『地獄』

(27)『地獄』

 再発売された石井輝男の『地獄』が届く。アマゾンで買ったので2900円ほど。笑うのが、以前大映からDVDが出ていたせいで、今回の再発は合併に伴い角川映画から発売されたということで、角川映画石井輝男の『地獄』が発売されるという、映画史を混乱させるような表記が入り乱れている。
 『地獄』は公開時に今は無きシネマアルゴ梅田で観た。石井輝男の新作にリアルタイムで接した期間はごく短い。何せ中3の時の『ゲンセンカン主人』は田舎だったので劇場まで観に行けず、ビデオが出てようやく観れたし、大体、石井輝男という名前を覚えて旧作を観ていこうとしたのも『ゲンセンカン主人』があったからだ。『無頼平野』になると、いよいよ劇場で観たかったが、これも無理で、大阪に住み始めて『ねじ式』になってようやく劇場で石井輝男の新作を観ることができた。その頃、ようやく『恐怖奇形人間』も観たりと、石井輝男に馴染み始めていたので『ねじ式』には随分と興奮し、その熱気も冷めない頃の『地獄』だったので期待して観に行ったが、『ねじ式』のサブカルミニシアター路線から一転というよりも逆流したような作りに瞠目させられた。既に当時でこれ見よがしにならずにこんなことが出来る映画監督は石井輝男しか居なかったのではないか。『マルタイの女』に続くオウムをモチーフにした作品だが、現在に至るも事件全体を映画化したのは本作だけだ。

地獄 [DVD]

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