『赤い帽子の女・水のないプール ―プロセスノート・初稿シナリオ 』

(5)『赤い帽子の女・水のないプール ―プロセスノート・初稿シナリオ 』内田栄一 (三一書房

 模索舎で購入。もう新刊書店では見かけなくなっていたが、流石模索舎だけに置いてあるのが凄い。せっかくなので購入する。神代辰巳若松孝二によって映画化された二作のシナリオが、撮影を経てどう変化が加わったかを、上段にシナリオ、下段にそのプロセスが克明に書かれているのが面白い。『水のないプール』は傑作になったが『赤い帽子の女』には不満たらたらな内田栄一の恨み節でもある。今、こんなことを言うのは荒井晴彦ぐらいだが、昔はちゃんと居たのだ。
 自分が内田栄一の存在を認識したのは『映画芸術』の追悼号。1994年だったと記憶するが、この号がはじめて買った映芸だった。
 本書には若松孝二で映画化が予定されていた『蜂は一度刺して死ぬ』のシナリオも収録されている。若松の自伝『俺は手を汚す』の終盤で次回作に予定されている作品として挙げていた作品だが(『俺は手を汚す』の聞き手は内田栄一)、何故実現しなかったかについても書かれている。しかし、若松孝二にはその後も『コボれ落ちた情事』というシナリオを書いている。内田栄一死去後の著作権裁判に関する記事(→http://www.translan.com/jucc/precedent-1996-02-23c.html)には、『佐川君からの手紙』や『つっぱりトミーの死』(長谷川和彦も映画化を構想していたが、これが長谷川和彦の為に書かれたものかは不明)といったシナリオも書かれたようだ。
 先日、若松孝二監督にインタビューした際に、未映画化企画についても尋ねたが、『蜂は一度刺して死ぬ』や、佐々木守の『五稜郭残侠伝』について聞き損ねたのは残念だった。