2008年3月

泪壺』(☆☆☆)、『夏に生まれる』(☆☆☆★★★)、『地獄便り』(☆☆★★)、『集団自殺刑事』(☆☆☆)、『川口で生きろよ!』(☆☆☆★★★)、『つまらないあたしのどうでもいい物語』(☆☆☆★)、『笑い虫』(☆☆)、『微風(かすかぜ)』(☆☆★★)、『ヒロ子とヒロシ』(☆☆★★★)、『再会迷宮』(☆☆☆)、『牡牛座』(☆☆☆★★)、『拝啓・扇千景様』()、『俺の流刑地(略称・俺ルケ)』()、『フジカシングルデート』()、『肉体の門』(☆☆☆★)、『ミスター・ロンリー』(☆☆☆)、『母べえ』(☆☆☆★)、『弥次喜夛道中記』(☆☆☆★★★)、『実験4号』(☆☆★★)、『日本暴行暗黒史 怨獣』(☆☆☆)、『裏切りの季節』(☆☆☆★★★)、『秘花』(☆☆★★)、『ゆけゆけ二度目の処女』()、『性廻転』()、『赤軍 PFLP 世界戦争宣言』()、『天使の恍惚』(☆☆☆)、『鉛の墓標』(☆☆☆★★★)、『続日本暴行暗黒史 暴虐魔』(☆☆☆★★)、『どこに行くの?』(☆☆☆★★)、『マイ・ブルーベリー・ナイツ』(☆☆☆★)

3月1日(土)

 神保町で古本、大島渚わが日本精神改造計画』、『シナリオ 1970年12月号』『シナリオ 1975年9月号』『リトルモア VOL.3 WINTER』を購入。

 『わが日本精神改造計画』1050円。1972年出版。この時期の大島の書は時代も相まって面白いものが多いが、古書価格としてはそれなりにするものが多いので、本書も割合高くなかなか買う気になれなかっただけに千円で買えて幸い。書き下ろしだが、吉田喜重とのヨーロッパの宿で過ごした数十日の記など実に面白い。ひたすら岡田夫人への手紙を書いてるだけという…。
 『シナリオ 1970年12月号』、<特集:人、われをエロダクションと呼ぶ!!>。「ピンク映画八年史」(ピンク映画が始まって八年しか経っていなかったのだ!)やら、座談会があり、木俣堯僑、佐々木元、梅沢薫、下飯坂菊馬が出席している。掲載シナリオはピンクだけに多く(括弧内脚本執筆者)、渡辺護監督作『16歳の体験』(太田康)、木俣堯僑監督作『魔女狩り』(木俣堯僑)、梅沢薫監督作『拳銃の詩 S・W32口径』(日野洸)→(劇場公開題『濡れ牡丹・五悪人暴行編』日野洸は大和屋竺の変名)、新藤孝衛監督作『にっぽんエロチカ』(央辺理)、それから未映画化脚本『可愛い女』(下飯坂菊馬)の五本。それにしても1970年の作品だと言うのに、『濡れ牡丹・五悪人暴行編』を除いては、聞いたこと観たこともない作品が並んでいることに、ピンク映画の刹那性を感じる。恐らくフィルムの所在も不明な作品や、残っているかどうかすら不確かな作品もこの中だけでもかなりあると思う。
 『シナリオ 1975年9月号』は、『黒薔薇昇天』(神代辰巳)、『トラック野郎 御意見無用』(鈴木則文澤井信一郎)、『暴力金脈』(野上龍雄笠原和夫)掲載。
 『リトルモア VOL.3 WINTER』は、1998年1月発行。発売時に立ち読みを何度かしていたので買っていなかったが、安かったので気が向いて十年後に今更ながら購入したが、日本映画特集で面白い。特に、若松孝二宮崎学の対談が良い。題して『突破ゲバゲバ』。この時が丁度、イメージフォーラムが企画して、東京ではBOX東中野、大阪ではシネ・ヌーヴォ梅田で行われた若松孝二の特集上映『KOJI WAKAMATSU 1965-1972』が始まった時だった。自分が若松作品を観始めたのはこの時から。


 有楽町へ移動し、『ヒトラーの贋札』を観ようとすれば20分前で既に空席なし。映画の日で土曜日と言えども、流石にアカデミー外国語映画賞が効いているらしい。直ちに銀座シネパトスへ向かい瀬々敬久泪壺』(☆☆☆)を観る。
 瀬々版『嫌われ松子の一生』と言うべき作品か。ある意味、徹底した反時代性によって成立している。葬式の後で春歌を歌うシーンに『日本春歌考』を思う。

 八重洲ブックセンターへ以前から半額で放置されていた実想寺昭雄BOXを購入するべく向かったところ、何とDVDコーナーを閉鎖するとかで全品半額セールになっていた。既に大分荒らされた後らしかったが、それでもまだまだあり、迷いに迷った末、『悪魔のいけにえ2(完全版)』『フープ・ドリームス』『スパイダーマン』『パラダイス・ナウ』『夏目漱石のこころ』『あなたと私の合言葉 さようなら、今日は』『八つ墓村 上巻』『八つ墓村 下巻』『白日夢』『華麗なる追跡』の10本を購入。総計二万円也。

 『悪魔のいけにえ2(完全版)』は、千円の以前から出ていた廉価版かこっちかを迷っていたが、3980円では買いたくなかったので半額で幸い。
 『フープ・ドリームス』は、『スティーヴィー』公開時のオールナイトで初めて観て傑作ぶりに驚いた。
 『スパイダーマン』は、毎度このシリーズのDVDは千円台で購入してきたので、今回も値崩れを待っていたが、半額で購入できた。
 『パラダイス・ナウ』は、昨年観て秀作だと思った。『幽閉者 テロリスト』や若松作品と並べて観るべき作品。
 『夏目漱石のこころ』と『あなたと私の合言葉 さようなら、今日は』は市川崑監督作。
亡くなったことだし、未購入DVDを一気に購入したいと思いつつも大映角川映画)や東宝だから五千円近くするのでそう一気に動くこともできなかっただけに幸い。これで残りは『炎上』『ぼんち』『野火』『破戒』『雪之丞変化』『古都』『竹取物語』『四十七人の刺客』『ユメ十夜』の9作。
 『八つ墓村 上巻』『八つ墓村 下巻』は、古谷一行毎日放送制作版の「横溝正史シリーズII」で放送されたもの。監督は池広一夫。かつてジュエルサイズで発売されていたが、廃盤となり中途半端にシリーズを集めていた身には中古で安価なものを求めていたが、半額だしジュエルサイズで統一して集めるほどのマニアでもないので観れれば良いからとトールサイズで購入。
これで、このシリーズの未購入作品は、『悪魔が来りて笛を吹く』『不死蝶』『仮面舞踏会』『夜歩く』『仮面劇場』の5本。『悪魔が来りて笛を吹く』以外は欲しくない作品ばかりで悩みどころではある。
 『白日夢』は、お馴染み武智鉄二監督作。コチラは1964年のオリジナル版。一応イメージフォーラムの特集に通って一通り観た身からすれば、武智鉄二のDVDに手を出す気は全く起こらないが、資料として持っておく分には、『日本の夜女・女・女物語』『黒い雪』『紅閨夢』『浮世絵残酷物語』『戦後残酷物語』ぐらいなら買っておいても良いかなあ、と。作品として一番面白いのは、意外と『戦後残酷物語』だったりしたのだが。
 『華麗なる追跡』は、御存知・鈴木則文御大の傑作。既発売の『ドカベン』『エロ将軍と二十一人の愛妾』『堕靡泥の星 美少女狩り』、5月に発売になる『現代ポルノ伝 先天性淫婦』『徳川セックス禁止令 色情大名』も買わねばならない。
 というところで、散財して八重洲ブックセンターを後にする。二万一気に遣っただけに中二階の喫茶店のタダ券貰う。

フープ・ドリームス [DVD]

フープ・ドリームス [DVD]

パラダイス・ナウ [DVD]

パラダイス・ナウ [DVD]

夏目漱石のこころ(新潮文庫連動DVD)

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八つ墓村 上巻 [DVD]

八つ墓村 上巻 [DVD]

八つ墓村 下巻 [DVD]

八つ墓村 下巻 [DVD]

白日夢(64年) [DVD]

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華麗なる追跡 [DVD]

華麗なる追跡 [DVD]

 
 

3月2日(日)

 イメージフォーラムシネマテークで「告白というエンターテインメント 村上賢治映像展」へ行く。観たのは2プログラムで、『夏に生まれる』(☆☆☆★★★)、『地獄便り』(☆☆★★)、『集団自殺刑事』(☆☆☆)、『川口で生きろよ!』(☆☆☆★★★)。
 
 長らく見逃していた『夏に生まれる』を遂に観たが、凄い傑作で感動に打ち震える。90年代日本映画を代表する作品だ。公開時に観ることが出来ていればもっと感銘を受けたに違いない。1997年〜98年が映画にとって起点となっているという思いが強いのは、単に自分が映像を学び始めた年だからという個人的理由だけではなく、デジタルビデオカメラとノンリニア編集が普及し始めた年として忘れ難いからだ。あれは革命的な変革で、テレビでのオンエアも可能なプロユースの画質と編集技術が間近に来たことで、映像を作るという行為そのものの意味が変わった年だったと思う。それに意識的だった作品が『ラブ&ポップ』と『夏に生まれる』だろう。
正直なところ、現在から観れば、ノンリニア編集の何でも出来る嬉しさで不要なエフェクトが過剰に乗せられている箇所もあるが、それ以前の村上賢治の個人映画がノンリニア編集でより自由になり融合を果たしたことで傑作になったのだと思う。
 個人映画から逸脱していく過程がスリリングで、トイレに貼られた相田みつおの言葉の反復が伏線となっているところや、廃墟といった映画的背景が登場する後半は、作品からどんどん映画が立ち上がっていくのに興奮した。



 合間に青山ブックセンターで買い逃していた『砂の影』パンフレットを700円で購入。丸尾末広の『パノラマ島奇談』が出ていたのでこちらも購入。
シナリオ

 下北沢で友人と食事。合間に「びびび」で古本『黒澤明集成』を700円で購入。ココは最近よく売れているせいか前に来た時にあったのを今度買うというのがどんどん困難になっていく。

パノラマ島綺譚 (BEAM COMIX)

パノラマ島綺譚 (BEAM COMIX)

黒沢明集成

黒沢明集成

 ポレポレ東中野で「R18 LOVE CINEMA SHOWCASE VOL.4」。

 佐藤吏つまらないあたしのどうでもいい物語』[成人館公開題:奴隷](☆☆☆★)と、堀禎一笑い虫』[成人館公開題:色情団地妻 ダブル失神](☆☆)を観る。


3月4日(火)

 ポレポレ東中野へ「R18 LOVE CINEMA SHOWCASE VOL.4」を観に行く。
 『つまらないあたしのどうでもいい物語』は既に2回観ていたので、佐藤吏の『微風(かすかぜ)』(成人館公開題: 誘惑 あたしを食べて)のみ鑑賞。
 

 『微風(かすかぜ)』(☆☆★★)
 今回唯一の初見となる作品だが、評判が良かったので見逃したのを後悔していただけに、ここで取り上げられて幸いだった。
 吉沢明歩が可愛く撮れていて、的確な画がちゃんと来ているというだけで満足していたら、作り手に失礼だろうかとは思うものの、それが出来ていない作品の何と多いことか。
 拳銃の扱いが作品の中の比重としてどうだろうかと思ったり、トレンディドラマの如き小奇麗な作りに思う部分が無いことは無いにしても、タイトル通り、画面に微風が漂っている浮遊感溢れる作りには捨てがたい魅力がある。


3月5日(水)

 八重洲ブックセンターのDVD半額セールへ再び出向く。『アレクサンドル・ソクーロフ DVD-BOX2』『エレメント・オブ・クライム』『ボクサー』を購入。
 『アレクサンドル・ソクーロフ DVD-BOX2』には『ボヴァリー夫人』『マザー、サン』『モレク神 ―ヒトラーの日々―』が収録。『マザー、サン』以外は未見なので7500円なら安い。
 『エレメント・オブ・クライム』は、言わずと知れたラース・フォン・トリアー監督作。押井守が『AVALON』製作時に本作の色を参考にしたのは有名。ちなみにセピア系の色を乗せることでCGと実写の情報量の差異を埋めることが出来ると進言したのは樋口真嗣。『AVALON』以前に製作進行中で後に凍結となった『G.R.M』が同じ方法論で製作される予定だったようだ。公開されていたイメージボードからも伺える。『G.R.M』凍結後、少ない予算で(と言っても5億円ほど計上されていたようだが)早急に立ち上げられる代替企画として実写版『機動警察パトレイバー』などと共に企画されたのが『AVALON』だったわけだが、現場では実写パトレイバーになるだろうという予想が押井守も含めて思い込んでいたようだが、上からゴーが出たのが意外や『AVALON』だったという。『エレメント・オブ・クライム』から相当話が反れたが、1500円で購入。
 『ボクサー』は寺山修司監督作。この歳になると、テラヤマ、テラヤマと言うのも何だと思うが、普遍的に良いものだし、丁度ジェネオンから再発売が始まったATGのDVDで『田園に死す』以外を買い逃したままだったので、『書を捨てよ町に出よう』『さらば箱舟』を今度こそと注文したばかりということもあり購入。2250円。


 ポレポレ東中野へ「R18 LOVE CINEMA SHOWCASE VOL.4」を観に行く。
 本日は、上映前に松江哲明監督と直井さんのトークがあり、的確にこれから上映される2作の見るべき姿勢を教授していて、そのせいか上映中も実に良いリアクションがあった。
 上映作は加藤義一の『ヒロ子とヒロシ』(成人館公開題:痴漢電車 びんかん指先案内人)と、竹洞哲也の『再会迷宮』(成人館公開題:不倫同窓会 しざかり熟女)。

 
 『ヒロ子とヒロシ』(☆☆★★★)
 PGベストワン作。公開時に上野オークラでも観ているが再見。
 印象は特に変わらず。正直なところ、あまりに評価が高いので首を傾げているのは、自分がピンク映画を、ピンク映画らしいピンク映画を良しとせず、国映・新東宝系の、所謂映画として一般映画に近いものを好むせいだろうか、などと考えたりもしたが、では今の国映の映画がかつてほど面白いのかと問われれば、それも返答に窮する。今、面白いピンク映画はこれだ、と言われれば、そういうものなのか、と思うしかない。
 初見時と同じく、モノローグの多用が気になる。余りにも心情をモノローグで説明し過ぎなので画面が活きてこない。勿論、単純にシナリオ手法的なナレーションやモノローグの多用は宜しくないといった話ではなく、むしろ使うならこれぐらい長い方が活きてくるとは思うものの、荒川美姫の演技力の問題もあって、棒読みモノローグで全編を引っ張るのは厳しい。なかみつせいじの過剰演技が苦手なので危惧していたら、今回は随分抑え込んでいたので安心したものの、妻を説明するのに「ホウレンソウのおひたしを作るのが云々」といった紋切表現が気になった。
 とは言え、奇をてらわないオーソドックスな作りが心地良いのは、再見となった今回でも改めて感じた。痴漢電車ものという枠を守りつつ、男と女の出会いを痴漢を通じて設定し、すれ違いを巧みに入れ込み、夫々の人生を映しこみつつ爽やかなラストを迎えるまでを見せ切る加藤義一の熟練の演出は評価されるべきものだし、製作本数の低下、大宮オークラの閉館など、ピンク映画をめぐる状況は厳しいようだが、現在のピンク映画の中心を担う存在として加藤義一の作品を気付かせられた。

 
 『再会迷宮』(☆☆☆★)
 こちらも成人館で観ていたが再見。既に観ているピンク映画をポレポレ東中野で何故また観るかと言えば、単純に居心地が良いからで、平日の夜に、環境も映写も音響も良い劇場でピンク映画を二本観てから帰って寝るなんてのは最高じゃないかと思う。又、普段映画を観ていて、体調、環境には極力左右されないでいたいと思っているので、少々体調が思わしくなかろうが、映画を観る目は衰えないという自負があったし、少々鑑賞環境が悪かろうが映画の評価を揺るがさないと思っていた。ところが成人館で観る映画に関しては、違うようだ。ポレポレ東中野で再見したら遙かに面白かったという作品が何本かある。確かに新宿国際のような音響の不十分な劇場で観ると台詞を聞き逃したり、他の劇場でも匂いやらガサガサと不穏な動きをされて気が散ったとか、横に座ってたおっさんがチンコ出してるよ!という状況に画面への集中力を削がれたことも何度かある。
 しかし、本作に関しては特に鑑賞環境に問題があったわけではなく、単純に自分に観る目が無かったようで、再見となった今回の方が遙かに面白く、自身の不明を恥じた。
 これまで自分が観てきた竹洞哲也の作品の中では最も良い。初見時に煩く感じた室内シーンも今回は違和感なく観ることができた。ロケになると途端に魅力を増す竹洞作品だが、今回も、田舎道のコンビニ、畦道が実に良い味わいを出している。前回も心地よかったラストの横移動に感動を新たにした。
 それにしても、松浦祐也の暴走が極まっていて良い。成人館で観ると憮然とした観客が居たりするが(肝心のカラミで完全に画面をかっさらっていくのだから成人館ではそうなるだろう)、一般館だと必ずしもカラミのシーンをしっかり観なければ観客が納得しないというわけではないので、又、前説の甲斐もあって、松浦祐也の怪演を受け入れ、楽しむ雰囲気が劇場に漂っていた。以前から言っているピラニア軍団の末裔=松浦祐也による現代のピラニア演技を観る度に、やはり深作健太は、山本太郎と松浦祐也を、室田日出男と川谷拓三に振り当てて、『資金源強奪』をリメイクすべくではないか。



 といわけで、自分の「R18 LOVE CINEMA SHOWCASE VOL.4」参りはこれで終わり。無事全ラインナップを観ることが出来た。1本を除き再見だったにも関わらず、新鮮な気分で各作品に接することができた。
 しかし、これでまたしばらくピンク映画特集とはお別れではなく、来月にはもう「R18 LOVE CINEMA SHOWCASE VOL.5」が控えている。これも全部通いたい。

 帰り際、松江監督に噂の例の新作について尋ねると、相当凄い企みのようで期待が高まる。今年はガンダーラ用新作、林由美香ドキュメント、噂の新作と松江作品がより大きな規模で花開くことになりそうだ。

ボクサー [DVD]

ボクサー [DVD]

3月6日(木)

 ユーロスペースで、アレクサンドル・ソクーロフ牡牛座 レーニンの肖像』(☆☆☆★★)を観る。
 パンフレット購入。

 ロゴスで単行本、小西康陽ぼくは散歩と雑学が好きだった。 小西康陽のコラム1993-2008』と、雑誌『キネマ旬報』『エクス・ポ』『CGワールド』『ダ・ヴィンチ』購入。
 『ぼくは散歩と雑学が好きだった。 小西康陽のコラム1993-2008』を渋谷ロゴスで購入するなんて、あんまりにもわかりやす過ぎるとは思いつつも、前作『』はロゴスに積んであったなんて話を高校生の頃、片田舎で聞いていたのを思い出して、たまたまロゴスで買ったと思っていたが、案外そんなことが無意識の内にあったのかもしれないなどと思う。とは言え、小西康陽に教えてもらった映画というのは結構あるわけで、何せコノヒトが居なければ『黒い十人の女』が再び陽の目を見ることは無かったわけで、市川崑主義者としては頭が上がらない。本書の中にリメイク版『犬神家の一族』にさらりと触れた箇所があり、なるほどなと思う。

ぼくは散歩と雑学が好きだった。 小西康陽のコラム1993-2008

ぼくは散歩と雑学が好きだった。 小西康陽のコラム1993-2008

キネマ旬報 2008年 3/15号 [雑誌]

キネマ旬報 2008年 3/15号 [雑誌]

ダヴィンチ 2008/04月号

ダヴィンチ 2008/04月号

3月8日(金)

 下北沢の古本屋で『ユリイカ オタクvsサブカル』 『シャボン玉ホリデー―スターダストを、もう一度』を、青山ブックセンター本店で『若松プロ、夜の三銃士』『VOU Vol.01』を購入。

シャボン玉ホリデー―スターダストを、もう一度

シャボン玉ホリデー―スターダストを、もう一度

若松プロ、夜の三銃士

若松プロ、夜の三銃士

 イメージフォーラムシネマテークで、村上賢司拝啓・扇千景』『俺の流刑地(略称・俺ルケ)』『フジカシングルデート』を観る。
 地元のレンタル店で中古ビデオ『青空にいちばん近い場所』『我が人生最悪の時』『ウルトラマンティガ』『ウルトラマンガイア』『ウルトラマンガイア』を購入。全て100円。

青空に一番近い場所 [VHS]

青空に一番近い場所 [VHS]

我が人生最悪の時 ― 私立探偵 濱マイク シリーズ 第一弾 [DVD]

我が人生最悪の時 ― 私立探偵 濱マイク シリーズ 第一弾 [DVD]



3月9日(土)

 資料用のDVDを終日観て過ごす。

3月12(水)

 フィルムセンターで、マキノ正博肉体の門』(☆☆☆★)を観る。


 帰りにまた八重洲ブックセンターの半額DVDに引っかかってしまい、結局『不死蝶』『やわらかい生活』『気球クラブ、その後』を購入。
 『不死蝶』は、古谷一行の「横溝正史シリーズII」で放送されたものだが、前回の『八つ墓村』同様トールサイズでの購入。これでこのシリーズは、『悪魔が来りて笛を吹く』『仮面舞踏会』『夜歩く』『仮面劇場』の4本を買えばコンプなので頑張ろう。
 『やわらかい生活』は荒井晴彦脚本作。どうもこの作品が映芸ベストワンになったのが手前味噌過ぎて嫌だとか不快感を表明する人が多いが、秀作なのだから上位に入るのは当然だし、そういうことを言う人は、『身も心も』が映芸でどういう扱いだったか知らないのだろうか。荒井晴彦が映芸を取り仕切るようになって以降の荒井作品とが映芸のベストをよく比較してから言ってはどうか。
 『気球クラブ、その後』は、園子温のDVDはレンタルでしか良いとしていた自分にして初のセル購入。普遍的青春映画の作りとして絶賛する方々ほどの感銘を受けたわけではないが、引っ掛かりまくる作品ではあったので。しかし、DVD版がダイレクトのビデオ映像なのは興がそがれる。劇場で観たときのフィルムレコーディングが良い感じだったので、映像が生っぽすぎて。

 そう言えば、八重洲ブックセンターで以前貰った喫茶店のタダ券を使ってみる。高校の頃は、本代にバカバカ使っていたので、三宮サンパルにあったジュンク堂で2、3万一気に遣うと店内の喫茶店のタダ券を貰っていたが、最近はそんな買い方を滅多にしないので、久々の感があったが、八重洲ブックセンターでは初めて。コーヒーをタダで飲めるだけかと思っていたら、ランチセットも使えるというので、軽くサンドウィッチを食べようかと頼んでみると、やたらに量が多い。一昔前の喫茶店の量だ。食事していたので食べきれず。

金田一耕助TVシリーズ 不死蝶 [DVD]

金田一耕助TVシリーズ 不死蝶 [DVD]

気球クラブ、その後 [DVD]

気球クラブ、その後 [DVD]

3月13日(木)

 『ユリイカ 2008年3月臨時増刊号 総特集=ジャン・ルノワール中原昌也映画の頭脳破壊』購入。

映画の頭脳破壊

映画の頭脳破壊

3月14日(金)

 中野ブロードウェイへ。まんだらけで古本『ゾンビ映画大事典』を1800円で、『寺山修司シナリオ集』を600円で、『映画評論 1966.7』を300円で購入。
 タコシェで古本『神保町「書肆アクセス」半畳日記』を400円で購入。

ゾンビ映画大事典 (映画秘宝COLLECTION)

ゾンビ映画大事典 (映画秘宝COLLECTION)

神保町「書肆アクセス」半畳日記

神保町「書肆アクセス」半畳日記

 渋谷へ移動してシネマライズハーモニ・コリンの『ミスター・ロンリー』(☆☆☆)を最終日最終回に観る。
 世代的にはモロ、ハーモニ・コリンで、リアルタイムで全部立ち会っているものの、同世代で熱狂的な人ほどの興味もなく、とはいえ廉価版でDVDなどは揃えているので新作を観る前に観返そうとしていて結局果たせないままに観ることに。部分部分で映画が立ち上ってくる来る瞬間を感じるも全体としては凡庸に感じる。
 パンフレット購入。

 その後、一緒に観た人と渋谷で朝まで飲む。

3月15日(土)

 新宿TSUTAYAで準新作・旧作が半額なので若松孝二の『日本暴行暗黒史 復讐鬼』、田尻祐司の『』『』を借りる。
 来月中旬にリニューアルするとかで、一部レイアウトが変わる。アダルトが8階に行くとか。邦画は特撮・アニメフロアと入れ替わるらしい。アニメが増えてるからだろうが、邦画がかなり狭くなるのではないか。ある時期は日本映画のレンタルビデオのアーカイヴとして名高かった新宿TSUTAYAだが、どうなるか。地元に居た頃は東京まで出る用事があると、新宿TSUTAYAに寄ったものだ。当時は各店別だった会員証もないのに見物に行くという。60年代の新宿・紀伊國屋みたいなものか。
 HMVで『血のエクソシズム ドラキュラの復活』と『ザ・フォッグ』を購入。

ザ・フォッグ (ユニバーサル・ザ・ベスト2008年第1弾) [DVD]

ザ・フォッグ (ユニバーサル・ザ・ベスト2008年第1弾) [DVD]

 新文芸坐に寄り、本日夕方から発売が始まった『第20回ピンク大賞授賞式』のチケットを購入する。2300円で整理番号は15番。毎年これくらいの番号だ。それにしても、今年は上映本数が実に5本!オールナイトが段々辛い歳になってきたが、ピンク映画は1本約1時間なので観易いから飽きない。

3月16日(日)

 東劇で、山田洋次の『母べえ』(☆☆☆★)を観る。今日は『櫻の園』のオーディションをしているようだ。

 『母べえ』には、『Always 三丁目の夕日』を映画と称されては困るのだという山田洋次の意志を感じる。そういう意味では正しく映画であり、賛否を問うにしてもこれぐらいの質を保っていてくれなければ議論しても面白くない。
 吉永小百合が洗濯物を降ろすバストショットから始まるこの作品は、洗濯物を奥へと持って行く芝居と共に、こういった何でもない光景をきちんと映画として成立させている作品が極めて少なくなったことを思いながら心地よく観ていた。浅野忠信も、きちんと演出すればこれだけ声の通った芝居をさせられるのだと感嘆させるし、吉永小百合も近年の作品ではベスト級の演技だろう。この方は放っておくとサユリ演技しかしないので、吉永小百合だって監督がちゃんとしていれば、まだまだ映えるのだと感じる。
 しかし、かつてあれほど喜劇演出に才を見せた山田洋次が、時代劇を撮っている間にその呼吸を忘れたのか、笑いが弾まないのが不満だった。浅野がひっくり返るシーンでも、フルショットとバストの切り返しがどうにもリズムが悪く、ひっくり返るところで笑いがうまく弾んでくれない。それは、明らかにハナ肇藤山寛美の流れを汲む存在として描かれる笑福亭鶴瓶に関しても言えることで、何をしている人かも分らないが、酔っている時にでも小百合一家を腹をかかえて笑わせるようなシーンが必要だったのではないか。ただの無神経な人という描写に終始しているので、別れのシーンがここでも弾まない。唯一、鶴瓶が汽車が発車しつつある時に娘に謝られて、窓から身を乗り出して「そんなもん、かめへん、かめへん」という所で一瞬、この人物の素の部分が浮き上がったように感じたが、それは演出というよりも鶴瓶の持っているものだろう。
 すき焼でこぼした卵を口で吸うディテイル描写とか、自転車で医者の大滝秀治を連れてくる際の絶妙の省略の見事さなど、若手監督はとくと観ておくべき優れた描写は幾つもあるが、バリバリの左翼としての山田洋次がここまではっきりと自身の思想性を出してきたのは珍しいと思いつつも、それを上手くくるんで映画に昇華している作品の方を好むが、何故ここまで自身を晒したのか、それが年齢から来るものなのか、時代の流れに黙っていることができなくなったのかという点に興味を持った。


 フィルムセンターでマキノ正博の『弥次喜夛道中記』(☆☆☆★★★)を観る。

 某女にあげる必要があってHMVでDVD『由美香』を買う。ポイントも使って2500円で浮く。

由美香 コレクターズ・エディション [DVD]

由美香 コレクターズ・エディション [DVD]

 八重洲ブックセンターで文庫・森達也世界が完全に思考停止する前に』、新書『昭和天皇』『吾輩は天皇なり―熊沢天皇事件』を購入。
世界が完全に思考停止する前に (角川文庫)

世界が完全に思考停止する前に (角川文庫)

昭和天皇 (岩波新書)

昭和天皇 (岩波新書)

吾輩は天皇なり―熊沢天皇事件 (学研新書)

吾輩は天皇なり―熊沢天皇事件 (学研新書)

 『映画の頭脳破壊』読了。

映画の頭脳破壊

映画の頭脳破壊

3月17(月)

 資料探しに、模索舎へ。『PG NO.70』『PG NO.74』『PG NO.88』を購入。計1500円。隣に立っていたオッサンも『PG』のバックナンバーを全部取り出して見ていた。『PG』の時代が来ているのか?あるいは単に場所柄か。

 紀伊國屋のFORESTで、紀伊國屋DVD−BOXが一部半額になっていたので、『サミュエル・フラー傑作選DVD-BOX』購入。収録作は、『ショック集団』『裸のキッス』『ストリート・オブ・ノー・リターン』。半額で貰いものの商品券を一部併用して五千円ほど現金を出すだけで済む。

サミュエル・フラー DVD-BOX

サミュエル・フラー DVD-BOX

ショック集団 [DVD]

ショック集団 [DVD]

裸のキッス [DVD]

裸のキッス [DVD]

ストリート・オブ・ノー・リターン [DVD]

ストリート・オブ・ノー・リターン [DVD]

 UPLINK Xで『』(☆☆★★★)、『』(☆☆★★★)、『』(☆☆★★)を観る。

 ドンキで雑貨を買うついでに、980円中古DVDで『ふ・た・ま・た』『変態村』購入。

ふ・た・ま・た [DVD]

ふ・た・ま・た [DVD]

変態村 [DVD]

変態村 [DVD]

3月19日(水)

 アミューズCQN山下敦弘実験4号』(☆☆★★)を観る。
 『天然コケッコー』の後だからか、あまりにも現代日本映画的な位置に居心地よく着地し過ぎているのではないか。山下敦弘に求めているのは、こういうものではないのだが。子役の扱いは『打ち上げ花火、下から見るか、横から見るか?』以来の快挙といっていいが、岩井俊二が子役の精鋭を集めて、そこからナチュラルに見えるように崩していったのと対照的に、山下敦弘は自然な振舞いをそのまま本編に取り込んでいく。どちらも一長一短だろうが、現場面白がっているほどには観ていると笑えない。

 

3月20日(木)

 中野ブロードウェイレコミンツで『黄金の七人』1500円、『旋風の中に馬を進めろ』を2500円で購入。新宿ディスクユニオンで『七つの顔』『炎のランナー』『ミッション・トゥ・マーズ』『トゥルー・クライム』『ゲッタウェイ』『エネミー・オブ・アメリカ』『ブリット』『潜行者』『錨を上げて』『犯罪河岸』を各300円で購入。

黄金の七人 [DVD]

黄金の七人 [DVD]

旋風の中に馬を進めろ [DVD]

旋風の中に馬を進めろ [DVD]

七つの顔 COS-036 [DVD]

七つの顔 COS-036 [DVD]

トゥルー・クライム 特別版 [DVD]

トゥルー・クライム 特別版 [DVD]

ミッション・トゥ・マーズ [DVD]

ミッション・トゥ・マーズ [DVD]

ゲッタウェイ [DVD]

ゲッタウェイ [DVD]

エネミー・オブ・アメリカ 特別版 [DVD]

エネミー・オブ・アメリカ 特別版 [DVD]

ブリット スペシャル・エディション [DVD]

ブリット スペシャル・エディション [DVD]

潜行者 特別版 [DVD]

潜行者 特別版 [DVD]

シネマクラシック 犯罪河岸 [DVD]

シネマクラシック 犯罪河岸 [DVD]

 シネマヴェーラ渋谷若松孝二日本暴行暗黒史 怨獣』(☆☆☆)、『裏切りの季節』(☆☆☆★★★)、『秘花』(☆☆★★)を観る。

3月21日(金)

 『映画秘宝 5月号』届く。故市川崑監督について書かせいただいたので。

映画秘宝 2008年 05月号 [雑誌]

映画秘宝 2008年 05月号 [雑誌]


3月22日(土)

 DVD『クワイエットルームにようこそ』が届く。3400円。

 朝まで飲む。

3月23日(日)

 秋葉原の石丸本舗でDVD、北野武監督・ばんざい!』を購入。1700円。
 北野作品中でも『みんな〜やってるか!』『dolls』と争うワースト作。なので、購入には相当抵抗があったので定価購入はありえなかったが、二千円を割ったのでここらで購入しておく。『素晴らしき休日』も収録されている。

監督・ばんざい! <同時収録> 素晴らしき休日 [DVD]

監督・ばんざい! <同時収録> 素晴らしき休日 [DVD]

 ところで、コレは何だ。
キャラウェイ ~恋愛・ばんざい!~ [DVD]

キャラウェイ ~恋愛・ばんざい!~ [DVD]

 あきばおーMAXELLのDVD-R50枚セット購入2100円。
 中野ブロードウェイへ移動して、古本『シナリオ 』『シナリオ』『マエタケのテレビ半生記』『8時だョ!全員集合伝説』を購入。
マエタケのテレビ半生記

マエタケのテレビ半生記

8時だョ!全員集合伝説

8時だョ!全員集合伝説

 『シナリオ』は各630円。
 『マエタケのテレビ半生記』は500円。『8時だョ!全員集合伝説』は600円。


 シネマヴェーラ渋谷へ移動して若松孝二ゆけゆけ二度目の処女』『性廻転』『赤軍 PFLP 世界戦争宣言』を観る。
 『ゆけゆけ二度目の処女』は何度も観ているので半分は寝ながら観る。10年前に焼いたニュープリントなので奇麗。
 『性廻転』は、青山ブックセンターでの映写機が一台しかないから一巻ごとに止めつつ観る上映会、ポレポレ東中野での上映に続いて三回目の鑑賞。印象は変わらず。若松作品の死の想念は、同じ足立脚本でも『ゆけゆけ二度目の処女』のような秀作に昇華されたものもあれば、『秘花』や本作のような空転してしまうものまで様々で、これだから若松作品は観るまで分からない。
 『赤軍 PFLP 世界戦争宣言』も、シネヌーヴォ、新文芸坐に続いて三回目の鑑賞。ただし、昨年第七藝術劇場足立正生特集が組まれた際にニュープリントが作成されたお陰で、今回は記念すべきニュープリント上映となり、これまで赤茶けた退色したプリントでしか観ていなかったので、鮮やかな色調に唸る。これは改めて丹念に観返さなければならない作品だと思う。

3月25日(火)

 シネマヴェーラ渋谷若松孝二天使の恍惚』(☆☆☆)、『鉛の墓標』(☆☆☆★★★)を観る。

天使の恍惚 [DVD]

天使の恍惚 [DVD]

 『天使の恍惚』は劇場で観るのすら三度目ぐらいで、ビデオ、DVD、CSの放送を含めれば相当観ているが、失敗作ではあるものの、魅力的失敗作であるには違いない。だから、これだけ繰り返し観ていても飽きることが無い。

 『鉛の墓標』は、以前CSで録画したのがトリミングされていたので、オリジナルのシネスコで観たのは初めてだが、傑作。初期の若松作品は、若松プロ設立後の足立正生らが来て以降の、300万以下で作っているのではないかと思えなくもない超低予算的作りの作品にもアンダーグランド臭が上手く結実して面白い作品もあるが、『赤い犯行』『乾いた肌』『情事の履歴書』『歪んだ関係』といった僅かに観ることができた初期作は予算もそれなりにかかっているようで、今観ると、ピンク映画という低予算の印象が消えるぐらい面白い。
 チンピラがのし上がっていく日活映画を意識させる作品ではあるが、若松の演出力が一流であることを改めて感じるぐらい、揺るぎない緊張感が持続したまま展開していく。

 新宿ディスクユニオンで古本『愛の寓話―日活ロマン、“撮影所システム”最後の光芒 Interview with a Romance film Creators vol.1』『愛の寓話―日活ロマン、“撮影所システム”最後の光芒 Interview with a Romance film Creators vol.2』を購入。各1500円也。発売時に直ぐ欲しかったが、この分量でこの値段は、と古本待ちに。定価より500円ほど安くなっただけだが、勢いをつけて購入。資料も充実していることだし。

愛の寓話―日活ロマン、“撮影所システム”最後の光芒 Interview with a Romance film Creators vol.1

愛の寓話―日活ロマン、“撮影所システム”最後の光芒 Interview with a Romance film Creators vol.1

愛の寓話―日活ロマン、映画と時代を拓いた恋人たち Interview with a Romance film Creators vol.2

愛の寓話―日活ロマン、映画と時代を拓いた恋人たち Interview with a Romance film Creators vol.2

3月26日(水)

 シネマヴェーラ渋谷若松孝二続日本暴行暗黒史 暴虐魔』(☆☆☆★★)を観る。

 『続日本暴行暗黒史 暴虐魔

 一般に記録され、今回の特集上映でも掲げられているタイトルと実際のプリントでは違いがあった。単純にプリントでは『日本暴行暗黒史 暴虐魔』となっていて、<続>はついていない。しかし、公開時期は『日本暴行暗黒史 異常者の血』と同年であり、前作のヒットによって続編として作られたのは間違いないようだ。ピンク映画、特に若松作品に特徴的な問題として、タイトルが複数ある作品が多く存在していることで混乱が生じることがある。同じ成人映画館で公開される作品であっても、現在でもそうだが再公開時に別タイトルに変えられてしまうことがある。更に60年代中期以降の若松作品の場合は、はじめに蠍座などで数週間上映された後にタイトルを変えて成人館に流れていくこともあるので『裸の銃弾』のように、こんな作品があったのかと、同時代で松田政男ほどではないのだろうが併走して観ていた平岡正明ですらDVDが出てから驚くということが起こる。どうでも良いと言ってしまえばどうでも良いが、誰かが『続日本暴行暗黒史 暴虐魔』なのか『日本暴行暗黒史 暴虐魔』なのかをしっかり確認しておかなければいけないのが映画だ。
 小平義雄を描いた作品と聞いていたが、作品を観れば分かる通り、モチーフとして使用されていた程度で、小平事件の再現映画として観れば、まるで違うということになる。考えてみれば『新日本暴行暗黒史 復讐鬼』も、津山三十人殺しをテーマにしているとは言え、実録ではない。昼間に村人を次々と殺していくから、『八つ墓村』や『丑三つの村』的展開を期待すると肩透かしを食らう。
 本作で小平義雄の名残を感じさせるのが、脚本も担当している(クレジットは若松プロの共通名儀の出口出)山下治演じる主人公の名前が丸木戸義雄ということぐらいか。丸木戸姓は、『胎児が密猟する時』以来、『堕胎』『避妊革命』『性地帯 セックスゾーン』といった足立脚本、監督作で主に使用されてきた名だ。本作は山下治の脚本、主演作だけに丸木戸姓が出てきたのが意外だった。
 開巻に、この作品はフィクションであることを記す表記が出るが、ここまでアレンジすれば小平事件を連想する者は少ないのではないか。
 獄中に佇む丸木戸を柵越しに捉えたショットから始まる。この段階で山下治の風貌に魅せられる。坊主頭に労務者風の風体は、既成の俳優からは得られないものだ。寺島幹夫山谷初男といった異形の役者を常連に持ち、小水一男や、秋山道男大和屋竺といった非職業俳優でありながら強烈な異物を抱え込んでいた若松プロの中でも、山下治の風貌は際立っている。逆に言えば、沖島勲共々若松プロの作品にすら強烈過ぎて滅多なことでは使えない。現在確認できる記録上では、山下治の出演作は本作のみのようだが、この風貌を活かした作品というのは自作自演でしか不可能だったのではないか。若松プロにおいては、自身で脚本を書き主演することで、不思議と作品が奇妙な存在感を放つことがある。これが自身で監督まで兼ねてしまうと、バランスを失する可能性もあるのかもしれないが、若松孝二が監督するということが大きいのだろうか、何故か突出した秀作になってしまうことがある。具体的に言えば、福間健二の脚本・主演作『ある通り魔の告白/現代性犯罪暗黒編』や、都立大の学生三人の脚本、主演作『理由なき暴行/現代性犯罪絶叫篇』、掛川正幸の『十三人連続暴行魔』などがそうだ。何故演技経験の無い素人を主役に起用してもこれだけの存在感と表情を引き出せるのか、それを知りたくて何度も再見を重ねているが、未だ解明することができていない。
 話を戻せば、獄中の丸木戸が47名の強姦・強姦殺人の罪に問われていることが検事から説明される。以降、丸木戸が如何に犯行を重ねていったかが描かれるが、犯罪の起源に遡るのではなく、既に自身が棲家としている洞窟には殺した女が並べられている。海岸で女を犯しては洞窟に連れ帰る様子が重ねられる。ここで作品の内容以外に面白いのが、本作と『犯された白衣』が同時撮影されたという映画史的事実で、出てくる女優が皆見覚えがあるということになる。
 それにしても、小平義雄よりも、洞窟の中に女性の死体をコレクションしている異様な状況よりも、山下治の風貌が強烈過ぎて、そこに気が行ってしまう。港を破れたズボンに一升瓶片手でポケットに手を突っ込んでヨタヨタと歩く姿は、実生活もホームレスもどきの生活を山谷に消える前からしていたという山下治でしか表現しえないリアルさがあって、体臭や吐く息まで匂ってきそうだ。それがガイラ達にボコボコにされて防御に徹する時の弱々しい表情の悲しさのリアルさにも結びつく。
 丸木戸は、自身の頭の中に別の声を聞き、対話する。それ自体は特に目新しくないが、その声が機械的なのが良い。『ツィゴイネルワイゼン』で「駄目だよ」という声が聞こえてくるシーンがあるが、あんな感じの声で「そうだ、やれやれ」とか言うものだから、妙に怖い。
 若松孝二は意外とちゃんとしたオチを求める人で、不条理な終局を迎えても何ら不思議ではない作品も多いにも関わらず、多くの作品でラストは警察に捕まったり、或いは死んで終わりとなる。勿論更生するというような意味ではなく、何ら反省していないような表情の主人公を捉えたりする。本作でも捕まって、実況見分で洞窟に丸木戸を連れてきて、何もない洞窟に女たちが丸木戸を迎える幻想を見せて終わらせる明解なオチとなる。

 これで日本暴行暗黒史シリーズの4本を観る事ができたが、質が高くピンク映画としての枠を越えて評価されるべきシリーズだと思う。『日本暴行暗黒史 怨獣』など、時代劇として遜色ない出来に驚いた。
 本作に関しては、60年代中盤から後半にかけて29本の監督作を遺して消えた映画監督・山下治が素晴らしい映画俳優であったことを後世に知らしめたという意味でも今後、再評価されるべき作品だと思う。


 
 続いてユーロスペース松井良彦どこに行くの?』(☆☆☆★★)を観る。
追悼のざわめき』から20年、遂に松井良彦の新作が…という気分ではないのは、自分が『追悼のざわめき』を初めて観たのが、つい十年ほど前のことに過ぎないからだ。それに、『追悼』以外の二作を観ることができたのは、この1、2年のことだ。だから、松井良彦の新作を待ちに待ったような顔をして迎える資格は有していない。しかし、それでも早く観たかった。映画に対して正直な存在だと思うから、松井良彦は。本来は、これ以前に安藤政信主演で夏目漱石の『夢十夜』を原作にした『百年後の黒い瞳』がインする予定だったようだが、流れている。年月が流れすぎると兎角腰が重くなったり、実現不可能な巨大な企画に固執する監督も多いが、松井良彦は軽やかにデジタルビデオで映画を撮った。この軽快さは足立正生をも思わせる。
 新作『どこに行くの?』は、現在にこそ必要な映画だった。何故か評判が悪いようだが、『追悼のざわめき』と比べてしまえば、何を撮っても駄目という言い方は成り立つだろう。しかも、『追悼のざわめき』は、普通の尺度で傑作とか駄作とかいう概念を越えてしまっている。傑作でもあり、駄作でもある。
 自分にとっては、松井良彦が年齢を重ねて今こそ撮りたい映画がこれなのではないかと思った。心やさしい映画でも撮れば、変節を言われるだろう。しかし、この作品はそうではない。これまでで最もはっきりとしたストーリーラインを持ちながら、松井良彦でしか撮れない作品に仕上がっている。偏執的な工場長と柏原のやり取りの反復のしつこさと過剰さなどは、一見若手映画作家でもやりそうに思えるが、(つづく)
 

 パンフレット『どこに行くの?』購入。400円。
 渋谷TSUTAYAで『クイック・ジャパン Vol.76』購入。


3月27日(木) 

 新宿ブックファーストで『本棚三昧』を購入。

本棚三昧

本棚三昧

3月28日(金) 

 渋谷タワーレコードで、中原昌也中原昌也 作業日誌 2004→2007』、CORNELIUSのDVD『SENSURROUND』を購入。

中原昌也 作業日誌 2004→2007

中原昌也 作業日誌 2004→2007

SENSURROUND [DVD]

SENSURROUND [DVD]

 渋谷TSUTAYAが半額なので『ザ・シャウト』『ソドムの市』『デカメロン』『イン・ザ・スープ』をレンタル。

ザ・シャウト さまよえる幻響 [DVD]

ザ・シャウト さまよえる幻響 [DVD]

パゾリーニ・コレクション ソドムの市 (オリジナル全長版) [DVD]

パゾリーニ・コレクション ソドムの市 (オリジナル全長版) [DVD]

<パゾリーニ・コレクション>デカメロン[オリジナル全長版] [DVD]

<パゾリーニ・コレクション>デカメロン[オリジナル全長版] [DVD]

 朝まで某女と戦後キネ旬ベストテンを携帯で参照しながら、現在から順に遡って作品名から監督を当てるという遊びに興じる。9割当てたとは言え、実に無為な気分になる。70年代前半になるともう観てない作品が増えてくる。殆どタイトルを覚えているかどうかの世界だ。

3月29日(土) 

 午前中、高円寺を徘徊するも、まだ開いてる店は少ない。僅かに開いていた中古DVD・ゲームを扱う店に入り、レジ前の特価棚を物色して、DVD、いまおかしんじ『妹・綾香』を千円で購入。こういうものは、買っておかないと、入手しずらくなったりもするので。後は某アイドルグループのDVDを五百円で。

妹・綾香 [DVD]

妹・綾香 [DVD]

 久々にオービスに寄ってレンタルビデオ『』『』を借りる。オービスでは、ビデオをまとめて処分するそうで、今のうちに必要なものはダビングしておいた方が良いかもしれない。一応聞いたところではDVD化されていないレア作は残す方向だそうだが、全部が保護されるとは限らない。

 Tジョイ大泉で、ウォン・カーウァイの『マイ・ブルーベリー・ナイツ』(☆☆☆★)を観る。
 ウォン・カーウァイはどうだ?という問いかけをされることが割合あるが、同世代的に10代後半の時機に『恋する惑星』『天使の涙』がやたらとヒットしていたせいもあると思う。個人的にはウォン・カーウァイだから無暗に良いとも悪いということもなく、同時代的に観てきた長編だけに絞って言えば『恋する惑星』『天使の涙』は好きで、『楽園の瑕』『ブエノスアイレス』は駄目で、『花様年華』で復調して『2046』でまた駄目になったというところだ。
 ハリウッド進出第一回作となった本作を予備知識なく観始めると、これは誰もが思うことだろうが『恋する惑星』のセルフリメイクじゃないかという印象をもたらす。開巻のコマを引き伸ばした電車の走りからしてそうだ。そこにハンディの画でジュード・ロウがカウンターの内側で調理している様を映し出したりするので、その姿に金城武を重ね合わせ、そうなるとノラ・ジョーンズフェイ・ウォンかと思っていると、案の乗、失恋したからとニューヨークから姿を消す。更にテロップで「失恋から57日、ニューヨークから1120マイル」などと出るものだから、いよいよ『恋する惑星』そのものとしか言いようがない。ジュード・ロウは消えたノラ・ジョーンズを思って探そうとするし、モノローグも多用され始めると、もう余りにもウォン・カーウァイウォン・カーウァイだと思ってウンザリする。更に、ノラ・ジョーンズが働くバーで出会う男の仕事が警官だったりするものだから、いつも同じ歌を歌うというか、本当にリメイクでしかないなと思うが、そうなると撮影がクリストファー・ドイルではないこともあって、ウォン・カーウァイもどきでしかないように思える。それに何より、アジアとアメリカの違いを感じたのは、湿気だ。ウォン・カーウァイの作品には、あの暑さと湿気が何より魅力なのだと思った。自分が『ブエノスアイレス』が好きではないのはそこに理由があるのかもしれない。
 しかし、後半の勝負師の女とノラ・ジョーンズが出会ってからの展開で復調する。それどころか、ウォン・カーウァイアメリカ映画がここから始まったと言って良い。
 ウォン・カーウァイアメリカ映画としてはセルフリメイク半分、新たな展開が半分というところか。

3月30日(日)

 中古ビデオ店で、若松孝二の『女刑御禁制百年』を980円で購入。ビデオ自体観たのは初めて。1977年に製作された緊縛モノであり、その時期は借金がかさんでいたせいで、この手の拷問モノを連発していたという。ビデオパッケージは少し珍しいかもしれないが、新東宝のせいか、作品そのものを観るのは容易で、ブロードバンドでは直ぐ観ることができる。
 古書店で『シネアスト1 映画の手帖 特集 ヒッチコック』と『愛のコリーダ無罪確定の全シークェンス わいせつの終焉』を購入。夫々500円と800円。

3月31日(月)

 新宿TSUTAYAで中古ビデオ西村昭五郎泣く女』『制服体験トリオ わたし熟れごろ』を購入。各500円かつ両方未見。西村昭五郎なので、観るまで出来は分からない。

泣く女 [VHS]

泣く女 [VHS]

制服体験トリオ わたし熟れごろ《VHS》

制服体験トリオ わたし熟れごろ《VHS》

  

 シネマヴェーラ渋谷で、若松孝二性家族』を観る。

 前にビデオで観た時も何度も寝てしまったが、今回は風邪薬が効いて何度か寝てしまい、ハッとした瞬間にエンドマークとなる。家でビデオで観返すことにする。



 『靖国』東京での公開予定劇場すべてが降りた。『日本の夜と霧』の三日間での上映打ち切りとその後数年の封印、『天使の恍惚』の新宿文化以外のATG系劇場が全て降りたのを思う。せっかくいつもとは違う形での拡大公開される意義を感じていただけに残念だ。規模が大きくなった故に叩かれたという見方もできるが、敵が直接手を下さない形での圧力が厭らしい。映画は兎も角上映されなければならない。上映して、観客が網膜にそれを焼き付けなければ称賛も批判も始まらない。