(四方田犬彦

昨年6月25日に明治学院大学白金校舎2号館2301教室で行われた『明治学院大学文学部芸術学科主催 第11回日本映画シンポジウム「若松孝二」』を再構成したものである。
 こういった本が出るのは全く知らなかったので、書店で喜び即購入した。シンポジウムだけでは時間が足りなかった個所への言及もされているようで、内容には期待している。読み始めて直ぐの段階で誤植が目立つが、それはまあ…。
 個人的には、ジェンダー方面は、聴くよりも読む方がゆっくり考えることができるし、ローランド・ドメーニグの『壁の中の秘事』をめぐる考察は、DVDのブックレットでしか読めなかったので、これで広く読まれると良い。
 『実録・連合赤軍』公開を前に本格的な若松映画論がこういった形で出版されるのは喜ばしい。
 
 『赤い春―私はパレスチナ・コマンドだった』は、元日本赤軍兵士・和光晴生の初の著書。
 別に日本赤軍を支持しているわけでも何でもないが、足立正生と共に和光晴生に興味があるのは、元若松プロ所属の助監督だからに他ならない。ATGの直営館・新宿文化でのアルバイトを皮切りに若松プロに入り、『天使の恍惚』で助監督を務めている他、若松作品の地方上映を受け持ち、東北で赤字を出した際には自主的に頭を丸めて若松の前に現れ謝罪したとか、『天使の恍惚』で脚本を変えて四季協会とか春夏秋冬の命名を和光が行ったと言われている(個人的にはあの命名センスは好きではなく、リアリティを欠けさせていると思うが)。
 ただ、僅かな助監督期間しかない為、映画人としての評価は無く、映画に携わった和光については、若松孝二足立正生の著書での言及や、葛井欣士郎が足立帰還後に新宿文化で彼がアルバイトをしていたことを告白した程度でしか知られていないので、本書でその辺りが自身によってどの程度語られるかが興味深いところ。